日本酒のお燗に使う「ちろり」ってどんな酒器? 特徴や種類、正しい使い方やおいしい飲み方を解説

日本酒のお燗に使う「ちろり」ってどんな酒器? 特徴や種類、正しい使い方やおいしい飲み方を解説

「ちろり」とは、日本酒を温めるときに使われる酒器のことで、自宅でも手軽に燗酒をたのしめると人気のアイテムです。ここでは、「ちろり」の特徴や魅力、選び方などを徹底解説。お燗するときのポイントや日本酒をおいしく味わうためのコツも紹介します。

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「ちろり」は日本酒のお燗に役立つ酒器

「ちろり」は日本酒のお燗に役立つ酒器

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「ちろり」は日本酒を温めるときに使う伝統の酒器

「ちろり」とは、お酒のお燗に使われる便利な酒器のこと。取っ手と注ぎ口のついた筒型の容器で、鍋などで沸かしたお湯に浸けるだけで、手軽に燗酒を作ることができます。好みの温度に温まったら、お猪口(ちょこ)などに注ぐだけと使い方もかんたんです。

「ちろり」と同じように湯煎に用いられる酒器として「徳利(とっくり)」が挙げられますが、陶器製の「徳利」に比べて、銅や錫(すず)など熱伝導性の高い素材で造られている「ちろり」は、すばやくお燗することができるのがメリット。また、「ちろり」にはお酒全体が均一に温められる性質があり、雑味が抑えられて、まろやかな味わいに仕上がるといわれています。

「ちろり」の名前の由来

「ちろり」は漢字で「銚釐」と書きます。中国から伝わったといわれていますが、伝来した時期や経路は明らかになっていません。

また「ちろり」の語源には諸説あり、囲炉裏に埋めて日本酒を温めていたことから「地炉裏(ちろり)」となったという説から、ちろりと短時間でお燗できることから「ちろり」と呼ばれたという説、注ぎ口から燗酒が注がれるときに出る音から名づけられたという説、酒好きが待ちきれずに舌をちろりと出したという説まで、さまざまな説が伝えられています。

なお、「ちろり」は、京阪地方の方言で、銅や真鍮(しんちゅう)製のお酒を温める酒器を指す「酒タンポ(酒湯婆=さけたんぽ)」の名で呼ばれることもあります。

「ちろり」の歴史

「ちろり」の登場は江戸時代後期といわれていて、当時の庶民の日常の様子をまとめた資料にも「ちろり」が描かれています。

「ちろり」が使われるようになる以前は、鉄製の燗鍋(かんなべ)や鉄銚子(ちょうし)に日本酒を注いで直接火にかける「直火燗(じかびかん)」が一般的でした。その後、銅製の燗鍋で温めたものを銚子や徳利に移して飲まれるようになりますが、囲炉裏や竈(かまど)などでは火力の調節が難しく、風味が損なわれてしまうことも少なくなかったようです。

しかし、こうした問題は、「ちろり」の誕生によって解決。「ちろり」が普及してからは、湯煎で燗をつける「湯煎燗」が一般的になっていきました。

「ちろり」は材質や形状もさまざま

「ちろり」は材質や形状もさまざま

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「ちろり」の形状

「ちろり」は取っ手と注ぎ口が特徴の酒器です。多くは細長いコップのような形状をしていて、湯煎時は鍋の縁に取っ手を引っ掛けて使用します。なかには、やかんのような持ち手がついているものや蓋つきのもの、水差しのような形状のもののほか、冷酒用「ちろり」なども存在します。

容量は1合(180ミリリットル)から5合程度までさまざま。自宅でちびちび飲む場合はSサイズ(約1合)のものを、複数人で飲む場合は大きめのものを選ぶとよいでしょう。

「ちろり」の材質

「ちろり」が登場した当初は銅製のものが主流でしたが、現在は銅やアルミ、ステンレス、錫といった金属製から、スタイリッシュな耐熱ガラス製のものまで、さまざまな材質の「ちろり」が販売されています。

形状やサイズの違い、蓋の有無はもちろんですが、「ちろり」の材質もまた、湯煎にかかる時間や保温性、燗酒の味わいなどを左右する重要な要素になります。

「ちろり」選びのポイントをチェック

「ちろり」選びのポイントをチェック

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日常使いにはアルミ製または銅製がおすすめ

「ちろり」の材質のなかでももっともコストパフォーマンスが高いのが、アルミ製です。1,000円前後とお財布にもやさしく、熱伝導率もほかの材質に比べて遜色がありません。燗酒ならではの風味や香りも十分にたのしめるので、日常使いのアイテムとして気軽に活用できそうです。

また、燗酒の初心者は、取っ手が熱くなりにくいように加工されたものをチョイスするとよいでしょう。

アウトドアには直火燗も可能なステンレス製をチョイス

キャンプなどのアウトドアシーンで活躍するのが、熱伝導性が高く、丈夫でスタッキングも可能なステンレス製の「ちろり」。自然の中でいただく燗酒はまた格別です。

湯煎はもちろんのこと、直火にも対応しているので、日本酒のお燗だけでなくコーヒーやホットミルク作りにも役立つはず。5合サイズなど大きめのものを選べば、用途が広がりそうです。

また、一刻も早く燗酒が飲みたい、という人には、より熱伝導性の高い銅製の「ちろり」もおすすめ。

日本酒の味わいを堪能するなら錫製や蓋つきも視野に

愛飲家の間で人気を集めているのが、熱燗にも冷酒にも使える錫製の「ちろり」。錫は熱伝導性が高いうえ、錫製の容器で温めるとお酒の雑味が抑えられて味がまろやかになるといわれています。機能性とデザイン性を兼ね備えた高級品が多いため、ほかの材質のものに比べて値が張りますが、錫器ならではの色合いと温かみのある質感は、日本酒気分を大いに盛り立ててくれそうです。

また、日本酒の風味や香りを逃さずたのしみたい人には、蓋つきの「ちろり」もおすすめです。「ちろり」は熱伝導性が高い分、冷めるのも早いといわれていますが、蓋つきのものは比較的冷めにくいという利点があります。燗酒をゆっくり味わいたい人は、蓋つきの「ちろり」を選んでみてはいかがでしょう。

ガラス製からブランド品まで、「ちろり」はギフトにも重宝

「ちろり」は、日本酒を温める道具であるのと同時に、テーブルウェアとしての側面も持ち合わせた酒器です。2つの魅力を最大限に発揮する「ちろり」は、日本酒好きな人に贈るギフトにも適しています。

中身が見える耐熱ガラス製の「ちろり」や、「能作」などの人気ブランドが手掛ける錫製「ちろり」なら、日本酒の風味や香りとともに食卓を美しく彩ってくれるはずです。

なかには、お猪口や卓上酒燗器(しゅかんき)とセットになった「ちろり」も流通しているので、こちらもチェックしてみては。

「ちろり」で日本酒を飲んでみよう

「ちろり」で日本酒を飲んでみよう

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「ちろり」で日本酒をお燗するときの手順

「ちろり」で日本酒を燗につける際の手順を、かんたんに紹介します。

◇手順1
「ちろり」に日本酒を注ぎ、湯煎するための鍋ややかん、酒燗器などに水を入れます。温めムラが生じにくいよう、「ちろり」に入れたお酒の高さと鍋に入れた水の高さが同等、または鍋の水のラインが上になるよう調節しましょう。

◇手順2
お湯を沸かし、沸騰する直前(90度程度)で火を止めて、日本酒の入った「ちろり」を湯に浸します。好みの温度になったら、「ちろり」を引き上げます。最初は調理用の温度計があると便利ですが、慣れてくると香りの開き具合(立ち上る香りの具合)で判断できるようになるでしょう。

「ちろり」で日本酒をお燗するときのポイント

燗酒の温度は、「ちろり」を湯に浸す時間の長さで調節するのが基本です。ぬるめがよければ時間を短めに、熱めが好みならば少し長めに浸します。一般的には、約2分で30~40度ほど、約3分で40~45度ほど、約4分で45~50度ほどが目安です。ただし、「ちろり」の大きさや材質、蓋つきかどうか、鍋や酒燗器の大きさや深さ、湯量などによって温まり方は変わってきます。

なお、ぬるめが好みだからと低い温度のお湯で湯煎すると、温まるまでに時間がかかり、アルコール分が飛んでしまうこともあります。また、熱伝導性の高い「ちろり」でお燗をつける場合、徳利に比べて温めたお酒が冷めやすいので、お燗したお酒が冷めてしまう前に飲み切れる量を、その都度お燗するのもおいしく飲むコツですね。

燗酒の温度で異なる日本酒の味わい

燗酒の飲みごろの温度は、飲む人によって異なります。日本酒の種類や温度帯によって味わいや香りが異なるので、いろんな組み合わせをたのしんで、お気に入りを探してみてください。

◇日向燗(ひなたかん)
ほのかな香りをたのしみたい人は、30度程度の「日向燗」がおすすめ。夏でもおいしく飲めます。

◇人肌燗(ひとはだかん)
体温と同じくらいの35度程度の「人肌燗」では、やわらかな口当たりと米や麹の香りがたのしめます。

◇ぬる燗(ぬるかん)
40度程度のぬる燗では、ほどよく広がる香りと甘味や旨味がたのしめます。

◇上燗(じょうかん)
45度程度の上燗は、香りが引き締まり、甘味や旨味とのバランスがちょうどよく仕上がる温度です。お猪口に注ぐと、かすかに湯気が立ち上ります。

◇熱燗(あつかん)
50度程度の熱燗は、「ちろり」から湯気が上がり、口に含むと熱さを感じる温度です。辛口でキレがよく、香りもシャープに感じられます。

◇飛びきり燗(とびきりかん)
55度程度の飛びきり燗では、香りがよりシャープになり、アルコールの刺激が強くなります。熱燗より辛口になりますが、軽く炙った魚のひれを加えて「ひれ酒」にすると、香ばしい香りがたのしめます。

「ちろり」で日本酒をおいしく味わうには?

「ちろり」で日本酒をおいしく味わうには?

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燗酒に最適な日本酒を選ぶ

日本酒は「純米酒」や「吟醸酒」、「本醸造酒」などの種類や造り、使用した酵母などによって、飲むときに適した温度が異なります。もちろん、個人の好みやシーンによって変わりますが、燗酒に合いやすいものと、燗に向きづらいものがあります。

日本酒は一般に、温めると旨味がふくらみ、香りは豊かになり、口当たりはまろやかになります。一方で、アルコールの刺激は温度が上がるごとに強くなるため、より辛口に感じられるようになります。

こうした変化をもっともたのしめるのは、米の旨味とコクが強く感じられる純米酒や本醸造酒(あまり精米していないタイプ)です。また、生酛造りや山廃仕込みのお酒も温めることで旨味とコクが増し、冷酒とは一味違った芳醇な味わいが生まれるのでおすすめです。

なお、とくに香り高いタイプの大吟醸酒や吟醸酒は、温めすぎると香りが変化し、魅力が損なわれてしまうため、お燗には不向きと考えられています。もちろん、吟醸酒のなかにも燗をつけることでおいしくなるものがありますが、その場合も温め過ぎず、人肌燗からぬる燗くらいまでの温度で飲むことをおすすめします。

「燗冷(かんざ)まし」や「急冷燗(きゅうれいかん)」でアレンジをたのしむ

「ちろり」などを使って燗をつけた日本酒が冷めた状態を「燗冷まし」といいます。少し高めの50度くらいまで温めたのち、40度以下に冷ますことで、角が取れてマイルドな味わいになるといわれています。

とはいえ、燗冷ましには、冷ます過程で香りが抜けてしまいやすいというデメリットもあります。これを克服するのが、水や氷を入れた容器に浸けて急冷する「急冷燗」です。同じように50度くらいまで温めて40度程度まで冷ますと、ふわっと広がる香りはそのままに、まろやかでふくらみのある味わいがたのしめます。

「ちろり」の材質や形状、お燗する温度、日本酒の種類や銘柄によって、熱燗の味わいは変わってきます。まずはお気に入りの「ちろり」を見つけて、理想の飲みごろや好みのお酒を探してみてはいかがでしょう。

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