「エドラダワー」は、スコットランド産のリッチでクリーミーなハイランドモルト
エドラダワー蒸溜所は、ハイランド地方のなかでも南に位置する保養地の近くにあります。緑豊かで美しい村に佇む小さな蒸溜所では、少量生産ながら質のよいハイランドモルトが造られています。今回は、銘柄「エドラダワー」や蒸溜所の魅力などを紹介します。
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「エドラダワー」を生む蒸溜所の魅力
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エドラダワー蒸溜所は自然豊かな保養地に佇む
エドラダワー蒸溜所は、保養地として知られるパース州ピトロッホリー(ピトロクリー)の近くの、小さな村の谷間にあります。おとぎ話に登場しそうな蒸溜所の外観は、白い壁、グレーの屋根、赤い扉や窓枠の配色がかわいらしく、観光客からも高い人気を誇っています。
ピトロッホリーは、夏目漱石がイギリス・ロンドン留学中に訪れ、短編小説「昔」のなかに書き記した地としても知られています。漱石にとってロンドンでの生活は苦難に満ちたものだったようですが、美しい自然が広がるのどかな村に10日間ほど滞在したことで、心身ともに癒されたとか。当時のピトロッホリーも魅力的な場所だったようです。
エドラダワー蒸溜所は小規模・少量生産の蒸溜所
エドラダワー蒸溜所は、この地を治めるアソール公の領地を借り受け、1825年に地元の農夫たちによって設立されたといわれています。「エドラダワー(Edradour)」はゲール語で、「2本の川の間」や「スコットランド王・エドレッドの小川」という意味を表しているそう。
エドラダワー蒸溜所はスコットランドのなかでも最小級の蒸溜所です。年間生産量は10万リットルにも満たず、平均的な蒸溜所の1/40程度ともいわれています。手造りのため、少量生産でロットごとに味わいが異なりますが、高品質なシングルモルトに魅了されるファンが多いのも特徴です。
ウイスキー「エドラダワー」は昔ながらの設備で造られる
長い歴史のなかで、エドラダワー蒸溜所のオーナーは何度も変わりましたが、製法はほぼ創業当時のまま。鋳鉄製のマッシュタン(糖化槽/仕込槽)、木桶のウォッシュバック(発酵槽)、「オープン・ワーツ・クーラー」と呼ばれるワート(糖液/麦汁)冷却機、ワーム型のコンデンサーなど、年代物の設備が現役で使われています。
また、少人数でも生産できるように、小型のポットスチル(単式蒸溜機)を使用しているのも特徴です。初溜と再溜の2基のポットスチルのうち、とくに再溜釜は人間の背丈ほどの小ぶりサイズ。これは、法律で認められているギリギリの大きさです。
エドラダワー蒸溜所が位置する、ハイランド地方の特徴
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エドラダワー蒸溜所は、ハイランド地方にある
スコットランドのウイスキー生産地は一般的に、ハイランド、スペイサイド、ローランド、アイランズ、アイラ、キャンベルタウンの6つに分類されます。このうち、エドラダワー蒸溜所があるのは、スコットランドの北方に位置するハイランド地方です。
ハイランド地方は、グランピアン山脈を有する高原地帯で、冷涼な気候で清冽な水に恵まれているため、ウイスキー造りに適しているといわれています。現在ハイランド地方では、エドラダワー蒸溜所を含め約30の蒸溜所が稼働しています。
ハイランドモルトの味わいの違い
広大なハイランド地方では、それぞれの地域で個性の異なるシングルモルトが造られています。その特徴は、大きく東西南北の4つに分けられます。エドラダワー蒸溜所のある南ハイランドと、その他の地区との違いを見ていきましょう。
【南ハイランド】
ピートを焚かないノンピートの銘柄が多く、マイルドでまろやかな飲み口のスコッチが目立ちます。ライトで飲みやすいものが多いのも特徴。なかでも「エドラダワー」は、クリーミーさが印象的なウイスキーです。
【北ハイランド】
多彩なスコッチが造られている地域。潮っぽくスモーキーなものから優雅で洗練されたものまで、さまざまなバリエーションの銘柄をたのしめます。
【東ハイランド】
スペイサイドに近いことから、スペイサイドモルトの特徴も備えています。フローラルでフルーティーな香りの、バランスのとれた銘柄が多く見られます。
【西ハイランド】
稼働中の蒸溜所は山間部と港町の2か所のみ。特徴的な共通点はありませんが、山間部では香り高くバニラのような味わいが、港町ではスモーキーで潮っぽさを感じるスコッチが造られています。
エドラダワーの味わいと代表銘柄
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エドラダワー 10年
エドラダワーを代表するスタンダードボトル。熟成にはシェリー樽を100%使用しています。紅茶のような赤みの強い琥珀色で、バニラやカラメルなどを思わせる甘い香りが特徴です。バランスがよく、なめらかでクリーミーな口当たりと、フルーティーでハチミツのような甘味、濃厚でナッティな味わいをたのしめます。飲み方はストレートがオススメ。
エドラダワー カレドニア 12年
「エドラダワー10年」よりもリッチで力強い味わいをたのしめる1本。オロロソシェリーカスクで、最低42か月間フィニッシュをかけているのが大きな特徴です。こちらも、まずはストレートで味わうのがオススメ。レーズンやチョコレートのような風味を感じられるはずです。
ちなみに、「カレドニア」という商品名は、スコットランドのシンガーソングライター、ドギー・マクリーン(Dougie Maclean)の曲名に由来しているそう。
のどかな村のかわいらしい蒸溜所で造られる「エドラダワー」は、南ハイランドを代表する銘柄です。フルボディでクリーミーな味わいの「エドラダワー」を、じっくりとたのしんでみてください。