岩手の日本酒(地酒)【月の輪(つきのわ)】伝統を受け継ぎながら進化する酒
「月の輪」は岩手県紫波(しわ)の地に酒蔵を構える月の輪酒造店が、代々「企業ではなく家業」として造り続けてきた、この地を代表する地酒です。全国新酒鑑評会で金賞を獲得した大吟醸だけでなく、さまざまな挑戦を続ける「月の輪」の魅力を紹介します。
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月の輪は女性杜氏が醸す酒
出典:(有)月の輪酒造店
「月の輪」の故郷である岩手県紫波(しわ)の地には、平安時代後期に起こった「前九年の役」において、源頼義、義家父子が陸奥の反乱を鎮圧した際に、池に映った金色の月を吉兆としたという伝承が伝えられています。
この伝承に由来する「月の輪」の蔵元、月の輪酒造店を営む横山家は、代々、この地で日本酒造りの原料となる麹(こうじ)を商っていました。明治に至って、4代目当主が酒造りへの情熱に燃え、酒造業を創業したのが明治19年(1886年)のこと。これが月の輪酒造店の始まりです。
以来、130年にわたって酒造りを続けてきた月の輪酒造店のモットーは、「企業ではなく、家業としての酒造り」。これは、平成になって法人化してからも変わることはありません。現在も5代目の杜氏(とうじ)である横沢裕子氏の指揮のもと、代々受け継がれてきた技術と精神のもとに、ていねいな酒造りを続けています。
月の輪の味わいは地元の水と米から生まれたもの
出典:(有)月の輪酒造店
月の輪酒造店の「家業」へのこだわりは、酒造りの原料にも現れています。代々、暮らしてきた地域の風土を愛し、そこで育まれた米や水を原料に造った酒こそ、月の輪酒造店の考える「地酒」の定義なのだとか。
このため、仕込み水はすべて敷地内の井戸から汲み上げた水を使用し、原料となる米もほとんどが地元産米。それも、古くから交流のある地元農家と連携して、毎年の米の質や、その米を用いた日本酒の味わいなどを共有しながら、米作りと酒造りが一体となって「よい米」「よい酒」を追求しているのです。
だからといって、月の輪酒造店は、地元産米だけに固執しているわけではなく、原料米の約1割は全国から仕入れた酒造適合米を使用しています。これは、普段は使っていない米で酒造りを行うことで、新しい“気づき”が得られるはずというチャレンジ精神によるものです。
高品質な米で仕込んでいるという自負ゆえに、月の輪酒造店のお酒は「純米酒」以上の特定名称酒が主体。なかでも精米歩合40%まで磨いた「月の輪 大吟醸」は、すっきりとしたクリアな旨味が魅力で、全国新酒鑑評会で金賞に輝いた逸品です。
地元産の原料にこだわりながら、新しいことへの挑戦も忘れない、そんな月の輪酒造店の酒造りへの情熱が結晶した1本といえます。
月の輪だからできる新しいチャレンジ
(有)月の輪酒造店
月の輪酒造店では、代々受け継いできた酒造りをこれからも続けていくためには、伝統を守るだけでなく、時代とともに進化していく必要があるとの考えのもと、さまざまな挑戦を行っています。
その一つが、地元の名産品であるモチ米を使った酒造りです。モチ米は酒造りには不向きとされていましたが、紫波町は全国一のモチ米の生産地。「地元の名産品を酒造りに活かせないだろうか」と試行錯誤を重ねた末に、モチ米を100%使用した濃厚なお酒「もちっ娘」が誕生したのです。
また、酒造り以前の家業である米麹で作ったジェラートも評判です。砂糖を使わず、麹の力で糖化させるという酒蔵ならではの技術を駆使したジェラートは、蔵の敷地内にある直販店「わかさや」内のアイスクリームガーデンで提供され、地元の人々や観光客の人気を集めています。
近年では、酒蔵ではなく「アイスクリーム屋」と思って訪ねてくる人も多く、これまで日本酒と縁がなかった人が、ジェラートをきっかけに日本酒に興味をもってくれることもあるのだとか。
伝統的な酒造りを続ける一方で、モチ米を原料とした酒造りや、酒造技術を活かしたジェラートなど、さまざまな挑戦を続ける月の輪酒造。その新たな挑戦に、これからも目が離せません。
製造元:有限会社月の輪酒造店
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