【ビールde バトンリレー】VERTERE 代表 鈴木光さん、醸造長 辻野木景さん
2021年の3月に終了したビール専門の姉妹サイト「ビアパレット」の好評連載記事をたのしいお酒.jpで紹介します。今回は、THE DAY east tokyo店長 長谷川さんからご紹介頂いた、VERTERE 代表の鈴木さんと醸造長の辻野さんを取材しました。2020年1月
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目次
ビールを愛する、VERTERE 鈴木さん、辻野さん
ビールを愛する、VERTERE 鈴木さん、辻野さん
お酒があまり飲めないからこそ、美味しいお酒を飲みたかった
鈴木さん(以下・鈴木):醸造長の辻野さんとは、高校3年生の時のクラスメイトで、同じ大学に進みました。大学時代には、辻野さんと何か事業ができないかと構想を練っていました。大学の専攻は造園科学科だったので、当時はまだビールで事業を立ち上げるとは思ってもいませんでした。
2人ともお酒が弱く、大学の飲み会にあまり参加していませんでした。それでも1~2杯だけなら、お酒を美味しく飲むことができるので、それだったら飲み放題に2,000円を使うのではなく、自分の好きなお酒を飲んだほうがいいなと思っていました。
行ったことのないバーなどに2人で行き、様々な種類のお酒を飲んでいました。その中で、ビールも様々な種類があるんだと思いハマっていきましたね。
辻野さん(以下・辻野):アルバイト先の近くにベルギービールのお店があったので、バイト終わりに飲んだりしていました。父もビールが好きで、父がお店に飲みに行く時によく付き合っていました。「Bass Pale ale」は、家に常備してあり、よく飲んでいました。
ビールはベルギービールからハマっていきました
鈴木:ビールにハマったのは、ベルギービールを飲んでからです。「Hoegaarden(ヒューガルデン)」や「Weihenstephaner(ヴァイエンシュテファン)」などにハマりました。
ビールを飲み始めたときは、一般的なビールを飲むことができず、ベルギービールを飲んでから、ようやく一般的なビールも飲めるようになりました。
ずっと何か事業を始めたいと思っていました
鈴木:ビールを造って事業にしていこうと思ったのは、大学を卒業して1年後の2012年の時でした。
辻野:私が大学卒業後に、高円寺にある「高円寺麦酒工房」で働いていた際、飲みに来た鈴木さんに「ビールを醸造して販売することは、面白いし、ビジネスになるんじゃないか」と提案した事がきっかけでした。
その後、2014年に「VERTERE」の会社を立ち上げました。
ビールを美味しく飲むには、場所も関係していると思いました
辻野:奥多摩にお店をオープンしたのは、巡り合わせです。知り合いの方に奥多摩に呼んでいただき、キャンプをしたことがきっかけでした。
キャンプ中に外で飲んだビールが最高に美味しくて、ビールを飲むには場所が重要だなと思ったんです。都心で飲むより、自然に囲まれた場所の方が、美味しいビールを飲んでもらえるのではと考えました。
当時、どこにお店を出すのか悩んでいましたが、すぐに奥多摩にお店を出そうと決めました。
カフェは、ほぼすべて自分達で造りました
鈴木:奥多摩にお店を作ろうと思ってからは、運よく今の場所に空きがあり入ることができました。
カフェをオープンするために、8ヵ月程かけて、自分達でお店を作っていきました。電気や水道の設置以外の店内、庭はすべて自分達で造りました。木材を手に入れるために、山奥に探しに行ったりもしました。
カフェは、2015年の夏にオープンして、2020年の夏で5年目になります。
まずは、カフェをオープンすることはできましたが、「造ったビールを提供する場所を作りたい」と思っていたので、自分達が造ったビールを提供するまでは、物足りない気がしていました。
築70年の古民家を改装したカフェ
季節によってお店にいらっしゃるお客様が違います
辻野:季節によってお店にいらっしゃるお客様は違います。VERTEREを目的にお店に来てくださるお客様もいらっしゃいますが、観光客のお客様も多いです。
鈴木:春や秋には、登山やサイクリングをするお客様が多いですが、夏になると、川遊びやダムを見に来たお客様が多いです。一番忙しいのは、紅葉の時期ですね。
海外のお客様もお店によく来店されます。
鈴木:今は、海外のお客様も多く来店されます。自然が好きな日本在住の外国人の方もいらっしゃいますね。週末、自然に触れたいお客様が都内などから訪れます。
辻野:キャンプをする為に奥多摩を訪れたお客様が、2日連続で来店してくださることもあります。最近VERTEREのビールを缶でも販売もするようになり、缶の反響がとても多いですね。
鈴木:瓶から缶に変わっただけで、売り上げが2倍くらい違います。大きなリュックで来ているお客様が多いので、そのまま詰め込んで持ち運ぶ事ができるので喜ばれています。ただ、反響が大きいので缶を作ったらすぐに完売になってしまいます。
「真剣に遊んで」ビールと関わっています
鈴木:ビールに関しては、真剣に仕事としてやっていますが、毎日遊んでいるような感覚ですね。
辻野:高校生の時から鈴木さんと一緒なので、ここまで遊んできているような感覚ですが、真剣にやっています。
見たことのないビールは片っ端から買っています
鈴木:見たことのないビールは片っ端から購入しています。“ジャケットがかっこいい”とか、“面白そう”と思ったものは、まず買っています。
辻野:「色キレイ」とか「香りが面白い」など、口に含んだ時に、味だけじゃなくて五感全部で楽しめるようなビールが好きです。
最後まで一気に飲み切るのではなく、意識してビールを飲んでしまいます。研究して飲むことが癖になっています。
鈴木:スタッフが集まってビールを飲むこともあります。みんなで持ち寄る時は、20~30種類くらいを飲んでいます。その時にはみんなが一斉に意見を行ったりするので、面白いですね。
仕事の一環であり、遊びのような感じです。
辻野:その場の意見は、そのまま醸造に参考にすることが多いです。いいなと思った事は、どんどん取り込んでいます。
お客様がビールを飲んでいる姿に今でも慣れません
辻野:初めて造ったビールをお客様に飲んでもらって、その姿を見たときは感動しました。お客様がビールを飲んでいる姿を見るのは、未だに慣れないです。お客様に出すときは、いつもひやひやしてしまいます。
また、自分で美味しいビールを飲むと「悔しいな」と思うことがあります。
自分ひとりでは、美味しいビールを造ることはできないと思います。美味しいと思うビールのつくり方を真似して、さらに美味しいビールを造っていく事ができるのが、クラフトビール業界の良いところだなと思います。
アメリカで学んだことをアウトプットしています
鈴木:毎年冬になると、2人でアメリカに行っています。一番最初に行った時は、ブルワリーを50軒程回って、300種類くらいのビールを飲みました。
色んな味のビールを飲んで、アメリカのビールを勉強し、日本に帰ってきた時にひたすらアウトプットしながら、ビールを造っています。
ブルワーさんから学んだ事を1個1個試しながら、自分達の知識がなくなったかなと思った時に、また冬にアメリカに行くという事を繰り返しています。
年に1回、ビールの事について、大量に学ぶ事ができるのは、ビールを造るうえで、とても大切な事だと思っています。
今後は木樽を使ったビールも、市場に先んじて力を入れていきたい
鈴木:クラフトビール業界のIPAのクオリティーが上がってきて、ある程度のクオリティーはどこの醸造所でも作れるようになってきていいるな、という感覚があります。
今は、クラフトビールの飲み手がIPAにハマっており、飲み手が成長していくと、現在のクラフトビール市場が変わっていくのかなと思っています。
その市場を先回りしていくために、バレルエイジドビール造りに着手しています。今後木樽を使ったビールも増やしていきます。ウイスキー樽ではインペリアルスタウトなどを、ワイン樽では、サワー系やセゾンなどを造っていきたいと考えています。
クラフトビールを飲む人が着実に増えていき、ちゃんとしたクオリティーを造り手が提供できるようになったら、飲み手もどんどん違うものにチャレンジしていこうと思ってくれると思います。
だからこそ、クオリティーが高いビールを提供し続けないといけないなと思っています。
辻野:飲み手の方と一緒に成長していくという感じですね。でも、お客様よりも先回りして市場を作っていかないといけないので、難しいです。
木樽貯蔵庫を見せていただきました
もっと広い場所で、製造量を増やしていきたい
辻野:もっと広い場所を見つけて、製造量を拡大していきたいなと思っています。今は、以前と比べて製造量は5倍に増えています。
鈴木:奥多摩で場所を探しているのですが、奥多摩には平坦な場所が少ないので、場所を探すのが大変です。
右:Cream(Style:Mild Ale)/左:Goldem (Style:Goldem Ale)
カフェのフードメニューの自家製ビールのから揚げは、Creamをマリネしています
オススメしたいビールは「全部です!」
スタッフ皆がはまっている「Hill Farmstead」
鈴木:今スタッフ皆がはまっているビールは、「Hill Farmstead」のビールです。アメリカのバーモント州のWild Aleです。日本では、ほとんど入荷がないので、アメリカに行った時に大量に買って帰るビールです。
全部のビールがオススメ!でも特にオススメしたいのは?
辻野:オススメのビールを聞かれたときは、「全部」と答えています!
その中で特に私がオススメしたいのは、「ブロンド」と「セゾン」です。この2つのビールは、レシピを試行錯誤して考えたので、是非皆さんに飲んでいただきたいですね。
鈴木:私がオススメしたいのは、「Passiflora」「Casimiroa」「Globba」。缶でも販売していて人気です。
VERTEREのビールの名前は、植物の学名です
辻野:VERTEREのビールの名前のほとんどが、植物の学名になっています。大学が造園科学科というのもあるのですが、誰がぱっと見てもわからない名前にしたいなと思っていました。
鈴木:VERTEREという店名もラテン語で、ビールの名前につけている植物の学名表記もラテン語になっています。一見意味がわからない言葉を、みんながVERTEREのビールの名前として意味を持って新しく使い始めるというのが、面白いなと思いました。
辻野:既に意味を持ったビールの名前だと先入観を持って飲んでしまうので、何か意味の分からない名前だけど、飲んだら美味しいというのがいいな、と思っています。
庭にはテラス席もあり、自然の中でビールを飲むこともできます
休日は家でゆっくりと過ごしています
鈴木:休日は、だいたい家族とどこかに出かけたり、子供と遊んでいます。
あとは、生物が好きです。インド、インドネシア、オーストラリアに吹くモンスーンのDVDを見ています。その土地の生物の多様性であったり、人々の暮らしを見るのが楽しいです。
あとは、深海魚とか宇宙の世界がすごいなと思ってみています。
辻野:最近は本を読んでいることが多いです。特に哲学書や詩集が好きで読んでいます。2人とも山に囲まれた生活をしているのに、山に登ることはしないんです。
【鈴木光さん、辻野木景さん プロフィール】
鈴木光さんは、八王子出身。辻野木景さんは阿佐ヶ谷出身。鈴木さんと辻野さんは高校3年生のクラスメイト。大学は、東京農業大学造園科学科に進学する。
大学卒業後の3年間は、鈴木さんは一般企業に、辻野さんは家業を継ぎ、2014年にVERTERE合同会社を設立し、2016年に醸造を始めた。
《撮影協力》VERTERE
「VERTERE」の意味は変化する、回転するという意味のラテン語
店舗概要
・TEL:0428-85-8590
・所在地:〒198-0212 東京都西多摩郡奥多摩町氷川212
・アクセス:JR青梅線 奥多摩駅出てすぐ
・営業時間
月金:14:00~21:00
土日祝:12:00~21:00
・定休日:火・水・木曜日
※季節変動有り。詳しくは公式Facebookをご覧ください。
ホームぺージ・SNS
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・公式HP:
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※本記事は「ビアパレット」で掲載していた記事を再編集しています。記事内の情報や商品の価格は取材当時の情報ですので、ご了承ください。