「ぐい呑み」とは? 「おちょこ」との違いやルーツを紹介!

「ぐい呑み」とは、お酒を飲むときに使う酒器の一種で大きさに特徴があります。今回は、ぐい呑みの概要、ルーツや名前の由来、「おちょこ」との違い、ぐい呑みで日本酒を飲む場合のメリット、素材別にみる、ぐい呑みに合う日本酒の種類などを紹介します。
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まずはぐい呑みの概要からみていきましょう。
「ぐい呑み」とは?

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「ぐい呑み」とは、お酒を飲むときに用いられる酒器の一種です。さっそく特徴やルーツを確認していきましょう。
「ぐい呑み」は酒器の一種! 特徴は大きさにあり
「ぐい呑み(ぐい飲み)」は、大きさに特徴がある酒器です。「○センチ~○センチのもの」といったような、はっきりとした定義があるわけではありませんが、一般におちょこ(お猪口)より大きく、湯呑み茶碗より小さいサイズのものを「ぐい呑み」とすることが多いようです。
おちょこにもいろいろな大きさがありますが、広く使われているサイズは2勺(約36ミリリットル)~2.5勺(約45ミリリットル)。
対してぐい呑みは、おちょこの主流より大きい50ミリリットル前後~100ミリリットルのものが比較的多くみられ、1合(約180ミリリットル)サイズのものもあります。その一方、数は少ないものの2勺のおちょこより小さな30ミリリットルサイズのものもあるなど、実際には幅広い容量のぐい呑みが販売されています。
またぐい呑みは、粘土などを原料とする陶器や磁器を中心に、ガラス、錫(すず)や銀といった金属、竹や木、漆器など、さまざまな素材で作られています。デザインも豊富で見た目にもたのしく、なかには美術品として扱われる高額なものもあります。まさに多種多様なため、ぐい呑みは一部の愛飲家や収集家の間でコレクターズアイテムとして珍重されています。
さらに、ぐい呑みつきの日本酒イベントが開催されるなど、ぐい呑みは日本酒ファンにとって欠かせない酒器のひとつとなっています。

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「ぐい呑み」のルーツと名前の由来
「ぐい呑み」のルーツは「向付(向こう付け/むこうづけ)」にあるといわれています。
向付とは、懐石料理などの献立のひとつで、膳の中央より向こう側につける、刺身や酢の物といった料理のこと。その料理を盛る器についても「向付」と呼ばれています。
向付には、酒の肴となるものが盛られることが多いようです。お酒を飲むときに使う酒器のぐい呑みは、酒の肴を盛る向付の用途が変化したものといえます。
また「ぐい呑み」という名前の由来には、「ぐいっとつかんで飲むものだから」、あるいは「ぐいっと飲むものだから」といった諸説があります。
一方で、江戸時代の出版物では、お酒を一気に飲むという意味で「ぐひのみ」という言葉が使われています。そこから転じて「ぐいぐい飲める量のお酒が入る器」を「ぐい呑み」というようになったのかもしれませんね。
「ぐい呑み」と「おちょこ」の違いとは?

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「ぐい呑み」と「おちょこ(お猪口)」の違いは、器の大きさにあるといえます。
ぐい呑みは上述のとおり、おちょこより大きく、湯呑み茶碗より小さいものが一般的。そばつゆを入れる大きめの「そば猪口(ちょこ)」などもあるので、すべてとはいえませんが、ひと口、ふた口で飲み干せる小容量のものが中心のおちょこに対して、ぐい呑みは深さもあってお酒がたっぷり入るものが主流となっています。
ぐい呑みとおちょこの容量の違いは、注ぐ際に使う酒器にも影響しています。大ぶりなものが多いぐい呑みには、一升瓶、四合瓶などからお酒が直接注がれることもしばしばあります。
一方で、おちょこにお酒を注ぐときには、徳利(とっくり/とくり)が広く使われています。小ぶりなものが多いお猪口には、注ぎ口がついていたり口が細かったりする徳利のほうが注ぎやすいのかもしれません。
おちょこについてもっと知りたいときには以下の記事を要チェック。「おちょこ」の名前の由来などはもちろん、日本酒のタイプごとにおすすめ酒器なども紹介しています。
「ぐい呑み」で日本酒を飲むメリットは?

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「ぐい呑み」で日本酒を飲むメリットとしては、「おちょこ」に比べて大ぶりでお酒がたっぷり入るため、ひと口で飲む量を気にせずに飲めることや、比較的ゆっくり自分のペースで味わえることが挙げられます。
日本酒の種類にもよりますが、純米酒などについては、ぐい呑みでゆっくり味わうことで、飲むうちに温度が変わり、味わいの変化がたのしめることもメリットのひとつといえるでしょう。
また、ぐい呑みは素材も形状もデザインもバラエティーに富んでいます。形が異なるぐい呑みで同じお酒を飲み比べれば、感じやすくなったり控えめになったりする香りや味わいの違いが満喫できます。
さらには、手触りや口当たりといった触感やデザインそのものが堪能できるなど、香りや味わい以外でもたのしめるポイントがたくさんあるのも魅力的です。
なにより、ぐいぐい飲めるぐい呑みは、気軽にお酒をたのしむための酒器でもあります。飲んでみたかった銘柄を晩酌でじっくり味わうのにもよし、愛飲家同士で銘酒を飲んで盛り上がるのにもぴったりな酒器といえるでしょう。
「ぐい呑み」の素材ごとの特徴は? どんな日本酒が合う?

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「ぐい呑み」の素材ごとの特徴として、ガラス製のぐい呑みには日本酒のなかでも吟醸酒系のお酒が、陶器製のぐい呑みには純米酒が合う傾向があることが挙げられます。
ガラス製の「ぐい呑み」には吟醸酒が合う
涼しげな見た目を演出できるガラス製の「ぐい呑み」には、冷酒で飲むことが多い吟醸酒系の日本酒が合うでしょう。
とりわけ、薄いガラス製のぐい呑みでシャープな飲み口が持ち味の日本酒を飲むと、味わいがより引き立つといわれています。
気をつけたいのは器の大きさ。季節や室内環境にもよりますが、基本的に冷酒はすぐにぬるくなってしまいます。吟醸酒系の日本酒ならではの華やかな香りや繊細な味わいもぬるくなると変化してしまうので、1杯を早めに飲み切ることができる小さめのぐい呑みがおすすめです。飲む直前までお酒とともにぐい呑みも冷蔵庫で冷やしておくとよいでしょう。
なおガラス製のぐい呑みには、江戸切子など伝統文様などが刻まれた切子のぐい呑みをはじめ、美しい見た目のものが数多く存在します。日本酒好きの人への贈り物にもぴったりなので、機会があればチェックしてみてくださいね。

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陶器の「ぐい呑み」には純米酒が合う
粘土などを原料として作られる陶器の「ぐい呑み」には、純米酒がよく合います。
厚みのある陶器でお酒を飲むと口当たりがまろやかになり、コクのある純米酒の旨味や原料米に由来する甘味が口中に広がります。
また純米酒は、温度が変わることによる味わいの変化がたのしめるお酒でもあります。小さめのガラス製のぐい呑みで早めに飲み切りたい吟醸酒系の日本酒とは逆に、大きめのぐい呑みでゆっくり味わうのがおすすめです。
ぐい呑みは、より取り見取りできるほどたくさんの種類があります。さまざまな形や素材、デザインのものが販売されているなかから、好みのものを選ぶのがいちばんです。どんなお酒をぐい呑みで飲みたいかといった視点で選択するのもよいでしょう。その際には、ぜひ実際に手に取って、手触りや重さ、持ったときの感触などを確かめてみましょう。自分の手になじむぐい呑みを見つけて、おいしい日本酒を心ゆくまでたのしんでくださいね。
