「蔵元」と「酒蔵」の違いとは? 日本酒業界で使われている名称・呼称の基礎講座

「蔵元」と「酒蔵」の違いとは? 日本酒業界で使われている名称・呼称の基礎講座
出典 : Toru Kimura/ Shutterstock.com

日本酒イベントなどの「蔵元さん参加」の「蔵元」とは誰か。日本酒の記事にある「蔵元」とはなにを指しているのか、改めて説明を求められるとちょっと困りませんか? 今回は日本酒業界にまつわる名称や呼称について、紹介していきましょう。

  • 更新日:

日本酒の「蔵元」ってなに?

日本酒の「蔵元」ってなに?

ShutterBestStudio/ Shutterstock.com

「蔵元」とは?

日本酒の「蔵元」とは、一般的には日本酒を造るための蔵を持つ「製造元(メーカー)」のことを指します。「蔵元」という言葉は焼酎でも使われるほか、お酒以外にも、蔵を持つ醤油の製造元のことを「蔵元」と呼ぶこともあります。

また、「蔵元」は、「製造元の経営者」や「製造元一家」という意味で使われることもあります。その場合は、「蔵元さん」と呼ぶ場合が多いようです。

日本酒業界の人が「蔵元さんですか? 」と問われると、メーカーの従業員なのか経営者なのか、どっちの意味で聞かれているのか答えに一瞬迷う人も多いはず。

「蔵元」以外にもある製造元を表す名称

「蔵元」のほかにも、日本酒の製造元(メーカー)を意味する呼称があります。

「酒蔵(さかぐら)」や「蔵」は、本来、お酒を醸造し貯蔵するための蔵のことですが、「酒蔵さん」「お蔵さん」などと「さん」をつけて、製造元の意味合いで使われることもあります。

また、「酒造(しゅぞう)」は文字どおり、酒を造ることを意味しますが、「酒造場」「酒造メーカー」というと、製造元を指す言葉となります。

おもしろいことに「酒蔵さん」とはいいますが、「酒造さん」とはいわないのがポイントです。

まとめると、「蔵元」と「酒蔵さん」「お蔵さん」「酒造場」「酒造メーカー」はほぼ同意で、製造元を表す言葉で、「蔵元さん」「蔵元様」は製造元の当主(社長、経営者)と覚えておくとよいでしょう。

日本酒造りのトップは「蔵元」? 「杜氏」?

日本酒造りのトップは「蔵元」? 「杜氏」?

yukeyuke/ Shutterstock.com

「杜氏」とは?

「蔵元」と並び、日本酒造りに関わる名称でよく耳にする「杜氏(とうじ)」とは、何をしている人なのでしょうか。

「蔵元」が経営者であるならば、「杜氏」は酒造りの責任者。いわば、レストランにおける経営者(オーナー)と料理長の関係のようなものです。

「杜氏」は酒造りの現場の指揮を執り、技術と経験をもとに蔵人を率いて、経営者である蔵元が求める日本酒の味わいを形にする役割を担っています。

なお、「杜氏」は、江戸時代以降、農閑期の冬から春にかけてのみ酒造りに携わる、季節労働が一般的でした。しかし、日本酒業界を取り巻く環境の変化に伴って雇用形態が変化し、近年は各蔵に従業員として所属するのが一般的になっています。

蔵元と杜氏の関係

日本酒造りの世界では、300年近くの長きにわたり、蔵の経営者である「蔵元」が戦略や方針を立て、最高技術責任者である「杜氏」が蔵元の方針に沿った酒造りをしてきました。優れた職人が優れた経営者とは限らず、逆に、優れた経営者が優れた職人であるとは限らないと見なされていたのです。

しかし、近年は、日本酒の出荷量の減少による経営難や杜氏の高齢化、酒造りのデータ化の進歩など、日本酒や杜氏を取り巻く環境の変化とともに、経営のトップである蔵元が、杜氏を兼任するケースが増えてきました。これを「蔵元杜氏」といいます。

1980年代以降、蔵を継ぐために戻った多くの若き後継者たちが、自らが考える理想の日本酒を自らの手で造る「蔵元杜氏」に就任。彼らは、杜氏の技術を習得すれば、経営者の視点で描いた日本酒の味わいを、よりダイレクトに表現できるはずだと考えたと思われます。


酒造りの責任者「杜氏(とうじ)」とはどんな人か知っていますか? 【日本酒用語集】

日本酒業界にまつわる呼称はこんなにある!

日本酒業界にまつわる呼称はこんなにある!

Taku/ Shutterstock.com

「蔵人」とは「蔵元」で働く人のこと

製造元である「蔵元」で、「杜氏」とともに日本酒造りに従事する人のことを総称して、「蔵人(くらびと)」と呼びます。「杜氏」と同じ意味合いで使われることもありますが、「蔵人」と一口に言っても酒造りにはさまざまな工程があり、その工程ごとに呼称があります。おもな呼称と役割を紹介しましょう。

◇釜屋(かまや)
酒米を蒸す工程の責任者。
◇麹師(こうじし)
麹造りの責任者。「大師(だいし」」「代司(だいし)」ともいいます。日本酒の出来栄えを左右する重要な役割のひとつです。
◇酛師(もとし)
酒母を仕込み、育てる役割。「酛廻り」「酛廻し」などとも呼ばれます。
◇船頭(せんどう)
もろみを搾る工程の責任者。搾るための道具を「槽(ふね)」と呼ぶことからこの呼称になりました。

なお、「蔵人」はもともと、酒造りとは関係のない職種だったといわれています。平安初期には、「蔵人」を「くらんど」「くろうど」と読み、天皇一家の私的な秘書のような役割を果たす役人のことを指していたそうです。


「蔵人(くらびと)」の酒造りにおける役割とは? 【日本酒用語集】

「酒屋」と「造り酒屋」はどう違う?

「酒屋」は酒販店・酒屋さんのことですが、「造り酒屋」というとどんな酒屋さんのことなのでしょうか。

「酒屋」は、あくまでお酒を販売するお店のことで、製造は行いません。それに対して「造り酒屋」は、「お酒の製造から販売までを行う製造元(蔵元)」を指しています。

また「造り酒屋」というと、地域の名士、財産家というイメージを持つ人もいます。実際、歴代の総理大臣に名を連ねる池田勇人氏、宇野宗佑氏、竹下登氏のように、政治家のなかには「造り酒屋」の家に生まれた人物も少なくありません。

日本酒業界に関する呼称や名称について整理できたでしょうか?いくつかおさらいすると、「蔵元」と「酒蔵さん」はどちらも製造元を指し、「杜氏」はお酒造りの責任者、「蔵人」は「杜氏」の下で働く人を指します。言葉の由来や歴史を知ると、日本酒がもっと身近なものに感じられそうですね。

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識

イベント情報

姉妹サイト

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事