「ばくれん」すれっからしの女=ばくれんの名が象徴する辛口の酒【山形の日本酒】
「ばくれん」という、一風変わった名前をもつ日本酒を知っていますか? 日本酒好きには「酒は辛口」という人も少なくありませんが、「すれっからしの女」を意味する「ばくれん」は、その名のとおりケタ違いに辛口の酒。その魅力を紹介しましょう。
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「ばくれん」は、名酒「くどき上手」を醸す蔵元が生んだ新しい味
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「ばくれん」を手掛けるのは、明治8年(1875年)以来の歴史をもつ山形の酒蔵、亀の井酒造です。もともと地元では、蔵元の名前を取った「亀の井」という銘柄で知られていましたが、昭和末期頃から「くどき上手」という銘柄で首都圏などにも出荷。豊かな吟醸香と繊細な飲み口で人気となり、全国区の酒となりました。
亀の井酒造で造っている日本酒の精米歩合は平均して50%。ほとんどの銘柄が吟醸や大吟醸クラスという、まさにこだわりの蔵元です。そんな蔵元が「くどき上手」に次いで世に送り出したのが、辛口好みの日本酒ファンをうならせる「ばくれん」でした。
「ばくれん」とは聞き慣れない言葉ですが、山形弁で「すれっからしの女」とか「親のいうことを聞かずに好き勝手している女」という意味なのだとか。瓶のラベルに描かれている浮世絵風の艶っぽい女性のイラストは、このイメージで描かれたもの。「ばくれん」のきりっとした大人の味わいが、こうした女性像と重なるのかもしれません。
「ばくれん」は辛口の極みを追求した酒
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「ばくれん」は超辛口の酒として知られていますが、実際、どの程度辛いのか、具体的な数値で見てみましょう。
日本酒の味を示す指標のひとつに「日本酒度」があります。甘辛度合いを示す目安になるもので、プラスだと辛口、マイナスだと甘口とされています。プラス数値が高いほど辛さが増し、その限界は20前後とされています。「ばくれん」の日本酒度はプラス20ですから、まさに辛さの限界に挑戦した銘柄といえるでしょう。
日本酒度について、もう少し詳しく説明すると、本来は日本酒の比重、つまり日本酒が水よりも軽いか重いかを示すもの。水と同じ重さだと数値は「ゼロ」で、軽ければプラス、重ければマイナスになります。
日本酒は、糖分が発酵してアルコールになったもの。糖分が多く残っていると「甘口」になりますが、糖分は水より重いため、日本酒度の数値はマイナスとなります。反対に、発酵が進んで、水よりも軽いアルコールが多い(=甘味の少ない)「辛口」の日本酒は、数値がプラスになるという理屈です。
「ばくれん」の日本酒度は限界値ともいえるプラス20ですから、それだけ糖分が少なく、アルコール分も多くなっています。平均的な日本酒のアルコール度数は15~16度ですが、「ばくれん」は18~19度と高めで、飲んだ時に舌がピリピリと感じるほど。米の旨味もしっかり残っていて、飲みごたえのある味わいになっています。
「ばくれん」の味を支える徹底した品質管理
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「ばくれん」の蔵元、亀の井酒造の強みは、県内トップクラスともいわれる徹底した品質管理です。貯蔵設備は200坪以上あり、すべての商品が、出荷・販売される直前まで、しっかりと管理されています。
日本酒は米と水、そして麹や酵母といった菌の力によってできており、保管状態によって味が変化しやすいもの。そこで、亀の井酒造では温度調整可能な「サーマルタンク」を使用し、発酵中のもろみや貯蔵中の日本酒の温度を精密にコントロールすることで、味や質を均一に保っています。
サーマルタンクがずらりと並ぶ様子は、いわゆる酒蔵とは違う印象を与えますが、この徹底した品質管理こそが「ばくれん」の味を支えているのです。
「ばくれん」は、日本酒は甘口が好みという人にもぜひ飲んでほしいお酒。数値だけではわからない奥深い味わいを体験してみてください。
製造元:亀の井酒造株式会社
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