【酉与右衛門(よえもん)】(岩手の日本酒)。個性が光る少量生産の酒

【酉与右衛門(よえもん)】(岩手の日本酒)。個性が光る少量生産の酒
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「酉与右衛門(よえもん)」は、南部杜氏の本拠地とされる岩手県花巻市で、小規模ながらも個性的な酒造りを行う川村酒造店が「心に響く感動のある酒」をめざして醸した日本酒です。創業者、川村酉与右衛門の名を冠した逸品の魅力に迫ります。

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「酉与右衛門(よえもん)」は独特の個性が光る酒

「酉与右衛門(よえもん)」は独特の個性が光る酒

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「酉与右衛門(よえもん)」の造り手である川村酒造店は、釜淵の瀧などで知られる景勝地、岩手県花巻市にある小規模な蔵元です。
この蔵を大正11年(1922年)に創業した川村酉与右衛門(よえもん)は、16歳から酒蔵で働き始め、弱冠24歳にして杜氏(とうじ)に就任し、南部杜氏組合の創立にも寄与したという記録が残されています。
ちなみに、「酉与」は「酔」の古い字体ですが、現代の漢字表記にないため、漢字二文字で表記しています。

代表銘柄である「酉与右衛門」は、現在の当主である川村直孝氏が2000年に立ち上げたもの。創業者が酒造りに関わった当初に抱いた「人生修行のために全力で酒造りをしたい」との意志を継承するために、その名をとって命名したものだとか。

岩手の地酒といえば、南部杜氏の伝統を受け継いだ「淡麗旨口」のイメージで知られています。川村酒造店が蔵を構える花巻市石鳥谷は、南部杜氏のふるさとといわれる土地だけに、「酉与右衛門」もそうした系列のお酒と思われがちです。
ところが、“我が道を行く”酒造りによって生み出された「酉与右衛門」は、酸味が旨味をリードする「味系&熟成系」のお酒。他の地酒にない個性的な味わいが「岩手にこんなお酒があったのか! 」と地酒愛好家を驚かせています。

「酉与右衛門(よえもん)」誕生の裏にあった2つの銘柄

「酉与右衛門(よえもん)」誕生の裏にあった2つの銘柄

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「酉与右衛門(よえもん)」の個性的な味が生まれた背景には、地酒ファンなら知らぬ者がない、2つの個性的な銘柄の存在があったといいます。

じつは、「酉与右衛門」が誕生するまで、川村氏は酒造りの方向性に悩んでいた時期があったそうです。周囲の酒蔵が「淡麗旨口」な日本酒を造るなかで、ひとり独自の味を追求していた川村氏ですが、「おたくの酒は酸っぱいから・・・」といった批判を受けることもあったのだとか。

そんなときに出会ったのが、香川の「凱陣」と大阪の「秋鹿」でした。どちらも強烈な個性で地酒ファンの支持を集める銘柄ですが、その生原酒を飲んだ際、既成の枠組みにとらわれない個性的な酒造りに、川村氏は衝撃を受けるとともに、おおいに勇気づけられたそうです。

川村氏がめざしたのは、食中酒としてじっくり飲んでもらえるお酒。「はなやかな香りはいらない、おだやかな香りで、味わい深い食中酒を造ろう」と、決意も新たに開発した「酉与右衛門」は、岩手の地酒らしからぬ強烈な個性で、広く全国の地酒ファンから注目される銘柄となったのです。

「酉与右衛門(よえもん)」を支える、火入れ酒から生酒までレベルが高い酒造り

「酉与右衛門(よえもん)」を支える、火入れ酒から生酒までレベルが高い酒造り

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「酉与右衛門(よえもん)」の銘柄全体としての特徴は、多品種少量生産であること。生産量が500石(1石は180リットル)ほどの小さな蔵のため、一度に大量の日本酒を仕込むことができません。それゆえ、毎回、異なる個性をもったお酒を少量ずつ生産し、市場に届けているのです。

「酉与右衛門」のラインアップは、地元・岩手産の「吟ぎんが」をはじめ、「山田錦」や「美山錦」など原料米ごとの特徴を引き出した商品から、生酒、火入れ酒、熟成酒など製造法が異なる商品まで、多種多様。どのお酒も、ていねいに仕込んだハイレベルなものばかりです。

なかでも「酉与右門 直汲み特別純米無濾過生原酒 吟ぎんが」は、絞りたてのお酒を、ろ過することなくそのまま瓶詰めしたフレッシュな逸品。口にすると、瓶内で発酵により生じた炭酸が独特の味わいを加えて、若々しいボリュームが感じられるのだとか。冷酒で、常温でと、温度によって表情の変化がたのしめるのも魅力です。

一方で、「酉与右衛門 秋桜 純米吟醸ひやおろし」は、火入れした酒を、瓶に詰めた後、じっくりと低温で熟成させ、一夏越させたもの。低温熟成ならではのおだやかな味わいから、「飲みやすい地酒」と評判です。

さまざまな個性がたのしめる「酉与右衛門」は、少量生産のため首都圏では入手困難ですが、地酒ファンなら一度は味わってみたいお酒です。

製造元:合資会社川村酒造店
公式サイトはありません

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