「関谷醸造(せきやじょうぞう)」は「蓬莱泉」で名高い愛知県の蔵元! こだわりの酒造りや人気銘柄を紹介
「関谷醸造」は、江戸時代に創業した愛知県の老舗蔵です。今回は、蔵元の歴史、地元の愛知で絶大な支持を集める「蓬莱泉」をはじめとする主要銘柄、蔵元ならではの取り組みといえる生原酒の量り売り、日本酒造りに対する蔵の3つのこだわりなどを紹介します。
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関谷醸造は、愛知県北設楽郡の日本酒蔵元。「蓬莱泉(ほうらいせん)」や「明眸(めいぼう)」などの銘柄で知られています。
関谷醸造とは?
出典:関谷醸造株式会社ホームページ
まずは、関谷醸造の歴史からみていきましょう。
関谷醸造は約160年の歴史を持つ愛知の老舗蔵元
関谷醸造は、元治元年(1864年)創業の老舗蔵元。幕末期、新撰組が一躍その名を高めた池田屋事件のあった年から、7代目の関谷健(せきやたけし)氏が当主を務める現在まで、およそ160年にわたって日本酒を造り続けています。
関谷醸造が本社を構えているのは、愛知県北東部に位置する設楽町(したらちょう)。「奥三河(おくみかわ)」と呼ばれる自然豊かな地域にあります。
本社蔵では再現性のある酒造りを目指して機械化を行い、地元で圧倒的な支持を受ける「蓬莱泉」と、瀬戸市にあった蔵元から受け継いだ「明眸」などを造っています。
そのうち、愛知県内に約8割が出荷されているという銘酒「蓬莱泉」には、地元の人々はもちろん、全国の日本酒ファン垂涎の限定予約品、純米大吟醸酒の「空(R)(くう)」「吟(R)(ぎん)」などもラインナップされています。
また、隣の豊田市にはもうひとつの蔵「ほうらいせん吟醸工房(稲武工場)」があります。ここでは人の手による酒造りが行われていて、正統派日本酒シリーズの「一念不動(いちねんふどう)」などが造られています。
関谷醸造ではこのほか、焼酎や梅酒などのリキュールといった日本酒以外の酒類、日本酒や酒粕などを使用した食品やコスメ、さらにはグッズ類なども手掛けています。公式ネットショップで購入可能なものもあるのでチェックしてみてくださいね。
出典:関谷醸造株式会社ホームページ
関谷醸造は生原酒の量り売りで人気
関谷醸造の2つの蔵では、生原酒の量り売りが行われています。常時3~4種類、蔵ごとに異なるお酒が提供されるほか、毎年1月1日にはしぼりたての新酒が販売されるなど、季節ごとにラインナップされるお酒もあります。
加熱殺菌処理である「火入れ」も、アルコール度数を調整するための「加水」も行わない生原酒はとてもデリケートなお酒。量り売りは蔵元だからこそできる取り組みといえます。
関谷醸造ではそのほかにも、「ほうらいせん吟醸工房」や「道の駅したら」内にある「ほうらいせん酒らぼ」で開催される各種の酒造り体験、「ほうらいせん吟醸工房」で行われているオリジナルのお酒が小ロットで造れる「お酒のオーダーメイド」といった取り組みも行われています。
また名古屋市内では、「蓬莱泉」をはじめとする日本酒や日本酒カクテルなどがたのしめる「SAKE BAR 圓谷(まるたに)」、関谷醸造の日本酒と麹(こうじ)を使ったドリンク、そして地元・奥三河の食材などを使った料理を提供するダイニングバー「糀(こうじ)MARUTANI」という2つの飲食店も展開しています。
「蓬莱泉」が地元で愛されているわけは、なんといっても味わいのよさに違いありません。さらに、こうした日本酒が身近に感じられるような取り組みを蔵元が積極的に行っているところも、その理由のひとつに挙げられるでしょう。
関谷醸造の銘酒を支える酒造りの3つのこだわり
出典:関谷醸造株式会社ホームページ
関谷醸造がめざす「日本酒の可能性を柔軟に追求した高品質の酒造り」はどのように行われているのでしょう。蔵元が日本酒造りで必要とする3つのこだわりを紹介します。
酒造りの設計図をきちんと作る
お酒は「できる」ものではなく「造る」もの。
その信念のもと、関谷醸造の日本酒造りで第一に必要とされているものが、お酒の「設計図」です。
「設計図」とはどういうものなのでしょう。
まずは、自分たちが造ったお酒を飲む人はどういう人で、どんなシチュエーションで飲むのかをイメージしながら、味わいのアイデアを出し、コンセプトを固めていきます。
さらに、イメージした味わいやコンセプトを表現するために必要なものは何か、具体的には米の種類、精米歩合、酵母や麹の種類、発酵のさせ方や熟成度合いなどをどうするかを決めたものが、蔵元の考えるお酒の「設計図」といえます。
きちんとした「設計図」に基づいて「造る」のが関谷醸造の酒造り。「設計図」がないまま仕込みをして搾ったところで、そのお酒はただ「できた」にすぎず、蔵元が商品として認めるレベルには到底なりえないのです。
出典:関谷醸造株式会社ホームページ
伝統の技と機械化を柔軟に使い分けたていねいかつ正確な酒造り
2つ目に必要とされているのが「ていねいかつ正確な作業を行うこと」。
日本酒造りには数多くの工程があります。それぞれの工程で失敗や手抜きがあれば、米が持っているせっかくの可能性が少しずつ失われていき、最終的には何も残らなくなってしまいます。
しかし、ていねいで正確な日本酒造りを行うため、すべての工程で同じように目配りすることは、現実には何かを犠牲にしなければ難しいことでもあります。
そこで仕込み量が多い関谷醸造の本社蔵では、細やかな配慮がとりわけ必要な、原料処理の工程、麹・酒母(しゅぼ)・醪(もろみ)造りでの温度管理、瓶詰め前のろ過や調合について、蔵人がしっかりと目配りを行うために機械化を推進。コンピューターを使った温度管理も導入し、ていねいで正確な作業を実現させています。
その一方、小規模な仕込みとなる豊田市の吟醸工房では、手造りの酒造りが行われています。日本酒造りに必要な作業の本来の意味合いを学ぶことができるため、伝統の技を継承する場であるだけでなく、若い蔵人たちの修業の場ともなっています。
本社蔵の合理化、機械化よって蔵人たちに余裕が生まれ、人にしかできない感覚的、あるいは創造的な仕事に力を注げる環境が整えられるなど、好循環も生まれています。
出典:関谷醸造株式会社ホームページ
「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」の酒造り
3つ目に必要とされているのが「蔵人のチームワーク」です。
酒造りの世界には「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」という言葉があります。書き下せば「和は良酒を醸す」、すなわち蔵人のチームワークがよい酒を造り出すという意味になります。
日本酒造りは分業制です。多くの蔵人の手を経て、お酒は造られていきます。そうしたなかで蔵人それぞれが勝手に作業を行うと、ちぐはぐな味わいのお酒ができてしまいます。
酒の「設計図」をはじめ、米のでき映えや発酵の状態などを蔵人全員で共有し、チームワークよく酒造りを行うからこそ、飲む人の感動を呼ぶ高品質のお酒が造られるというのが蔵元の考えなのです。
また、関谷醸造は地元を大切にしている蔵元です。近隣で作られた米を6割以上も使っているばかりでなく、高齢などの理由で引退する地元農家の田んぼを引き受け、自分たちでも米作りを始めるなど、蔵人同士だけでなく、地域の人々との連携も図りながら、地元に根差した地酒造りを行っています。
なお「和醸良酒」には、もうひとつ意味があります。「良酒は和を醸す」、すなわちよい酒を飲みながら仲間や友と語り合うことで和が生まれるという意味です。
蔵元が考える良酒とは、米の旨味や甘味を持つ、やわらかで香味の調和の取れた酒。関谷醸造のこだわり抜いた酒造りは、飲む人々に和をもたらす良酒を造るために行われています。
米の自社栽培を行っている関谷醸造にはアグリ事業部があり、秋には一般の人も参加できる収穫祭がアグリ事業部主導で開催されます。吟醸工房などでの酒造り体験と合わせて、機会があればぜひ参加してみてくださいね。
関谷醸造株式会社
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