熟成樽を知ればウイスキーはもっとたのしくなる!

熟成樽を知ればウイスキーはもっとたのしくなる!
出典 : BONDART PHOTOGRAPHY/ Shutterstock.com

ウイスキーの味わいを大きく変えるのが、熟成に使用する「樽」の存在です。熟成樽の種類は多彩で、それぞれの樽の特性がウイスキーの個性に彩りを与えています。今回は樽の種類や特徴、樽の使われ方など、ウイスキーの樽にまつわる基本情報を紹介していきます。

  • 更新日:

ウイスキーの樽にはどんな種類があるの?

ウイスキーの樽にはどんな種類があるの?

Ivan Kruk/ Shutterstock.com

ウイスキー樽の種類:木材別

ウイスキーの味わいを決めるうえで非常に重要なのが、カスク(cask)とも呼ばれる「樽」の存在です。ウイスキーの熟成には、おもにオーク(楢・なら)の木が使われています。まずは樽に使用されている木材のおもな種類を見ていきましょう。

【アメリカンホワイトオーク】
ウイスキーの樽材として広く使われているのが、北米生まれのホワイトオークです。ウイスキー原酒に、バニラやハチミツ、カラメルなどを思わせる甘いフレーバーを与えるのが特徴です。

【コモンオーク】
ヨーロッパ産の2大オークのひとつに数えられる樽です。スパニッシュオークとも呼ばれるコモンオークの特徴は、ポリフェノールやタンニンを豊富に含んでいることで、ウイスキー原酒に、ドライフルーツのような甘くてフルーティーな香りをもたらします。

【セシルオーク
ヨーロッパ産の2大オークのひとつ。フレンチオークとも呼ばれるセシルオークは、フランスを中心に使用されている樽材です。とくにタンニン量が多いため、ウイスキー原酒にスパイシーな香りを授けます。

【ミズナラ】
日本に多く自生することから、「ジャパニーズオーク」とも呼ばれるオークです。その特徴は、香木の伽羅(きゃら)や白檀(びゃくだん)を思わせるオリエンタルな香り。強い芳香性のアロマをもたらすミズナラは、日本のみならず世界中から注目を集めています。

「ミズナラ樽」は、他のウイスキー樽とどう違う?【ウイスキー用語集】

ウイスキー樽の種類:容量別

ウイスキーの熟成樽のサイズは、熟成速度や酒質に影響するといわれていて、さまざまな容量の樽が使われています。熟成樽の代表的な4サイズを紹介しましょう。

【バーレル(バレル)】
容量が約180~200リットルのホワイトオーク製の樽をバーレル(barrel)といいます。一般的に、1回目(新樽)はバーボンやカナディアンなどの熟成に使用され、2回目以降(古樽)はスコッチやジャパニーズなどの熟成に使われます。近年、ウイスキーの熟成樽として多く使用されているのが、バーボンの熟成に使用したバーレル(バーボンバレル)といわれています。

【ホッグスヘッド(ホグスヘッド)】
バーボンバレルを一度解体して、樽材を追加して組み直し、容量を増やしたものがホッグスヘッド(hogshead)です。容量は220~250リットルほど。ホッグスヘッドとは「豚の頭」の意味で、ウイスキーを詰めた樽の重さがおよそ豚一頭と同じであることから、その名がつけられたといわれています。

「ホッグスヘッド」と呼ばれるのはどんな樽?【ウイスキー用語集】

【バット】
ラテン語で「大きい樽」を意味するバット(butt)の容量は500リットルほど。はじめにシェリー酒の貯蔵に使われたあとでウイスキーメーカーの手に渡ることから、「シェリーバット」とも呼ばれています。おもに、ヨーロピアンオークやアメリカンホワイトオークで造られています。

【パンチョン】
容量約500リットルで、はじめにシェリー酒の貯蔵に使われるという点ではバットと同じですが、パンチョンはバットに比べると丈が短く、ずんぐりとした形をしているのが特徴です。一般的にアメリカンホワイトオークやコモンオークから造られます。

ウイスキー樽は何回使われるの?

ウイスキー樽は何回使われるの?

Kishivan/ Shutterstock.com

ウイスキー樽の寿命と使用回数

蒸溜所の方針や状態にもよりますが、樽の寿命は60年から70年程度といわれていて、その間に4~5回ほど熟成に使用されるのが一般的です。

ウイスキーの貯蔵に使われる樽は、使用回数によって、呼び名が以下のように変化します。

◇1回目:新樽
◇2回目:ファーストフィル
◇3回目:セカンドフィル
◇4回目:サードフィル


なお、2回目以降に使われる古樽のことをまとめて「リフィル」と呼ぶこともあります。

樽は、使用するごとに、原酒へ与える影響が穏やかになっていきます。しかし、樽の成分が出にくくなった古樽も、後述するチャーリングやトースティングなどの手法で、再び火を加えて焼き直しすることで、樽の成分を再活性化させることができます。

「ファーストフィル」の定義と特徴を知ろう!【ウイスキー用語集】

新樽とは? 新樽で熟成させるウイスキーの種類

一度もお酒を熟成させていない樽のことを「新樽」といいます。新樽は香りや色味のもととなるタンニンを豊富に含んでいるため、新樽で熟成させると香りや渋味が強く、色合いの濃いウイスキーに仕上がるのが特徴です。

なお、ウイスキーのなかには、新樽の使用が義務づけられているものがあります。アメリカで造られているバーボンやテネシーウイスキー、カナダのカナディアンウイスキーなどで、なかでもバーボンを熟成させる際は、内側を焦がした(チャーリングした)新樽を使うことと定められています。

スコッチやジャパニーズウイスキーの熟成には古樽を使用

「古樽」とは、過去に何らかのお酒の貯蔵に使用された樽のことです。貯蔵していたお酒の種類によって、「バーボン樽」「ブランデー樽」「シェリー樽」などと呼ばれます。古樽は、新樽に比べて樽由来の成分がゆっくりと溶け出し、ウイスキーにまろやかで穏やかな味わいをもたらすのが特徴です。

また使用する樽の種類によって、ウイスキーの風味が変わってくるのも魅力。たとえば、バーボン樽で熟成させたウイスキーからは、木樽を焦がしたような木香が感じられるものが多く、「バーボン様(よう)」と表現され、親しまれています。

ちなみに、スコッチの蒸溜所や日本のウイスキーメーカーが、バーボン樽を再利用してウイスキー造りを始めたのは20世紀後半ごろのことで、それまではワイン樽やシェリー樽を用いることが多かったようです。

樽がウイスキーに与える影響とは?

樽がウイスキーに与える影響とは?

Ieva Lemhena/ Shutterstock.com

ウイスキー樽がウイスキーに与える影響

ウイスキー造りの工程は、製麦、仕込み、発酵、蒸溜、熟成、ブレンド、加水、後熟、瓶詰の順に進められるのが一般的。この工程のうち、樽を使用するのは「熟成」と「後熟」の段階です。

ウイスキーを樽に詰めて長期間熟成させると、樽の成分が溶け出して、ウイスキーにまろやかな味わいや豊かな香りなどが生まれます。

また、ウイスキーが琥珀色に色づくのも樽熟成による効果です。使う樽の種類や熟成期間によって、濃い赤褐色から黄金色に近いものまでさまざまな色合いになるのも興味深い点といえるでしょう。

内側を焦がしたウイスキー樽の効果

ウイスキーの味や香りには、樽の内面処理(熱処理)も関係しています。一般的に、樽の内側を強く焦がすと色味や香りが濃くなり、反対に弱めに焦がすと淡い色合いの穏やかな香りになるといわれています。

樽の内部に熱処理を加える方法は「チャーリング」と「トースティング」の2種類。それぞれの特徴は以下のとおりです。

【チャーリング】
内面を強火で炭化させ、オーク材が持つ甘い香味成分を生成させる方法。焼きの強度によってライト、ミディアム、ヘビーの3種類に分かれます。おもにバーボンなどスピリッツ用の樽に施されています。

【トースティング】
弱火でじっくりと加熱し、7つの焼き加減を駆使して香りを加える方法です。おもにワイン用の樽に施されていますが、バーボン用の樽に用いられることもあります。

ウイスキーの風味に影響を与える樽熟成の手法

近年は、「後熟」にあたる「ウッドフィニッシュ」という手法が用いられることが増えています。ウッドフィニッシュとは、通常の熟成のあとに異なる種類の樽に詰め替えて追熟させ、複雑で深い味わいのウイスキーに仕上げる手法のことです。

たとえば、バーボン樽で熟成させた原酒をシェリー樽などに詰め替え、何か月か熟成させることで、多彩な風味を持つウイスキーが生まれます。

なお、後熟には、熟成後の原酒をほかの原酒とブレンドして樽に戻し、しばらく寝かせて味をなじませる「マリッジ」という手法もあります。

今さら聞けない!? ウイスキーの基本的な造り方を知ろう!


ウイスキーの樽熟成に関するメカニズムには、未だ科学的に解明されていない部分が多く残っています。同じ木材、同じサイズの樽を使用したからといって、必ずしも同じウイスキーが完成するとは限りません。この神秘性こそが、ウイスキーの魅力なのです。

おすすめ情報

関連情報

ウイスキーの基礎知識