角打ち(かくうち)ってどんな飲み方? その魅力とたのしみ方をチェック

角打ち(かくうち)ってどんな飲み方? その魅力とたのしみ方をチェック
出典 : K321/ Shutterstock.com

「角打ち」とは、購入したお酒を酒屋さんの店内でたのしむこと、または、それができる酒屋自体を指します。昔の風習の名残ですが、近年その人気が再燃し、新しいスタイルの角打ちも登場しています。ここでは、そんな角打ちの特徴や魅力を紹介しましょう。

  • 更新日:

角打ちというお酒の飲み方を知ろう

角打ちというお酒の飲み方を知ろう

kitsune05/ Shutterstock.com

角打ちとは

角打ちとは、酒屋さんで買ったお酒を店内に設けられた立ち飲みスペースでたのしむこと、もしくは角打ちができる酒屋自体を指します。また、昔は四角い升(ます)で日本酒を飲んでいたことから、升でお酒を飲むことを角打ちと呼ぶケースもあります。

角打ちと聞くと、近所の常連客の憩いの場や、仕事帰りのミドル世代の渋いたしなみと思う人もいるかもしれませんが、近年はその価値や魅力が見直され、若い世代にもジワジワと浸透しています。それに伴い、老若男女がたのしめて、旅行者でも立ち寄りやすいスポットが増えているようです。

角打ちの語源

「角打ち」の読みは「かくうち」が正解。その語源には諸説ありますが、「酒屋の店頭で量り売りされた酒を升の“角”に口をつけて飲むこと」や「酒屋の“一角(片隅)”で酒を飲んでいたこと」に由来しているという説が有力です。

なお、角打ちの「打つ」には、「お酒を飲む」ことを指しているという説や、「もんどり打つ(飛び上がって回る)」に由来するという説もあります。

ちなみに、近年は、「角打ちバル」や「ネオ角打ち」など新しい形態の角打ちを表す言葉も生まれています。

角打ちスタイルの始まり

日本酒はもともと瓶や紙パックで売られるものではなく、酒屋の店頭で量り売りされるのが一般的でした。お客は酒屋の名前が書かれた「通い徳利(かよいどっくり)」と呼ばれる陶磁製の容器を持って酒を買いに行き、計量用の升で注ぎ入れた分だけ代金を支払います。なお、酒屋から貸し出される通い徳利の容量は、一升(約1.8リットル)が主流だったようです。

酒を買いに来る人のなかには、家に帰るまで待ちきれない人も多かったとか。そこで酒屋は、呑ん兵衛たちのささやかなニーズに応えるべく、升で量った酒を店内で提供するようになりました。これが、酒屋の店頭で飲むという角打ちスタイルの始まりだと考えられています。

角打ちの歴史と文化

角打ちの歴史と文化

Dpongvit/ Shutterstock.com

角打ちの歴史

酒屋の店頭で飲む文化は江戸時代からありましたが、「角打ち」として定着したのは大正時代のことです。発祥地とされているのは、福岡県北九州市門司(もじ)区。明治22年(1889年)に国の特別輸出港として開港した門司港は、明治24年(1891年)の九州鉄道の門司・遠賀(おんが)間開通により石炭の積出港として栄えます。

そこで活躍したのが、積荷の揚げ下ろしを担う港湾労働者でした。彼らの三交代シフトに合わせ、「朝から1杯やりたい」という要望を汲んで、地元の酒屋が店の一角に立ち飲みのスペースを設けたのが、角打ちサービスの始まりだといわれています。

その後、角打ちは北九州工業地帯の発展とともに広がり、本州などへ移転する労働者を介して全国へ伝わったと考えられています。

角打ちの文化

角打ちがたのしめる酒屋では、お酒だけでなく、スナック類や缶詰などのつまみ類を購入することも可能です。なかにはつまみの充実した店もあり人気を集めていますが、酒類や料理を提供する飲食店とは決定的な違いがあります。

酒屋はサービス業ではなく、あくまで酒類販売業。角打ちは店が善意で行っているサービスだということを、昔なじみの常連客や角打ちになじみのある客はよくわかっています。立ち寄る人々は短い時間内に酒を味わい、コミュニケーションをたのしみ、疲れを癒やす。仕事帰りの「ちょっと1杯」を気軽にたのしめる粋な文化として、利用する人も多くいます。

角打ちの魅力を探る

角打ちの魅力を探る

Norwalk/ Shutterstock.com

角打ちの魅力1:気軽にお酒をたのしめる

角打ちの一番の魅力は、酒屋さんの販売価格(少し上乗せされる場合もあり)でお酒を味わえること。購入したその場でたのしめるのはもちろんのこと、テーブルチャージなどは一切不要。コップや水なども店側のサービスなので、リーズナブルにお酒をたのしむことができます。

また、店の一角の限られたスペースを利用しているため、おつまみも割安。酒税法上、飲食店のように店員が注文を受けたり、料理を作って運んで来たりするなどの接客サービスはありませんが、その分気がねなく気軽に利用できる飲み方といえそうです。

角打ちの魅力2:飲み比べがたのしめる

角打ちの魅力であり最大のメリットといえるのが、さまざまな日本酒の飲み比べがたのしめること。酒屋さんでは目移りするほど多くの銘柄を扱っていますが、1本ずつ購入していては、味の比較も思うようにできません。その点、1杯単位で代金が設定されている角打ちなら、複数の銘柄を少量ずつ味わうことができます。試飲感覚で日本酒をたのしむうちに、とっておきの銘柄に出会える可能性もあるのです。

角打ちの魅力3:情報交換やコミュニケーションの場

角打ちスポットには、自然と酒好きが集まってきます。仕事帰りの人や近所に住む人だけでなく、噂を聞きつけてやってきた遠方の人や、国内外からの旅行者まで、さまざまな人が訪れては気楽に酒を酌み交わします。

飲食店のようなサービスを受けにくるのではなく、店の一角で飲ませてもらう。その独特の雰囲気をわきまえた客たちは、ある意味同好の士。同じ空間で酒をたのしむうちに自然とコミュニケーションが生まれることもあります。おいしい日本酒やおつまみにまつわる情報が交わされることもあるので、肩肘張らずに話しかけてみるとよいでしょう。

角打ちのたのしみ方は時代とともに変化

角打ちのたのしみ方は時代とともに変化

kitsune05/ Shutterstock.com

角打ちの一般的なルール

角打ちファンの間には、不文律ともいうべき暗黙のルールが存在します。これさえ押さえておけば、初めての利用でも安心してお酒をたのしむことができるので、覚えておくとよいでしょう。

【料金は前払い】

お酒を買ってから飲む、というのが角打ちスタイルの基本。支払い方法はお店によって異なるため、まずは確認する必要があります。その際、お店の人に聞くのも手ですが、すでに飲み始めている常連客に倣うのも手。セルフサービスの店も多いので、店ごとのシステムを把握することから始めましょう。

【角打ちは居酒屋にあらず】

角打ちを行う酒屋さんはあくまでも酒類小売店であり、接客業ではありません。ほかにお客様がいる場合はスペースを上手にシェアし、場の空気を乱さないよう、節度ある行動を心がけましょう。店側への過度な期待も禁物です。

【長居はしない】

長居はせず、適度な量を飲んで退散するのが角打ちの流儀。スペースの大きさや混み具合にもよりますが、滞在時間の目安は30分から長くても1時間といわれています。

ネオ角打ち、角打ちバーなど続々登場! 現代流角打ちのたのしみ方

角打ちというと酒屋の一角で立ち飲みをするイメージがありますが、近年は誰もが入りやすい新感覚の角打ちが続々登場し、若い世代を中心に人気を集めています。

おしゃれなカウンターで飲める「角打ちバー」、料理と一緒に日本酒をたのしめる「角打ちバル」、アンテナショップや料理店とのコラボを行ったり、こだわりのラインナップで攻めたりと、今までにないスタイルを打ち出す「ネオ角打ち」など、従来の角打ちとは一線を画しながらも、角打ち本来の魅力を忠実に受け継いだ店舗が話題です。なかにはゆったり座って飲めるスポットもあるので、好みに合ったお店を探してみてください。

なお、一般的な角打ちとは料金システムが異なる場合があるのでご注意を。

角打ちをたのしめるスポットの探し方

角打ちをたのしめるスポットの探し方

taka1022/ Shutterstock.com

まずは身近で角打ち体験

角打ちは北九州市から発祥した日本酒の飲み方ですが、現在は東京、大阪などの大都市はもちろん、北陸や東北、中国・四国地方など日本全国でたのしむことができます。

ちなみに地方によって呼び方が異なる場合もあります。

◇立ち呑み
関西では「立ち呑み」ということも。あくまで酒屋の一角で飲むことを指し、通常の「立ち飲み」とは区別されています。

◇もっきり
東北地方では「もっきり」というそう。もっきりとは、升の中にグラスを入れ、グラスから升にこぼれるほど酒を注ぎ入れることを指します。

◇たちきゅう
島根県の一部と鳥取県では、「たちきゅう」という名称がスタンダードだといわれています。立ったままきゅうっと飲む様子に由来しているそう。

また、角打ちができるお店選びのコツは、ずばり口コミ。昔ながらの店はホームページを持っていない場合もあるため、地元に住む酒好きの人や飲食店、酒屋さんなどのツテをたどるのが、よい角打ちスポットを見つけるための近道といえそうです。

角打ちの本場、九州で角打ちをたのしもう

角打ちスポットといえば、やはり発祥地である北九州市です。このエリアには今も100軒以上の角打ちが存在しているそう。

北九州市内の角打ちスポット情報は、グルメサイトやまとめサイト、角打ちファンの情報サイトなどで仕入れることができます。昔なじみの常連客が集う老舗店から、有名人がふらりと立ち寄る隠れた名店、蔵元がリサーチにくる人気店まで、さまざまな店舗が独自のつまみを用意し酒好きを出迎えてくれます。北九州市を訪れた際はぜひはしご酒をたのしんでみては?

角打ちは、立ち飲みやちょい飲み以上にカジュアルで、それでいて通好みともいえる飲み方です。気軽に日本酒をたのしめるのはもちろん、飲み比べや酒好きとのコミュニケーションを通じて、日本酒に対する知識や愛が深まる場でもあります。未体験の人はぜひ近場で試してみてください。

進化したネオ角打ちは絶好の立ち飲みスポット! 選りすぐりのお酒を味わえる人気店をご紹介
「角打ち」は何と読む? その由来や歴史を知ろう【日本酒用語集】

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識