鹿児島の芋焼酎の歴史と銘柄を知ってみよう!
鹿児島で「酒」と言えば焼酎、しかも芋焼酎を指すのが一般的です。そして、鹿児島県産のサツマイモと地元の水で仕込まれる芋焼酎は「薩摩焼酎」として、世界貿易機構(WTO)のTRIPS協定が認める産地呼称焼酎の1つにもなっています。
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鹿児島焼酎の歴史
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鹿児島に芋焼酎が広まったのは江戸中期以降といわれています。16世紀頃までは米焼酎が造られ、飲まれていたようです。しかし、鹿児島は桜島の火山灰に覆われたシラス台地ゆえ、米作りには適しておらず、米不足になることもしばしば。そんな中、1705年、利右衛門なる人物が琉球からサツマイモの苗を薩摩に帰り持ち、その栽培に成功します。
その後、近隣農家にサツマイモ栽培を広め、この地を納めていた薩摩藩もそれを奨励したことで、生産量が拡大。焼酎の主原料も貴重な米からサツマイモに切り替わり、そこから一気に芋焼酎造り、そしてその消費が広まっていきました。現在では、鹿児島県内で日本酒を作る酒蔵は1軒ほどで、残り100軒以上が芋焼酎を仕込んでいます。
鹿児島の「芋焼酎」を紐解く
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鹿児島の「芋焼酎」を語るうえでもっとも重要なものといえば、やはりサツマイモ。現在、鹿児島で作られる芋焼酎の多くが、昭和50年代に鹿児島で改良された芋焼酎用のサツマイモ品種「コガネセンガン」で造られています。
このコガネセンガンは、アルコール発酵の元になるデンプンを多く持ち、さらに栗のようなホクホクさと甘み、なめらかな舌触りが特徴。そこから生まれる焼酎もクセがなく、上品な甘さを生み出します。
「芋焼酎=臭い、キツイ」というイメージを持つ人もいるようですが、それはすっかり過去のもの。あえて原点回帰、ガツンと芋の味と香りを前面に出している銘柄もありますが、全体的には様々な食事と一緒にたのしめるスッキリした味わいの芋焼酎が、主流となっています。
また、県産の紅イモ、赤芋、紫芋、橙芋など、多彩なサツマイモを使った芋焼酎も造られています。中には一般的に蒸したサツマイモで仕込むところを焼芋にしてみたり、米麹を使用せず、サツマイモから作った芋麹を用いたサツマイモ100%焼酎を造るところも。サツマイモに対する強いこだわりと愛情がいっぱい詰まった地元酒、それが鹿児島の「芋焼酎」なのです。
代表銘柄を飲もう!
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鹿児島焼酎を代表する3銘柄。最近は、大手コンビニやスーパーでも入手できるようです。いずれも飲みやすいスッキリ系なので、芋焼酎デビューにもおすすめです。
◆富乃宝山(とみのほうざん)/
鹿児島県日置市にある創業160年の西酒造。多彩な芋焼酎を生産する中、「ロックでおいしい」「静かなバーカウンターによく合う」焼酎を目指して造ったのが、「富乃宝山」です。
鹿児島県内の契約農家、さらに自社の農園で育てたコガネセンガンを主原料に、麹には清酒造りに使われる黄麹を加え、低温で発酵。出来上がった焼酎からは吟醸香や果実香が感じられ、味わいも実に上品。蔵元が目指した飲み方「ロック」で、そのおいしさを実感してみてください。
西酒造の詳細はこちら
https://www.nishi-shuzo.co.jp/
◆黒伊佐錦/
「焼酎発祥の地」ともいわれている鹿児島県伊佐市にある大口酒造。その代表銘柄が地元で「くろいさ」と呼ばれ愛される「黒伊佐錦」です。名前に「黒」とある通り、黒麹が使用されており、2000年代以降の黒麹仕込み焼酎ブームのさきがけにもなったといわれています。
華やかな香りとコクのある味わい、黒麹仕込みならではのキレの良さが特徴。甘さと辛さのバランスもよく、どんな飲み方で楽しめますが、特徴をより実感するなら、お湯割りがおすすめです。
大口酒造の詳細はこちら
http://www.isanishiki.com/
◆一刻者/
一刻者(いっこもん)とは、鹿児島弁で「頑固で自分を曲げない人」という意味。その名の通り、頑固一徹にサツマイモにこだわり、主原料としてだけでなく、麹も一般的に使用する米麹ではなく、コガネセンガンで造った芋麹を使用。そこに霊峰紫尾山からの伏流水を加えて仕込んだ、まさにサツマイモ100%の焼酎です。
その特徴は、芋由来のテルペンという物質が生み出す甘く芳しい香り、そしてスッキリとした飲み心地。この味わいをより満喫できる飲み方として、製造販売する宝酒造では炭酸割りを推奨しています。その割合も焼酎対炭酸水=1対2がベストとか。ぜひお試しを。
宝酒造の詳細はこちら
http://www.ikkomon.jp/
奥の深い鹿児島の芋焼酎をじっくり味わいたいですね。