青森の日本酒【陸奥八仙(むつはっせん)】伝統と新しい感性の融合
「陸奥八仙」は、江戸時代中期に創業した歴史ある蔵元、八戸酒造が近年になって生み出した“古くて新しいお酒”です。国内外の日本酒コンクールで数々の賞を獲得し、いまや地元・八戸を代表する地酒となった陸奥八仙。その歴史や魅力を紹介します。
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陸奥八仙は歴史ある蔵元で醸される新しい酒
出典:八戸酒造サイト
「陸奥八仙」の蔵元、八戸酒造は、約250年におよぶ長い歴史をもつ老舗蔵です。その蔵の建物は、いずれも歴史と風格を感じさせ、なかでも大正年間に建てられたレンガ造りの蔵は、2010年に文化庁有形文化財に登録されています。
八戸酒造の酒造りの歴史は、江戸時代中期の元文5年(1740年)、初代駒井庄三郎氏が故郷の近江を離れ、陸奥の地で修行したところから始まります。
その後、安永4年(1775年)に酒造業として創業し、以来、小規模ながら地域に根づいた酒造りを続けてきました。
今では「陸奥八仙」を看板銘柄に、全国的な知名度をもつ八戸酒造ですが、その歴史は決して順風満帆といえるものではなかったそうです。
第二次大戦中の1944年、政府の企業整備令によって地域の蔵元16社が合同会社化され、その状況が戦後も続きます。
1997年に、8代目となる現社長、駒井庄三郎氏が、品質重視のこだわりの酒造りをめざして合同会社からの離脱を決意。八戸酒造としての再出発を果たします。
ところが、明治以来の伝統的な銘柄「陸奥男山」や、酒造りのための施設の権利も合同会社が手放さず、ゼロからの酒造りを余儀なくされました。
休業した蔵元の施設を借りて、独自の酒造りを始めた八戸酒造が、自らの酒造りの象徴として世に送り出したのが「陸奥八仙」でした。
現在は、蔵の施設や「陸奥男山」の商標権も八戸酒造のもとに戻り、両銘柄を2本柱とした酒造りを続けています。
陸奥八仙は地元・青森産にこだわる酒
出典:八戸酒造サイト
「陸奥八仙」という銘柄は、中国の故事で、「酔八仙」と呼ばれる8人の仙人にちなんだもので、「この酒を飲む人が“酒仙”の境地で酒をたのしんでほしい」との想いを込めたものだとか。
陸奥八仙を生んだ八戸酒造の酒造りの大きな特徴が、地元・青森産の原料へのこだわりです。
原料米はすべて「華想い」「華吹雪」など青森県産米を使用し、酵母も80%以上は青森県産です。
仕込み水は八戸市蟹沢地区の湧水を使用。八戸では「蟹沢」を「がにじゃ」が転じて「がんじゃ」と呼んでおり、地域では「がんじゃの水」として親しまれています。
八戸酒造では、この名水を「陸奥八仙」の仕込み水に用いる一方で、地域のコミュニティ作りにも注力。いまや八戸でも数少なくなった里山の豊かな生態系を次世代に残すため、「がんじゃ自然酒倶楽部」を設立。会員とともに汗を流して育てた米を原料に、会員限定オリジナルの日本酒を造っています。
陸奥八仙はワイングラスで飲みたい香り高い酒
出典:八戸酒造サイト
「陸奥八仙」がめざしているのは、“香り高く、やさしく、人の心に残る酒”。研ぎ澄まされたフルーティで華やかな香りとともに、米のふくよかさもしっかり感じられるものばかりなので、ワイングラスでたのしみたいお酒です。
実際、「陸奥八仙」は「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で受賞常連となっています。2018年には、「アワードメイン部門」をはじめ5部門で金賞を獲得し、その実力を改めて知らしめました。さらに、世界最大規模のワイン品評会「インターナショナルワインチャレンジ(IWC)」においても、2018年にSAKE部門で銀メダルに輝くなど、その香りと味わいのよさは世界に認められています。
「陸奥八仙」は、香り高く、お米をしっかり感じられるお酒。蔵元が小規模なこともあり、なかなか手に入らない人気のお酒ですが、出会った際はぜひ、味わってみてください。
製造元:八戸酒造株式会社
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