焼酎は料理酒の代わりになる!? 焼酎と料理酒の調理効果の違いや料理の調味料としての焼酎の使い道を解説
焼酎は、料理の調味料として使えるお酒です。一般的な料理酒や清酒(日本酒)とは用途が異なりますが、特定の料理に対しては料理酒の代用品として重宝します。今回は、料理酒の種類や特徴、料理の調味料としての焼酎の使い道、料理に焼酎を活かすコツなどを紹介します。
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焼酎は料理酒としても使えますが、料理酒とは用途が若干異なります。まずは、料理酒の種類や料理にもたらす効果をチェックし、料理の調味料としての焼酎の役割をみていきましょう。
料理酒の種類と特徴は?
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焼酎は、日本酒やワインのように料理の調味料として使えるお酒ですが、料理酒の代用品として使えるものなのでしょうか。本題に入る前に、まずは料理酒とはどんなものなのか、その種類や特徴についてみていきましょう。
一般的に「料理酒」の名で販売されているものの多くは、料理目的に特化した「醸造調味料(または発酵調味料)」ですが、料理用に醸造された清酒や飲用の清酒、合成清酒なども「料理酒」として使われます。
以下では、それぞれの特徴を紹介します。
醸造・発酵調味料
一般的に「料理酒」と呼ばれているのは、米や米麹を原料に造った醸造調味料。もろみの段階で食塩などを添加して、そのままでは飲めないよう「不可飲処置」をしているため、アルコール分が含まれていてもお酒として味わうことはできません。なお、料理用に特化した醸造調味料は「酒類」ではなく、酒税のかからない「食品」として扱われます。
塩分を加えた料理酒は、「加塩料理酒」「料理酒(加塩タイプ)」などとも呼ばれ、日本酒と比べて塩辛く、風味は弱めです。
料理用清酒(料理清酒)
清酒(日本酒)の持つ調理効果を重視した、料理用の清酒。飲用の清酒(日本酒)に比べて、料理をおいしく仕上げる醸造成分を豊富に含んでいるのが特徴です。こちらは酒税のかかる「酒類」に分類されます。
原材料に食塩を使用していないことから、「無塩タイプ」と表現されることもあります。加塩タイプに比べて、素材の旨味を引き立てるといわれています。
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飲用の清酒
飲むことを目的に造られる日本酒のこと。当然ですが、食塩は含まれていません。
一般的な日本酒は、料理をおいしくする成分よりも、香りや味のバランス、キレのよさなどを追求して造られているため、調理効果に限っていえば、同じ清酒でも料理用清酒にかなわない場合もあります。いっぽうでペアリング観点では、そのときに飲むお酒を料理に使うと、つながりが生まれ、すばらしい相性を体験できるという側面も。
合成清酒
米を使わず、アルコールや焼酎、清酒にブドウ糖などを加えて製造し、香味や色沢などが清酒に似たものを「合成清酒」といいます。
料理用に造られる合成清酒は、米や米麹を使って清酒と同じように造った原酒などをもとに、糖類や有機酸、アミノ酸などを加えて、清酒らしい味わいと調理効果を引き出しています。清酒に比べて税率が低いことから、広く使われていますが、清酒本来の風味にはかないません。
レシピに記載された「酒」とは?
レシピの材料リストに「酒」と記載されていることがありますが、これは加塩タイプの料理酒ではなく、塩分を含まない「清酒」を指すのが一般的です。この場合は、料理用清酒と飲用清酒(日本酒)のどちらを使っても問題ないでしょう。
「酒」の代わりに加塩タイプの料理酒を使った場合、塩分などの量を調整する必要が生じる可能性があるので、注意が必要です。
料理酒を使う効果は?
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料理酒には、さまざまな調理効果があるといわれています。ここでは、醸造・発酵調味料や料理用清酒の製造元が紹介している料理酒の調理効果をまとめてみました。
料理酒のお酒の持つ料理に関わる要素は、おもに
◇醸造成分によるもの
◇アルコールによるもの
◇醸造成分や塩分、アルコールなどが複合的に絡み合ってもたらすもの
の3つです。
これらがもたらすおもな調理効果は以下のとおりです。
(1)コクや旨味を加える
(2)肉などの食材をやわらかくする
(3)食材に味を浸み込みやすくする
(4)肉や魚などの臭みを消す
(5)よい香りをプラス
また、アルコールの菌の繁殖を抑制するはたらきや塩分との相乗効果から、以下のような役割も期待できそうです。
(6)(塩と合わせて)素材の保存性を高める
なお、料理酒というと和食に欠かせない調味料というイメージがありますが、実際は和洋中問わず、さまざまな料理に活用できます。
(参考資料)
『日本醸造協会誌』第102巻第6号「酒類調味料の調理効果について」 P428
焼酎は料理酒の代わりに使える? 料理酒との違いは?
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料理酒や日本酒のほかにも、ワイン、ビール、紹興酒、ブランデー、ラム酒、ウイスキーなど、料理の調味料として役立つお酒はたくさんあります。焼酎もそのひとつです。
料理酒がないとき、焼酎での代用効果は限定的
焼酎も料理の調味料として役立つお酒です。料理によっては、料理酒がないときの代用品として活用できますが、料理酒の持つすべての調理効果が期待できるわけではありません。その理由を探ります。
料理酒のベースは、醸造酒である清酒(日本酒)。一方、焼酎はもろみを蒸溜して造られる蒸溜酒に分類されます。焼酎は蒸溜の段階で、もろみに含まれる旨味成分が取り除かれてしまうため、料理酒が持つ料理をおいしくする成分はほとんど残っていません。
したがって、料理にコクや旨味を加えたり、いい香りをプラスする効果などはそれほど期待できないと考えるのが妥当でしょう。
調味料としての焼酎に期待できる調理効果は?
お酒の調理効果をもたらす要素は前述したとおりですが、蒸溜酒である焼酎には、料理をおいしくする成分がアルコール分と香り成分くらいしか残っていないため、期待できる調理効果はアルコールが関わるものと香りづけ効果と考えられます。
以上のことから、上で紹介した料理酒の調理効果のうち、調味料としての焼酎の可能性として、以下の4つが期待されます。
(2)肉などの食材をやわらかくする
(3)食材に味を浸み込みやすくする
(5)本格焼酎などは素材由来の香りを付加できる
(6)(塩と合わせて)素材の保存性を高める
なお、焼酎の種類によって向き不向きがあるため、すべての焼酎がこれらの役割を担えるわけではありません。詳しくは後述します。
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調味料としての焼酎の役割
焼酎には、料理酒同様の料理をおいしくする成分はありませんが、調味料として用いるうえでは、アルコール度数の高さを活かした活用法があります。
よく知られている活用法に、食材や容器の消毒があります。また、梅干しを漬ける際に微生物の繁殖を防ぐ目的でアルコール度数35度以上の甲類焼酎を使用するのは有名な話です。
といっても、これはアルコール特有の殺菌作用と食塩が持つ殺菌・防腐効果の相互作用を利用したもの。食塩には食材から微生物の活動に不可欠な水分を低下させる働きがありますが、焼酎を加えることで食塩はさらに染み込みやすくなり、カビなどの発生を防ぐのです。
容器の殺菌や、食材のカビ防止に使われる焼酎は、アルコール度数が高いものが重宝されます。このように、食材の保存性を高めるなど、目的によっては料理酒より優れた効果が期待できそうです。
ほかの調味料を染み込みやすくしたり、肉などの食材をやわらかくしたりというアルコールのはたらきも期待できるでしょう(上記(2)と(3))。
料理に使える焼酎の種類と焼酎ならではの使い道
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焼酎にはさまざまな種類があり、どれを選ぶかで、料理との相性や調味料としての役割も変わってきます。
焼酎の種類をおさらい
焼酎は酒税法上、「連続式蒸溜焼酎」と「単式蒸溜焼酎」に大別されます。一般的に、連続式蒸溜焼酎は甲類焼酎、単式蒸溜焼酎は本格焼酎(乙類焼酎)の名で親しまれています。
本格焼酎は芋焼酎や麦焼酎、米焼酎など、主原料ごとにさらに細かく分類されます。
焼酎の種類によって異なる料理との相性
連続式蒸溜機で繰り返し蒸溜される甲類焼酎は、雑味のないクリアな味わいが特徴です。クセがないので、どんな料理ともマッチします。
一方、単式蒸溜機で一度だけ蒸溜される本格焼酎は、原料の個性をたのしむお酒です。主原料の種類やその産地、麹の種類、仕込み、蒸溜方法、貯蔵方法やその年数、ろ過の有無など、さまざまな条件によって風味や香りが異なり、料理とのマリアージュも微妙に変わってきます。
本格焼酎は、フードペアリングをたのしみながら堪能できるお酒。基本となる食材と同じ産地の焼酎を選んだり、郷土料理に合わせてその土地の銘柄をチョイスしたりするのが王道といわれています。
ほかにも、芋焼酎には濃い味つけの料理、麦焼酎にはさっぱりとした味の料理、米焼酎にはご飯のお供になるおつまみが合う、といった具合に、焼酎ファンの間ではペアリングの法則が語り継がれていますが、こうした組み合わせを決定的に誤ってしまうと、せっかくの料理や焼酎の魅力も半減しかねません。
調味料としてのお酒と料理の関係も同じ。おいしく味わうには、組み合わせが重要になってきます。
余った焼酎を料理酒代わりに! 焼酎でおいしくなる料理
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焼酎を調味料として使うとおいしく仕上がる料理を紹介します。
煮込み料理に
牛すじの煮込みや豚の角煮、チャーシュー、いわしの煮つけなど、肉や魚を煮込んで作る料理焼酎を使っても濃厚に仕上がります。
いずれも濃い味つけの料理なので、芋焼酎や泡盛のようにクセの強い焼酎も活躍します。実際、沖縄には、皮つきの三枚肉を泡盛と醤油で甘辛く味つけしたラフテーと呼ばれる郷土料理があります。いわゆる豚の角煮ですが、泡盛で煮込むことで、肉がとろけるようにやわらかく仕上がるそう。
蒸し料理に
あさりの酒蒸しや鶏ささみの酒蒸しをはじめとする蒸し料理にも、焼酎は役立ちます。豚肉の蒸し料理や、魚のホイル焼きなどにも重宝するので、「焼酎蒸し」をキーワードにレシピを探してみてください。
ただしアルコール度数が高い焼酎は、フライパンで調理する際に火柱が上がる可能性があるため、火加減の調整には細心の注意が必要です。
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漬け物に
焼酎は漬け物作りにも重宝します。
おすすめは、「キュウリの焼酎漬け」。一口大に切ったキュウリ(2〜3本分)をチャックつきの袋に入れ、甲類焼酎小さじ2、砂糖大さじ1と2分の1、塩小さじ1、好みで鷹の爪を加えて、封をして軽くもみ込むだけ。冷蔵庫に入れて半日から1日ほどでおいしく食べられます。ほのかな焼酎のコクと甘味、絶妙な塩加減でおつまみにぴったり。
オリジナル調味料に
甲類焼酎なら、辛味調味料やニンニク醤油など、オリジナルのスパイス作りにも役立ちます。なかでも辛味調味料は、唐辛子を詰めたボトルに焼酎を満たして1週間ほど寝かせるだけと作り方もかんたん。さまざまな料理のアレンジや「味変」に使えるうえ、保存にも適しているので、機会があればぜひ作ってみてください。
調味料としての焼酎の使い道はほかにもある
焼酎は、肉や魚の臭み取りにも向いています。肉や魚を焼酎に漬け込んでおくことで、アルコールが揮発する際にイヤなニオイを蒸発させてくれるので、生臭さを消すことができます。
また、天ぷらやフライの衣の材料に焼酎を加えると、サクサク食感に仕上がるといわれています。
焼酎は、飲むだけでなく、料理をおいしくする調味料としても役立つお酒。料理酒の代用とはいきませんが、その役割や特長を調理に活かせばおいしい料理をたのしむことができます。