休肝日は週に何日必要? 「効果がない」という噂の真相や理想的なお酒の飲み方も確認
休肝日とは、肝臓を休めるために飲酒をしない日のこと。効果についてはさらなる検証が必要とされていますが、厚生労働省では「1週間のうち、飲まない日を設ける」ことを推奨しています。今回は、休肝日の基本情報や、「効果がない」という噂の真相、理想的なお酒の飲み方などを紹介します。
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休肝日とは肝臓を休ませる日のことですが、その効果については賛否両論があります。
休肝日とは?
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まずは「休肝日」の基本情報からみていきましょう。
休肝日は肝臓を休める日
休肝日とは、肝臓を休める日のこと。おもに習慣的にお酒を飲んでいる人が、肝臓への負担を軽減するために飲酒を休む日、という意味で使われる言葉です。
行政機関や医療機関などが「休肝日をつくりましょう」と推奨するケースもあるほど広く浸透した言葉ですが、医学用語ではありません。
厚生労働省の健康情報サイトによると、「休肝日」は以下のように定義されています。
肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語。
なお、定義では「肝臓を休めるため」とされていますが、肝臓が疲労するほど飲酒を続けた場合、胃腸などの粘膜も少なからずダメージを受けます。肝臓に限らず、アルコールの影響を受ける臓器を元の状態に戻すことを休肝日の目的の1つと捉えておくとよいかもしれません。
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肝臓とアルコールの関係
摂取したアルコールの約9割は肝臓で処理されます。お酒の飲みすぎはさまざまな臓器に影響をおよぼしますが、なかでも肝臓への負担は大きく、アルコール性肝障害の増加が問題となっています。
アルコール性肝障害には、さまざまな病気がありますが、いずれも原因はお酒の飲み過ぎ。お酒を連日飲み続けると、肝細胞に中性脂肪がたまります。この状態を「脂肪肝」といいます。症状が現れるケースはまれで、健康診断などで見つかる場合が多いため、気づかずに飲酒を続けてしまう人もいるようです。
肝脂肪を放置してさらに多くのお酒を飲み続けると、アルコール性肝炎に進行するおそれがあります。脂肪肝の状態が長く続けばアルコール性肝線維症へ、さらに進むと肝硬変に至る可能性もあり、そこから肝臓がんに進行するケースも増えているといいます。
飲酒が原因の脂肪肝は、お酒を飲むのを休めば比較的短期間で改善するといわれています。いつから改善がみられるかは個人差がありますが、2〜4週間飲酒をやめれば元の状態に戻るという説もあるようです。
しかし、アルコール性肝炎まで進んでしまうと、数カ月単位の断酒が必要になることもあります。肝硬変に進行した場合は、お酒をやめても肝臓が元の状態に戻ることはありません。
肝臓は、私たちが眠っている間も働き続けます。
たとえば、体重60kgの人が日本酒1合(純アルコール量約20g分)を飲んだ場合、肝臓がアルコールを分解するのに、お酒を飲み終えてから3〜4時間ほどかかるといわれています。飲酒量が増えれば、その分、アルコールの分解に時間がかかります。3倍の量を飲めば、肝臓はアルコールの処理に半日以上を費やすことに。
※アルコールの分解にかかる時間には個人差があります。
肝臓は「沈黙の臓器」。症状が出るころには断酒を余儀なくされる可能性もあります。肝臓が音を上げる前に、適度に休ませる習慣を身につけたいものです。
(参考資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|アルコールと肝臓病
休肝日は「効果ない」という噂は本当?
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行政機関や医療機関などが発信する広報媒体や記事で、休肝日を推奨する文言を目にしたことがある人は多いと思われますが、その効果については、十分な検証がされているわけではないようです。
休肝日には意味がない、あるいは効果は限定的という専門家もいるだけに、休肝日の必要性に疑問を感じても不思議はないでしょう。
休肝日はアルコール依存症の予防に効果的
休肝日は肝臓を休めるためにお酒を飲まない日を週1日以上設けることを推奨する目的で作られた言葉ですが、実際は週に1日以上肝臓を休めたからといって、必ずしも肝臓の病気を防げるわけではありません。
休肝日を設けたとしても飲酒の総量が減らなければ肝臓への負担が軽減したとはいいきれず、また、飲酒量や飲酒の適量なども人によって異なるため、効果を証明するにはさらなるデータの収集が必要なのでしょう。
現時点でいえるのは、休肝日がアルコール依存症の顕在化に役立つということ。休肝日を無事にやりすごせず、イライラしたり寝つけなかったりした場合はアルコール依存症やその予備群である可能性があるため、場合によっては早期治療に取り組めます。また、自分の意思でお酒を抜く日を決められれば、「つい飲んでしまう」という行動を防げるため、依存症の予防にもつながりそうですね。
休肝日の効果については、「複数の研究での検証が必要」というのが厚生労働省も認めている公式見解のようですが、3日以上の休肝日を設けると、たくさんお酒を飲む人でも総死亡リスクとがんによる死亡リスクの増加が抑制されたという研究報告があるのも事実です。
(参考資料)
国立研究開発法人 国立がん研究センター|多目的コホート研究
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休肝日は肌の調子にも関係が!
お酒に含まれるエタノールは、肝臓内でアセトアルデヒドに分解されます。さらに酢酸へと代謝され、最終的には水と二酸化炭素に分解されて体外へ排出されるのですが、お酒を飲む人にとっては、このアセトアルデヒドがクセモノなのです。
アセトアルデヒドといえば、二日酔いの原因物質として知られていますが、お酒をたくさん飲む人や、アセトアルデヒドの分解が遅い体質の人は、長い時間この物質の影響下にさらされます。肌の老化もその一例。また、アセトアルデヒドの分解には大量の水分が使われるため、肌はうるおいを保てなくなります。
こうした肌トラブルを軽減するには、飲酒量の軽減や飲酒頻度の見直しが有効だといわれています。休肝日を作れば、飲酒の頻度も減らせるでしょう。
(参考資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|アルコールの吸収と分解
厚生労働省 e-ヘルスネット|アセトアルデヒド
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休肝日よりも飲酒の適量を守ることが大切
週に1日以上休肝日を設けたとしても、飲酒の総量が適量を超えていては、肝臓を修復しきれない可能性があり、本末転倒です。お酒を抜いた反動で翌日たくさん飲んでしまっては意味がありません。
1週間あたりの飲酒の総量がエタノール換算量で450gを超えている男性を詳しく調べた結果、休肝日の有無にかかわらず総死亡リスクは高まるという研究結果もあります。休肝日を設けてさえいればたくさん飲んでよいというわけではないということを肝に銘じておきましょう。
休肝日の効果を引き出すためには、日ごろから飲酒の適量を守ったうえで、お酒を飲まない日を設けることが重要です。肝臓を休める日を作るという意識も大切ですが、飲酒の総量を減らす気持ちで取り組んでみてください。
休肝日は週に何日とるのが効果的?
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効果的な休肝日の日数は明らかにはなっていませんが、内閣府所管の公益社団法人 アルコール健康医学協会では、「適正飲酒の10か条」のなかで、週に2回は休肝日を設けることを推奨しています。
1週間のうち5日間飲酒をしたら2日連続で休肝日をとるのではなく、2〜3日飲んだら1日休むというサイクルが効果的といわれているので、習慣として取り入れたいですね。
ちなみに、「適正飲酒の10か条」とは、正しいお酒の飲み方をわかりやすく整理したもの。地方自治体などの健康推進事業にも活用されているので、飲酒習慣がある人は覚えておくといいかもしれません。
出典 公益社団法人 アルコール健康医学協会<適正飲酒の10か条>
1. 談笑し 楽しく飲むのが基本です
2. 食べながら 適量範囲でゆっくりと
3. 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
4. つくろうよ 週に二日は休肝日
5. やめようよ きりなく長い飲み続け
6. 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
7. アルコール 薬と一緒は危険です
8. 飲まないで 妊娠中と授乳期は
9. 飲酒後の運動・入浴 要注意
10. 肝臓など 定期検査を忘れずに
(参考)
公益社団法人 アルコール健康医学協会|適正飲酒の10か条
休肝日の過ごし方と注意点
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休肝日の過ごし方は人それぞれですが、お酒を飲みたい気持ちを紛らわすのではなく、自分がたのしいと思うことを優先してみてください。読書や映画鑑賞、スポーツなど、なんでもかまいません。脂肪肝が気になる人や飲酒でストレス発散を目指していた人には、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
余力があったら、食事にこだわってみましょう。おすすめは以下の食材です。
◇肝臓の修復を促す良質なタンパク質
魚介類、肉類、卵、大豆製品など
◇肝機能をサポートするビタミンやミネラル
野菜や海藻、きのこなど
気をつけなければならないのが、休肝日の前日や翌日の飲酒量。繰り返しになりますが、休肝日前だから、前日お酒を抜いたからといって、たくさん飲んでしまっては休肝日をとる意味がありません。
お酒の雰囲気だけでもたのしみたい、飲んだ気分になりたいという人には、ノンアルコール飲料という選択肢もあります。アルコール0%とは思えないほどおいしい商品がたくさん登場しているので、お気に入りを探してみてはいかがでしょうか。
休肝日を取り入れ、健康に配慮した飲酒を心がけよう
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厚生労働省は、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を推進するべく、日本初となる飲酒ガイドライン「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を策定。2024年2月に公表しました。
ガイドラインは、飲酒に伴うリスクやお酒の影響を受けやすい要素を示したうえで、飲酒量の把握の仕方や飲酒量と健康リスクの関係、健康に配慮した飲酒の仕方などを提示。さらに生活習慣病(NCDs)のリスクを高める飲酒量を、1日あたりの純アルコール摂取量で、男性40g以上、女性20g以上としています。
純アルコール量とは、お酒に含まれるアルコール量のこと。純アルコール量20gをお酒の1単位とし、飲んだお酒の影響や分解時間の推定に使われています。
なお、純アルコール量は以下の数式で求められます。
純アルコール量(g) = 酒の量(ml) × 度数または% / 100 × 0.8(アルコールの比重)
純アルコール量20g(お酒の1単位)を身近なお酒の量に換算すると、以下のようになります。
◇ビール(アルコール度数5%):500ml
◇焼酎(アルコール度数25%):100ml
◇日本酒(アルコール度数15%):180ml(1合)
◇ウイスキー(アルコール度数40%):60ml
◇ワイン(アルコール度数12%):2杯弱
難しいことをいっているように感じる人もいるかもしれませんが、ガイドラインが示しているのは、お酒による体への影響や健康リスクを正しく認識し、自分に合った飲酒量を、健康に配慮した飲み方でたのしもうということ。
「休肝日」という言葉こそ登場しませんが、ガイドラインをもとに作成された広報資料には「1週間のうち、飲まない日を設ける」との1文が明記されています。
自分の適量を知る人にとって、休肝日はもちろん意味がありますが、大切なのは、健康に配慮した飲酒を心がけること。上で紹介した「適正飲酒の10か条」やガイドラインを確認し、お酒との上手なつきあい方をいま一度探ってみてはいかがでしょうか。
(参考資料)
厚生労働省|健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
厚生労働省|みんなに知ってほしい飲酒のこと(広報資料)
厚生労働省 e-ヘルスネット|飲酒量の単位
休肝日を設けることで、肝臓を休めたり飲酒の総量を減らしたりすることももちろん重要ですが、お酒の影響は年齢や性別、体質などによって異なります。定期的に検診を受けて、肝臓をはじめとする臓器の健康状態を把握し、リスク軽減に努めましょう。