完全手造りにこだわる「藤居醸造」の酒造りの魅力とは
「藤居醸造」は、麦焼酎「泰明(たいめい)」で知られる大分県南部の小さな蔵元です。親子二代が昔ながらの手造りの製法で造る麦焼酎は、麦のあるがままの風味や香り、旨味が堪能できる絶品揃い。蔵の歴史やこだわりに触れながら、その魅力を探っていきます。
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藤居醸造の歴史とこだわり
藤居醸造合資会社
藤居醸造は親子二代、二人三脚で営む小さな蔵
藤居醸造は、「井田萬力屋(いだまんりきや)」の屋号でも知られる、大分県豊後大野市にある小さな焼酎蔵。社長自ら杜氏を務め、親子二代が二人三脚で手掛ける麦焼酎は、麦本来の香りや旨味を堪能できると多くのファンに親しまれています。
昭和4年(1929年)の創業以来、昔ながらの道具を用いた伝統の製法を貫いているため、ごくわずかな量しか生産できません。しかしながら蔵元は、ほかの製法では表現できない唯一無二の味わいを引き出すべく、五感を最大限に生かした焼酎造りにこだわり、高品質の焼酎造りを続けています。
藤居醸造の焼酎を育む豊後大野市の自然
大分県豊後大野市は、「祖母(そぼ)・傾(こたむき)・大崩(おおくえ)ユネスコエコパーク」と「おおいた豊後大野ジオパーク」を有する自然の宝庫。九州で唯一、ユネスコエコパークと日本ジオパークの両方に認定されていることからも、景観の雄大さと美しさは想像がつくことでしょう。
藤居醸造が蔵を構える千歳町は、豊後大野市の北東に位置する人口2000人ほどの小さな町。春には桜が乱れ咲き、秋には米や麦が穂を揺らす自然豊かな地で、藤居醸造の麦焼酎は育まれています。
付近を大野川水系の茜川が流れていますが、蔵元が仕込み水や割り水に用いているのは、阿蘇山が長い年月をかけて磨き上げた清らかな軟水。この名水は地下から汲み上げるのではなく、竹田湧水群まで汲みに行き入手しているそうです。
飲みやすさより飲みごたえを重視し、麦の「あるがまま」の魅力を引き出す
藤居醸造の麦焼酎は、個性派揃い。クセが少なく、すっきりとして飲みやすい麦焼酎が多いなか、ふくよかな香りややさしい甘味、複雑に重なり合う味わいといった、麦の個性に重点を置いた飲みごたえのある麦焼酎を多く製造しています。
機械化・自動化が進むなか、藤居醸造が貫くのは、小さな蔵ならではの柔軟性と熟練の技術を生かした完全手造りの製法です。「変化の激しい今だからこそ、焼酎の質には徹底的にこだわりたい」という想いを胸に、素材と対話し、長年の経験と五感を働かせながら、麦本来の風味や香り、旨味を素直に引き出していくのだといいます。
豊後大野市の風土と昔ながらの手造りの製法が育む、麦の「あるがまま」の味わい。藤居醸造の麦焼酎には、そんな魅力がギュッと詰まっています。
藤居醸造の酒造り
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藤居醸造の焼酎造りは、原料処理から瓶詰め、ラベル貼りまで手作業
藤居醸造の焼酎造りは、原料処理から製麹(せいきく)、仕込み、発酵、蒸溜、貯蔵・熟成、そして瓶詰めやラベル貼りに至るまで、すべてが手作業。麦を洗ったり、蒸し上がった麦に麹菌を繁殖させたり、もろみを造ったり、蒸溜や熟成を手作業で行うのはもちろんのこと、それぞれの工程に費やす時間や温度管理なども、長年培った技術や経験をもとにアナログな手法で行います。
たとえば、精麦・洗麦した麦は適度な水分を含ませてから蒸しますが、この浸漬(しんせき)にかける時間は水温や麦の状態を見て微調整しています。また、もろみの品温管理に最新のIoT技術を導入する蔵が増えるなか、藤居醸造では長年培った技術と経験によって杜氏が管理しています。手間隙かけた焼酎造りにこだわることで、完全手造りでなければ表現できない味わいを引き出しているのです。
藤居醸造では「むろ蓋」や「木桶」など昔ながらの焼酎造りの道具が活躍
藤居醸造の焼酎造りには、昔ながらの道具が不可欠です。原料の麦は木桶で蒸し、製麹には「むろ蓋(ぶた)」を使って2日がかりで麦麹を作ります。
製麹の作業では、蒸し上がった麦に麹菌を繁殖させ、少量ずつ蓋に盛っていくのですが、盛り方や蓋の積み方によって、麦麹の出来が変わってきます。酵素力の強い麦麹に仕上げるには、蔵人が手触りや香りを確かめながら微調整し、品温と水分をコントロールする必要があるそう。蔵元は、細やかに配慮しながら、熟練の職人技で焼酎造りに欠かせない麦麹をていねいに作っています。
藤居醸造では自家製蒸溜機で独特の焼酎の風味を引き出す
焼酎の酒質を大きく左右するのが、蒸溜工程です。藤居醸造では、常圧蒸溜・減圧蒸溜のどちらの蒸溜法も使用しますが、この蔵ならではの重厚な味わいの決め手は、独自の改良を施した自家製常圧蒸溜機にあります。
常圧蒸溜焼酎独特の油臭や品質劣化のもととなる油分は、焼酎を冷却し、油を凝固させてから少しずつすくい取っていきます。そうしてできあがった「泰明」を始めとした焼酎は、タンクで熟成の時を刻み、瓶詰めされて世に送り出されるのです。
藤居醸造のラインナップを飲み比べ
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食中酒にぴったりの麦焼酎「泰明(たいめい)」
「泰明」ブランドは、二代目杜氏の名から命名された麦焼酎シリーズです。食中酒として人気を集める「泰明」は、原料の個性をしっかりと引き出した常圧蒸溜焼酎と、クリアでクセの少ない減圧蒸溜焼酎がブレンドされています。スッキリとした味わいながら、「泰明」シリーズの特長である麦を炒ったような香ばしさがたのしめる、日常酒にぴったりの1本です。
飲み方は、キレのよさをたのしみたい人には、ロックや水割りがおすすめ。麦らしい香ばしさを堪能するなら、お湯割りも試してみてください。
「特蒸泰明(とくじょうたいめい)」は香ばしさがたまらないワンランク上の麦焼酎
「特蒸泰明」は、飲みやすさよりも飲みごたえを意識した、藤居醸造の主力商品です。常圧蒸溜と減圧蒸溜をブレンドした「泰明」に対し、こちらは100%常圧蒸溜の麦焼酎。二条大麦と麦麹を原料に、昔ながらの手造りで精魂込めて仕込んだもろみを自家製常圧蒸溜機でていねいに蒸溜し、麦本来の香ばしい香りと重厚感を引き出した、飲みごたえ満点の逸品です。
さまざまな料理とマッチしますが、脂ものや味の濃い料理と絶妙に引き立て合うのが「特蒸泰明」の魅力。食中酒としてはもちろん、食後にチョコレートなどと合わせてもおいしくいただけます。
飲み方は、麦ならではのふくよかな香りとやさしい甘味、幾重にも重なり合う風味をたのしむならロックが、麦の香ばしい香りを満喫するならお湯割りがおすすめです。
地元の裸麦で造った麦チョコ系麦焼酎「トヨノカゼ」
「顔の見える焼酎造り」をコンセプトに、原料から醸造まで地元・千歳町にこだわり抜いた、麦チョコ系麦焼酎「トヨノカゼ」。原料には、これまで焼酎に使われてこなかった裸麦トヨノカゼが使われています。地元の有志で栽培したこの麦を使い、3か月という通常より短い醸造期間で、長く熟成させたかのようなまろやかな味わいに仕上げられているのが特徴です。香り豊かな一品で、口の中にふわりと広がる麦の香りは「麦チョコのよう」と表現されることもあります。
スッキリ感&フルーティーな香りが特徴の「麦波(ばっは)」
雑味の少ないクリアな味わいを特徴づける減圧蒸溜も、藤居醸造の手にかかれば風味豊かに。「麦波」は、スッキリとしながらも麦の香りが感じられる、フルーティーな焼酎に仕上がっています。
ロックや水割り、お湯割り、炭酸割りなど、どんな飲み方でもたのしめますが、フルーティーな香りを存分に味わうなら、水割りやお湯割りがおすすめです。
特別な日に飲みたいスペシャルな麦焼酎
最後に、特別な日にちびちびとたのしみたい、スペシャルな麦焼酎を紹介します。
【泰明 ここから】
長期保存できるように「泰明」に使われる材料のなかでもとくに優れた材料を使い、通常の倍の時間をかけてていねいに仕込んだ、アルコール度数42度のプレミアムな麦焼酎。長自分へのプレゼントはもちろん、大切な人へのギフトとしてもおすすめです。
【舞香(まいか)】
常圧蒸溜機で蒸溜した麦焼酎を3年間貯蔵・熟成させた長期貯蔵酒(古酒)。ホーロータンクで時を重ねる間に風味や香りが落ち着きを増し、まさに香りが舞うがごとく麦本来の香りが立ち上るスペシャルな1本です。食中酒としてはもちろんのこと、スイーツなどのお供にも最適。
(結び)
藤居醸造が貫く酒造りのこだわりを知るには、「泰明」ブランドの主力商品である「特蒸泰明」を試すとよいでしょう。焼酎初心者やアルコールに強くない人は、定番の「泰明」から入るのもおすすめです。
製造元:藤居醸造合資会社
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大分の焼酎【泰明(たいめい)】小さな蔵にしか出せない味がある