「IPA(アイピーエー)」とは? クラフトビール好きは知っておきたい味の特徴やフードペアリングを紹介

「IPA(アイピーエー)」とは? クラフトビール好きは知っておきたい味の特徴やフードペアリングを紹介
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「IPA」とは「India Pale Ale(インディア・ペールエール)」の略で、ホップを大量に使用して造られるビールのこと。アルコール度数が高めで、香りや苦味が強く出ているのが特徴です。今回は、IPAの特徴や種類、歴史、おいしい飲み方、おすすめのペアリングなどを紹介します。

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「IPA」は、原料や製法によって数多くの種類に分類されるビアスタイルのひとつ。近年のクラフトビールブームで注目が高まるIPAについて詳しくみていきましょう。

クラフトビール人気でよく目にする「IPA」とは?

クラフトビール人気でよく目にするIPAとは

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「IPA」は、ホップの苦味とやや高めのアルコール度数が特徴のビールです。まずは名前の由来や豊富な種類について紐解いていきます。

「IPA」とは、India Pale Ale(インディア・ペールエール)の略

IPAは略称で、正式な名前は「India Pale Ale(インディア・ペールエール)」。この頭文字を取って、「IPA(アイピーエー)」と呼ばれています。

IPAはその名のとおり、ペールエールの一種。ビアスタイルはその発酵方法によって、「エール」と呼ばれる上面発酵と、「ラガー」と呼ばれる下面発酵、自然発酵の3タイプに大別されますが、ペールエールはイギリス発祥のエールビールです。18世紀ごろのビールはほとんどが濃い色だったため、淡い色が特徴のこのビールを「ペールエール」と呼ぶようになりました。

IPAとはインディア・ペールエールの略

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「IPA」は大きく3つに分けられるペールエールの一種

イギリスで誕生したペールエールは、のちにアメリカに渡って独自の進化を遂げた「アメリカン・ペールエール」をはじめ、個性の異なる3つのビアスタイルに分類することができます。「IPA」はそのうちのひとつです。

イングリッシュ・ペールエール

一般的に、「ペールエール」と呼ばれるイギリスの伝統的なビール。18世紀にイングランド中部のバートン・オン・トレントで誕生した、フルーティーな香りと穏やかなホップの苦味、すっきりとした味わいが特徴のビールです。

アメリカンスタイル・ペールエール

イギリス発祥のペールエールがアメリカに渡って進化を遂げたもの。香りが特徴的なアメリカ産ホップを使っているため、イングリッシュ・ペールエールよりも香りが強く、華やかさが増しているのが特徴です。

IPA(インディア・ペールエール)

IPAの発祥は18世紀のイギリス(詳細は後述)。輸送時の腐敗や劣化を防ぐべく、ホップを大量に使用し、アルコール度数を高めた、力強い苦味とドライな味わいが特徴のビールです。

「IPA」はホップの香りと強い苦味、高いアルコール度数が特徴のビール

IPAの個性的な香りと味わいの秘密

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ホップを大量に使った「IPA」の魅力は、なんといっても華やかな香りと強い苦味、そして高めのアルコール度数にあります。その秘密は、輸送時の腐敗対策にありました。

「IPA」の「I」はインディアの頭文字ですが、IPAはインドで誕生したものではありません。大航海時代のイギリスは、当時植民地だったインドへと、なんとかビールをおいしいまま輸送しようと考えていましたが、長い航海で腐ってしまい、とても飲めたものではありませんでした。

19世紀初めにイギリスの帆船が東インド会社へアフリカ周りの喜望峰(きぼうほう)ルートで往復すると、約2年の歳月を要したという記録があります。19世紀後半に上海・ロンドン間の速さを競ったクリッパー船でさえ、100日以上の月日を必要としたといいます。

IPAが生まれたのは18世紀。当時輸送にかかっていた歳月を考えると、腐敗対策がいかに重要かは容易に想像できます。

当時イギリスで飲まれていたペールエールをそのままインドへ輸送すると、日数がかかるために腐敗して飲めなくなってしまいます。そこで防腐作用のあるといわれるホップを大量に使用し、アルコール度数を高めたビールが誕生しました。

すべては、インドにいるイギリス人においしいビールを届けるため。IPAの個性である強い苦味と個性的な味わい、アルコール度数の高さは、こうして生まれたのです。

「IPA」の種類を知ろう!ホップとテイストの奥深い世界

IPAには種類がある

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ビアスタイルのなかでもトップクラスの人気を誇る、「IPA」ですが、イギリスで発祥したあと、海を渡ってテイストの違うさまざまなIPAが派生しています。
ここでは、IPAのおもな種類をみていきましょう。

イングリッシュIPA

イギリス発祥の元祖IPA。イギリス産ホップならではの青草のような香りと強い苦味が特徴です。
アルコール度数は4.5〜7.0%程度。

アメリカンスタイルIPA(アメリカンIPA)

「イングリッシュIPA」よりもさらに苦味を強くしたのが、「アメリカンスタイルIPA」。アメリカ産の華やかな香りのホップをたくさん使うことで、苦味が強く、柑橘系などの華やかな香りが際立つドライなビアスタイルです。
アルコール度数は6.5〜7.5%程度。

ダブルIPA(インペリアルIPA)

ホップを大量に使い、アメリカンスタイルIPAの上をいく苦味とアルコール度数の高さを誇るアメリカ発祥のビアスタイル。「ダブルIPA」のように、通常のIPAよりホップを多く使ったIPAを「インペリアルIPA」と呼ぶことがあります。
さらに苦味を高めた「トリプルIPA」というビアスタイルも存在します。
アルコール度数は7.5~10.5%程度。

セッションIPA

「インペリアルIPA」とは逆にアルコール度数を抑え、穏やかな味わいに仕上げたIPAを「セッションIPA」といいます。
なお、もとのビールの個性を抑えて飲みやすくしたものを「セッションビール」といい、エールやラガーなど、さまざまなビアスタイルに適用されています。
アルコール度数は3.8~5.0%程度。

ほかにもIPAのビアスタイルでは、アメリカ東部のニューイングランド地方が発祥といわれる、小麦やオーツ麦などを使用して、ビールに濁りのある「ニューイングランドIPA」(ヘイジーIPA)や、フランスのシャンパーニュの辛口ワインに使われる「辛口」を意味する「ブリュット」がつけられたドライな後味の「ブリュットIPA」など、さまざまなタイプのIPAが存在しています。

日本では「アメリカンスタイルIPA」が入手しやすい

日本ではアメリカンスタイルIPAが主流

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「IPA」は日本でも広く愛飲されていますが、入手しやすいのは「アメリカンスタイルIPA」です。

アメリカンホップ由来のフルーティーでフローラルな柑橘系の香りを特徴に持つ「アメリカンスタイルIPA」は、イギリスで誕生したIPAよりも苦味が強く、アルコール度数も高めですが、とりわけアロマと苦味の強さに注目が集まり、世界中で流行。日本にも輸入され、この「アメリカンスタイルIPA」をお手本に造られたIPAが人気を集めています。

「IPA」のおいしい飲み方

IPA向けのグラス

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苦味と香りの強い「IPA」を、よりおいしく味わうためには、温度やグラスなどにもこだわりたいもの。ビールといえば、グラス自体も冷やしておき、そこに冷えたビールを注ぐイメージがありますが、IPAにはおすすめしません。冷やしすぎると、ホップの香りや苦味が感じにくくなってしまうからです。

IPAを飲むときの適温は、キンキンに冷えていない10〜12度程度といわれています。自宅で味わうときは、冷蔵庫から出して15分ほど経過したころが飲みごろです。

温度とあわせてこだわりたいのが、グラス選びです。ラガーなど冷やしてたのしむビールの場合は、温まりにくいよう取っ手のついたジョッキなどが好まれますが、ぬるめが適温のIPAにも、その魅力を最大限に引き出せる専用グラスが存在します。

IPAグラスは、上部が丸みを帯び、下部は狭くくびれがある独特のフォルムが特徴。この形状によって、残量が少なくなったときにもビールに薄く泡ができやすく、IPAの魅力であるホップの香りや苦味も最後までたのしめます。

IPAをおいしく味わうための最大のポイントは、泡を立てすぎないこと。IPAのようにホップの個性が強いビールは、泡を多く注ぐことで渋味が増す傾向があります。本来のおいしさを損なわないためにも、グラスを45度程度に傾けてゆっくりと注ぎ、泡を出しすぎないようにしましょう。

「IPA」と相性のよいおつまみは?

ビールと料理のペアリングが大切

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「IPA」の特徴であるホップの香りや苦味を堪能するには、おつまみとのペアリングも重要です。

「IPA」の苦味が引き立つ濃いめの味つけの料理

IPAには、ホップの香りや強い苦味に負けない濃いめの味つけの料理がよく合います。たとえば、すき焼き。もともと濃い味つけですが、食べ進めるにつれて、牛肉や野菜に味が染み込み、さらに濃くなっていきます。締めのうどんまで、IPAのパートナーとして申し分ないといえるでしょう。

醤油や砂糖、みりんなどで濃いめの味つけをした煮物などもマッチします。なかでも豚の角煮は一押しです。

「IPA」と好相性! 苦味が魅力のおつまみ

苦味のある食材も、IPAとよく合います。真っ先に思い浮かぶのは、ゴーヤでしょう。おすすめはやはり沖縄料理のゴーヤチャンプルー。ゴーヤの苦味により、IPAのホップの香りがより引き立ちます。
春先の山菜も苦味が強いので、ウドやタラの天ぷらなどとも合わせてみてください。

苦味の強いIPAとゴーヤチャンプルーは相性抜群

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「IPA」の苦味に負けないスパイシーな料理

IPAの苦味に負けないパンチの効いた味つけといえば、エスニックなどのスパイシーな料理。定番のカレーやタイ料理など、個性のある料理によく合います。家庭でも、肉料理に黒胡椒を利かせるなど、IPAに合わせた味つけにして、晩酌タイムを充実させてみてください。

クラフトビールの人気とともに、日本でも「IPA」が注目を集めるようになってきました。個性豊かなIPAは、ホップの種類によって香りや味が変化し、追求しがいのあるジャンルです。クラフトビールの世界に足を踏み入れたなら、ぜひIPAをたのしんでみてください。

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