ワインの澱(おり)って何?澱の意味や正体、澱が発生したワインのおいしい飲み方まで
ワインの澱(おり)とは、ワインの成分であるタンパク質やタンニン、ポリフェノールなどが結晶化したもの。飲んでも問題はありませんが、多くの場合は取り除いてからいただきます。今回は、ワインの澱の正体や澱が発生しやすいワインの種類、澱の取り除き方などを紹介します。
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まずは、ワインに発生する澱の意味や正体から確認していきましょう。
ワインの澱とは? 意味や読み方を確認
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ワインボトルに浮遊していたり、底に沈殿しているものがあれば、それは澱かもしれません。ここでは、ワインの澱の正体を探っていきます。
ワインボトルの底に沈むカス(沈殿物)のこと
ワインボトルの底に結晶のようなものが沈殿しているのを見かけたことはないでしょうか。これは「澱(おり)」といって、熟成の過程でワインの成分が結晶化したもので、上質なワインの証しともいわれています。
自然派ワイン(ヴァンナチュール)などを除いたほとんどのワインは、瓶詰め前に「澱引き」と呼ばれる作業で澱が取り除かれますが、ヴィンテージワインなどでは瓶内でゆっくりと熟成が進むうちにワインの旨味成分などが変化し、澱となってボトルの底に沈むことがあります。
ちなみに、「澱」という漢字には、液体の底に沈んだカスという意味があります。訓読みでは「よど」と読み、「空気が澱んでいる」「澱みなく話す」のように使われますが、ワインの澱は「おり」と読みます。常用外漢字なので「おり」「オリ」とひらがなやカタカナで表記される場合もあります。
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澱の正体は色素や渋味成分
澱とは、ワインの渋味成分であるタンニンや色素成分のアントシアニン(ポリフェノールの一種)、タンパク質などが結合したもの。ワインがゆっくりと時間をかけて熟成するうちにこれらの成分が空気となじみ、ボトル内で引き寄せ合って結晶化していきます。やがてボトルの底に沈み、澱となって堆積するのです。
なお、日本酒でいう「澱」は、もろみ(醪)を搾った直後にみられる米のかけらや酵母などの固形物のこと。旨味成分が多く含まれているため、あえて澱を残した「おりがらみ」などは愛飲家の間で根強い人気があります。
澱が発生しやすいワインは?
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澱は熟成の時を重ねた年代物の赤ワインに多くみられる印象がありますが、白ワインや若い赤ワインにも発生することがあります。
澱が発生しやすいワインとその特徴をみていきましょう。
◆オールドヴィンテージワイン
澱がよくみられるのが、古いヴィンテージの赤ワイン。熟成の時を経るごとに旨味成分が凝縮し、澱となってボトルの底に沈殿していきます。10年以上の長期熟成ワインは澱がある可能性が高いので、開栓前に澱を取り除く準備をしておきましょう。
長期間熟成された赤ワインはタンニンなどが結晶化した分、渋味が和らぎ、コクのあるまろやかな味わいになります。
じつは白ワインにも白い澱がみられることがあります。こちらは「酒石(しゅせき)」といってブドウの酸味成分である酒石酸とカルシウムなどのミネラル成分が結合して結晶化したもので、キラキラ光るその見た目から「ワインのダイヤモンド」の異名で語られることも。なお、酒石は赤ワインにも発生し、澱と区別される場合もあります。
◆タンニンを多く含む赤ワイン
澱のもととなるタンニンが多いワインは、澱が発生しやすいといわれています。フルボディのワインに澱がみられるのはそのためです。
◆自然派ワイン
可能な限り人の手を加えずに造られる自然派ワインは、ブドウ本来の風味を残すために、醸造工程で清澄・ろ過などの処理が行われないのが一般的。そのため、若いワインでも澱が発生している場合があります。
澱はワインと一緒に飲んでも大丈夫?
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澱はもともとワインに含まれる成分が熟成の過程で変化したものなので、飲んでも問題はありません。
ただし、澱自体にはえぐみや渋味があり、舌ざわりもザラザラとしていて、本来のおいしさが損なわれてしまう可能性があるため、次に紹介する方法で取り除いてから飲むことをおすすめします。
自宅でもできる!澱を取り除く2つの方法
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最後に、ワインの澱を取り除く方法を紹介します。長期熟成されたワインやフルボディのワイン、自然派ワインなどをたのしむ際は、以下の方法を試してみてください。
ボトルを立てておき、澱を底に落ち着かせる
未開封のワインは、コルク栓の場合、ボトルを横向きにして保管するのが一般的ですが、澱が発生している場合はボトルの側面に沈殿しているため、そのまま注ぐと、ワインと一緒に澱もグラスに入ってしまいます。以下の3つのステップで、澱を取り除きましょう。
1. 飲む1週間前からボトルを立てておく
ボトルを縦置きにして澱を底に沈殿させます。ボトルを動かすと、ワインのなかで一時的に澱が舞いますが、1週間ほどで落ち着くので、その間、動かさないようにしてください。
2. 飲む直前にラベルを上にしてボトルを静かに寝かせる
ボトルを横向きに寝かせ、底に沈殿した澱の一部を側面に移動させます。ポイントは、できる限り静かに寝かせること。そうすることで、グラスに注ぐ際に澱をボトルの肩でせき止めることができます。
3. 澱がグラスに移らないよう、やさしく注ぐ
ラベルを上にしたままそっとボトルを傾け、やさしくグラスに注ぎ入れます。最後の1滴まで注いでしまうと、せっかくボトルの肩でせき止めた澱がグラスに入ってしまうので注意が必要です。
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デキャンタに移して澱を取り除く
澱を取り除く方法のひとつに、「デキャンタージュ」があります。「デキャンタージュ」とは、ワインの栓を抜いてから、デキャンタ(デカンタ)と呼ばれるガラス容器に移し替えること。さっそく、デキャンタージュで澱を取り除く手順をみていきましょう。
1. ボトルを立てて底に澱を沈殿させる
ボトルから注ぐときと同じように、1週間ほど前からボトルを立てておき、澱を底に落ち着かせます。
2. 静かにボトルを傾けてワインをデキャンタに移す
まずは、ワインのなかで澱が舞わないようボトルを立てたままそっと栓を抜きます。次に、ボトルを静かに傾け、ワインの上澄みだけをデキャンタに移し替えます。
ワインは空気に触れると急激に酸化が進みます。長期間熟成されたワインなどは、デキャンタージュをすることで風味が損なわれる場合があるので、デキャンタに移す前にテイスティングしておくことをおすすめします。
ワインの澱は、上質なワインの証しともいわれていますが、なかには輸送や保管の際に悪条件が重なり、ワインが酸化して澱が発生するケースもあります。ワイン選びはもちろんですが、澱とのつき合い方も極めて、ワインをおいしくたのしみたいものですね。