ヴィンテージウイスキー(ビンテージウイスキー)は、コレクター垂涎の希少なウイスキー!
ヴィンテージウイスキーとは、一言でいうと年代物の優れた味わいのウイスキーのこと。希少性が高く、コレクターから熱い視線が注がれています。今回はヴィンテージウイスキーの特徴やオールドボトルとの違い、人気の理由、入手方法などについて紹介します。
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ヴィンテージウイスキー(ビンテージ)とは?
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ヴィンテージウイスキーには明確な定義はありませんが、一般的にはどのようなウイスキーを指し、どんな魅力があるのか、オールドボトルとの違いにも触れつつひも解きます。
ヴィンテージウイスキーの特徴
「ヴィンテージ」とは、もともとはワイン用ブドウの収穫年を指す言葉で、品質のよいブドウが収穫できた、いわゆる「当たり年」に醸造されたワインは、「ヴィンテージワイン(ビンテージワイン)」と呼ばれています。
ウイスキーにおいて「ヴィンテージ(ビンテージ)」という言葉は、おもに以下2つの意味合いで使われていますが、明確な定義や使い分け方などは曖昧のようです。
1.蒸溜年
2.古くて優れたもの、古くて価値あるもの、年代物
ちなみに、ウイスキー業界で初めてシングルモルトウイスキーに「ヴィンテージ」の概念を取り入れたのは、スコッチの伝道師と称されるベリー・ブラザーズ&ラッド社のロニー・コックス氏といわれています。
ウイスキーのヴィンテージと熟成年数~ボトルラベルの見方
ウイスキーのボトルラベルに印字されている数字に注目して、ヴィンテージと熟成年数の違いを紹介します。
ヴィンテージ
ヴィンテージを謳うウイスキーの場合、蒸溜年がボトルラベルに表示されています。たとえば、ラベルに「Distilled 1990」や「Distilled in 1990」とある場合は、1990年に蒸溜されたウイスキーであることを示しています。
基本的にウイスキーは、ブレンデッドウイスキーでもシングルモルトウイスキーでも、味わいを調整するために複数の原酒がブレンドされていますが、混合する原酒の熟成年数はバラバラで、同一年に蒸溜されたものだけが使われているとは限りません。
しかし、ボトルラベルに「Distilled 1990」と明記されていれば、1990年に蒸溜されたウイスキーのみが詰められているということを意味します。
熟成年数
熟成年数とは、ウイスキーを樽に詰めて熟成(エイジング)させた期間のこと。熟成年数は、ブレンドしたウイスキーの一番若い年数を表示するのがルールで、ボトルラベルに「AGED 10 YEARS OLD」や「10年」などと表示されている場合は、最低10年間熟成されたウイスキーが使われていることを意味します。「最低」10年なので、ブレンドされているウイスキーは10年ものだけでなく、15年や20年もののウイスキーが使われていることもあります。
なお、同銘柄で同じ熟成年数がラベルに表示されていても、現行品と旧ボトルでは構成内容が異なる場合があります。たとえば、熟成年数10年のボトルで、現行品は10年や12年もののウイスキーが多く使われているのに対して、旧ボトルには20年や30年ものの貴重なウイスキーも使われていた、ということがあり得ます。
ヴィンテージと熟成年数が意味するものはそれぞれ異なるため、覚えておくと購入の際などに役立ちそうですね。
ヴィンテージウイスキーの魅力とオールドボトルの違い
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ヴィンテージウイスキーのおもな魅力と、「オールドボトル」との違いをみていきます。
「ヴィンテージウイスキー」の魅力
ヴィンテージウイスキーは、コレクター心をくすぐる魅力を持っています。
一般にウイスキーは長期熟成を経て完成しますが、熟成樽の種類や貯蔵庫の環境、職人による日々の管理やピークの見極めなど、そのどれが欠けてもよいウイスキーには仕上がりません。なかには、蒸溜所のノウハウやこだわりを超えた、偶然ともいえる好条件が重なって生まれる味わいもあり、同じ条件下で貯蔵されていても樽によって酒質が異なることがよくあります。
それゆえに、10年、20年と長い年月をかけて育まれた、極めて完成度が高く優れた味わいのウイスキーは、とても価値ある存在です。ひとたび世に出れば、必然的に世界中の愛飲家やコレクターから引く手あまたとなり、希少性がいっそう高まることになります。
また、ヴィンテージウイスキーは、昔懐かしい時代の味わいをたのしめるという点でも魅力的です。とくに、1970年代以降はヨーロッパやアメリカを中心に生産の効率化が進み、伝統的な製法で造られるウイスキーが激減しました。
それが近年、1960年代以前の手間暇かけて造られたウイスキーのよさが見直されたことで、当時の味をぜひとも味わいたいというニーズが増大して、人気が高まっています。
なお、ウイスキーにも、銘柄によっては当たり年とされる年があり、完成度が高いヴィンテージウイスキーのなかには、プレミア価格の高値で取引されているものもあります。
ヴィンテージウイスキーとオールドボトルの違い
ヴィンテージウイスキーとともに人気があるのが、「オールドボトル(オールドウイスキー)」です。
オールドボトルにも明確な定義はありませんが、ヴィンテージウイスキーは、おもに蒸溜年をベースに考えられるのに対して、オールドボトルは、一般に10年以上前に瓶詰めされた古いボトル全般を指すことが多いようです。また、現行品以外すべてを「オールドボトル」と呼ぶ場合もあります。
たとえば、スコッチウイスキーでは、1991年にEU(当時EC)が発足して容量規制が始まる前の、750ミリリットルや757ミリリットルボトルなどがオールドボトルとして人気があります。
※EUの容量規制では、100・200・350・500・700・1000・1500・1750・2000ミリリットルの9種類のみが認められています。
日本では、級別制度が廃止される前の「特級」表示のあるボトルを、オールドボトルとするのが一般的です。なお、「特級」と表示されていたのは、1953年から1989年4月1日に廃止されるまでの期間となります。
また、輸入ものでは、1953年に制定された酒税証紙制度を受けて、「酒税証紙」や「LIQUOR TAX CERTIFICATE」と印刷された酒税証紙がボトルキャップに貼付されているものなどが、オールドボトルに分類されています。
ヴィンテージウイスキーの人気度
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ヴィンテージウイスキーは、なぜ人気があるのでしょうか。コレクターに好まれる理由と取引の現状を紹介します。
ヴィンテージウイスキーがコレクターに好まれる理由
繰り返しになりますが、ヴィンテージウイスキーがコレクターに人気の理由としては、希少価値が高く、貴重な味わいを堪能できることなどが挙げられます。小規模蒸溜所が大手企業の傘下に入り、生産が効率化されたことで、味わいの変わった銘柄もあり、非効率でも手間暇かけて造られていた時代の味をたのしみたいというニーズもあるのです。
また、「オールドヴィンテージ」などと呼ばれる、何十年も前にボトリングされたヴィンテージウイスキーは、経年変化による味わいの違いをたのしめる点も、好まれる理由のひとつです。
ウイスキーは、瓶詰めされてから長い期間を経ると、瓶内のアルコールと水の分子間融合が進んで、まろやかな酒質になるといわれています。この変化は、ウイスキー1本1本で異なり、保管状態がよければ長い年月の間に価値が上がることもあります。ただし、「アルコール度数の高い蒸溜酒は瓶内で変化することはない」という考え方もあり、一概にはいえません。
このほか、ラベルや瓶の形が現行品とは異なるために、コレクションしたくなる人もいるようです。
加熱するヴィンテージウイスキーの争奪戦事情
ヴィンテージウイスキーは、世界的なオークション会社が取扱うことも多く、また近年はオンライン上にウイスキー専用オークションサイトが誕生するなど、盛り上がりを見せています。
ヴィンテージウイスキーのなかでも人気が高いのは、1960年代以前に造られたウイスキーです。生産数や現存数の少ないものや、経営者が変わるなどして、かつての味わいを造れなくなっている銘柄のなかには、何十倍、何百倍、何千倍の高値で取引されているものもあります。
高額の落札金額で世界を驚かせたのが、スコッチウイスキーの「ザ・マッカラン」。2018年に開催されたオークションで、ウイスキーのオークション史上最高額となる、約1億7400万円で落札されました。1926年蒸溜、60年熟成の「ザ・マッカラン」で、ラベルはアイルランド人の画家、マイケル・ディロン氏が手掛けた1点ものです。
じつはその少し前に、同じく1926年ものの「ザ・マッカラン ヴァレリオ・アダミ」が約1億2500万円で落札され史上最高額を記録したばかりでしたが、わずか2カ月あまりで更新されてしまいました。
このように、ヴィンテージウイスキーの人気は高まるばかりで、世界規模で争奪戦が繰り広げられています。
ジャパニーズウイスキーのヴィンテージ
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ヴィンテージウイスキーの人気は、スコッチウイスキーに限りません。世界で高評価を得ているジャパニーズウイスキーのヴィンテージも、オークションの常連です。
たとえば、2012年に閉鎖された軽井沢蒸溜所の「軽井沢1960年」は、52年熟成の貴重なもの。いくつかボトリングされているうちの、「Zodiac Rat Cask #5627」がイギリスのオークションにかけられた際には、約4690万円で落札されました。
また、ニッカウヰスキーの「余市1984年」は、熟成20年を迎えた2004年に限定500本・1本2万1000円でリリースされましたが、インターネット上ではプレミアつきの250万円近い値がついているものも見かけます。
サントリーの「山崎50年」も、2011年に限定150本・1本100万円でリリースされたボトルが、2018年にオークションにかけられて約3250万円で落札されました。2022年6月には「山崎55年」が60万ドル(約8100万円)で落札され話題になりました。なお、「山崎」は12年、18年、25年も人気で、ネットオークションでは100万円以上で落札されることも珍しくないようです。
同じくサントリーの「響30年」や「白州25年 リミテッドエディション」なども、100万円ほどのプレミア価格で取引されています。
ヴィンテージウイスキーの入手方法
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ヴィンテージウイスキーの入手は、あらゆる意味でかんたんではありません。その多くは希少でニーズが高く、プレミア価格となっているので、一般的には高嶺の花といえそうです。
近年は、インターネット上のオークションサイトに出品されていたり、ショッピングサイトで販売されていたりと、手軽にアクセスしやすくなっていますが、実際に買うとなると、それが本物かどうか、良好な状態で保管されていたかどうかを見極めるのは至難の業です。
購入する際には、評価の高い出品者や、信頼できる販売店を選ぶことが大切。安心感を第一に考えるなら、ヴィンテージウイスキーやオールドボトルを豊富に扱っている専門店の実店舗や、オンラインショップなどを利用したほうがよさそうです。
一般的に「ヴィンテージウイスキー」と呼ばれるものは、年代物の貴重な味わいをたのしめるのが魅力。1960年代以前のものとなると極めて希少で入手困難ですが、オーセンティックバーなどで偶然に出会ったときには、ぜひ珠玉の一杯を味わってみたいものですね。