青森の日本酒【田酒(でんしゅ)】日本酒の原点に帰る酒

青森の日本酒【田酒(でんしゅ)】日本酒の原点に帰る酒
出典 : Nishihama / Shutterstock.com

「田酒」は“田んぼから生まれた酒”を意味する銘柄のとおり、米の旨味を追求した酒。青森県を代表する酒蔵、西田酒造店が生み出した「田酒」は、人気の高さから入手困難になるほど。一部では“幻の酒”と呼ばれる、そのおいしさの秘密に迫ります。

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田酒の由来、「酒は田んぼから」の想い

田酒の由来、「酒は田んぼから」の想い

出典:西田酒造店サイト

「田酒(でんしゅ)」を生み出した蔵元、西田酒造店は明治11年(1878年)に青森市油川の地に創業しました。
創業以来の代表的な銘柄が全国および東北の清酒鑑評会で、何度となく金賞を受賞した「喜久泉(きくいずみ)」です。「幾久しく喜びが続くように」との願いを込めて命名されたこの酒は、糖類は一切使用せず、醸造用アルコールを必要最低限添加することで、淡麗にして軽快な味わいを実現しています。

そんな西田酒造店が、新たな銘柄として「田酒」を生み出したのは、日本酒業界が曲がり角を迎えつつあった昭和40年代のことでした。ビールやウイスキー、焼酎など、お酒の多様化が進むとともに、日本酒の消費量が減少しつつあるなか、日本酒ならではの魅力を改めて世間に訴えかける必要が生じていたのです。

西田酒造店は、「今こそ日本酒の原点に立ち返り、田んぼの味わいをそのまま届けるような酒を造ろう」と、昔ながらの手造りによる純米酒の開発に着手。試行錯誤を重ねた結果、昭和49年(1974年)に誕生したのが、“田んぼから生まれる酒”「田酒」だったのです。

現在は、米と米麹だけで造った純米酒を「田酒」、醸造アルコールを添加した吟醸酒や大吟醸酒を「喜久泉」という、わかりやすい分類で販売。どちらも東北を代表する逸品として、広く全国の地酒ファンに愛されています。

田酒は米の旨みを引き出したワンランク上の純米酒

田酒は米の旨みを引き出したワンランク上の純米酒

出典:西田酒造店サイト

「田酒」が名品と呼ばれるのは、ただ「純米酒だから」というだけではなく、よい米にこだわり、米本来の旨味をしっかりと引き出しているからです。

原料米には、「華想い」をはじめ青森県産の酒造好適米を厳選。1991年には、“幻の米”と呼ばれる青森県産の初代酒造好適米「古城錦」 を特定農家に依頼して復活させ、酒造りに使用しています。
これら良質な酒米のみを、昔ながらの手作業によってていねいに仕込むことで、田んぼの滋養をたっぷりと吸い込んだ、力強い米の旨味を活かした日本酒が生まれるのです。

加えて注目したいのが、蔵内の環境です。高齢の杜氏や女性蔵人も働きやすいよう、作業動線を整備するとともに、重量物の運搬にはクレーンを使用。衛生面にも気を配り、リラックスできる音楽を流すなど、少数精鋭の蔵人たちが酒造りに全力を尽くせる環境を作り出しています。

こうした理想と環境のもとに生まれた「田酒」だからこそ、飲む人の心に、しみじみとした感動を残すことができるのでしょう。

田酒は食事と合わせることで旨味が増す酒

田酒は食事と合わせることで旨味が増す酒

出典:西田酒造店サイト

「田酒」ブランドには、原料米や仕込み方の違いによって、さまざまな商品がラインナップされています。いずれも手作業で仕込まれた純米酒ならではの力強い味わいで、淡い山吹色に輝く、風格ある日本酒となっています。

なかでも「特別純米酒 田酒」は、軽やかな香りと、米の旨味が心地よく感じられる逸品です。旨口でコクがあり、じわじわと口いっぱいに広がりますが、決してしつこさを感じさせない、すっきりしたあと味です。合わせる料理によって旨味が変化するため、飲み飽きることがないと評判で、食中酒には最適です。

「田酒」は決して生産量が多いとはいえないため、酒屋さんで見かける機会も多くはありません。目にする機会があれば、ぜひ、入手することをおすすめしたい一本です。

米本来の旨味を引き出した「田酒」は、まさに日本酒本来の魅力を体現したお酒。日本酒ファンならずとも、一度はたのしんでいただきたいものです。

製造元:株式会社西田酒造店
公式サイトはこちら

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