「黒麹」とは? 日本酒と麹の関係に迫る!【日本酒用語集】

「黒麹」とは? 日本酒と麹の関係に迫る!【日本酒用語集】
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「黒麹」といえば、多くの人が日本酒よりも焼酎を思い浮かべるのではないでしょうか。じつは日本酒でもごく少数、黒麹で仕込んだ日本酒があります。なぜ「黒麹」を使った日本酒は珍しいのか、そもそも「黒麹」とはなんなのか、詳しく紹介しましょう。

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「黒麹」とは?

「黒麹」とは?

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「黒麹」は菌の一種

「黒麹」は「麹菌」の一種です。日本酒や焼酎などの酒造りに用いられる麹菌は一般的に「黄麹」や「黒麹」ですが、稀に「白麹」などを使う場合があります。

麹菌とは「コウジカビ」というカビの仲間のことで、日本では伝統的に味噌や醤油などの調味料や酒造りに使われてきました。ちなみに、カビといっても人体に害はありません。

これらの麹菌を使う理由は、アルコール発酵に必要な「麹」を造り、日本酒造りの肝となる「酒母(しゅぼ)」や「醪(もろみ)」を造る工程で使うためです。

「黒麹」の存在が明らかになったのは明治時代

「黒麹」は腐敗に強く、高温多湿な地域でも安全に酒造りができるのが利点です。沖縄や九州など、温暖な環境に適しているため、古来重宝されてきました。

「黒麹」の存在が明確になったのは、明治34年(1904年)のこと。研究者の乾環氏と宇佐美桂一郎氏が、泡盛の製造工程を調査している際に発見し、「黒麹」が注目されるようになったといわれています。

また、明治時代後半には、「近代焼酎の父」といわれる河内源一郎氏の研究成果により、鹿児島県をはじめとする九州でも意図して「黒麹」を使う酒造りが広まっていきました。

「黒麹」はおもに焼酎に使われる

麹菌のなかでも「黒麹」は、おもに焼酎造りに用いられます。古くから「黒麹」を用いた酒造りをしてきたのは、「黒麹の発祥地」といわれている沖縄県(琉球)で、琉球泡盛は伝統的に「黒麹」で造られています。

一方、日本酒造りにおいては、通常、フルーティーな味わいを生む「黄麹」が使われます。じつは、日本酒を造る際に「黒麹」が使われるのはごく稀なこと。「黒麹」仕込みの日本酒をめったに見かけないのはそのためです。

「黒麹」「黄麹」「白麹」の特徴を知ろう

「黒麹」「黄麹」「白麹」の特徴を知ろう

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「黒麹」は酸が強く、個性的な味わいの日本酒を生む

「黒麹」の大きな特徴は、クエン酸を生成することです。このクエン酸が雑菌の繁殖を抑え、酒に独特な酸味をもたらします。キレがよく、コクのある味わいに仕上がりますが、日本酒造りにおいては、強い酸味と、色素のなかに雑味や渋味が残ることから、長らく敬遠されてきました。

しかし近年は、独特の味わいを生む「黒麹」で日本酒を仕込む銘柄が少しずつ増えてきています。その味わいは、個性豊か。パワフルな酸味がありながらも、米のふくらみを感じる、複雑で力強い味わいの銘柄が多く見られます。

日本酒造りに使われる麹菌は、「黄麹」が主流

「黄麹」は、吟醸香のような華やかな香りを生むのが特徴です。「黒麹」と違って、クエン酸は生成しません。「黄麹」で醸すと、米本来の甘味と酵母由来のやさしい酸味を持つ、フルーティーな日本酒に仕上がります。

一方で、発酵中に腐りやすいため、低温管理が必要です。現在は、蔵の全館冷房やタンクの冷却装置などの設備と醸造技術が発展して扱いやすくなっていますが、一般に日本酒造りを寒い時期に行うのはこのためなのです。

なお、「黄麹」は日本酒だけでなく、醤油や味噌など日本の発酵食品にも使われています。人気の調味料、塩こうじも「黄麹」で作られています。

「白麹」は、「黒麹」の性質を持つ麹菌

「白麹」は、「黒麹」の突然変異種です。ゆえに基本的には黒麹と同じ性質を持ち、クエン酸を生成します。腐敗に強いうえ、「黒麹」のように黒い色素がなくて衣服などが汚れにくいという扱いやすさから、とくに焼酎造りでは「白麹」が使われることが多くなっているようです。

また近年は、「白麹」で仕込んだ日本酒も注目されています。「白麹」仕込みの日本酒は、爽やかな酸味と、白ワインのような軽快さが特徴。食中酒としての人気も高まっています。

黒麹で仕込んだオススメの日本酒

黒麹で仕込んだオススメの日本酒

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黒麹で脱・没個性を目指して造られた「黒兜(くろかぶと)」

個性的な酸味をもつ「黒兜」は、食事のおいしさを引き立てる味わいで、高い人気を誇ります。爽やかな酸味と濃厚なコクのある「黒兜」は、炭酸で割る飲み方もおすすめ。
評判の「黒兜」を醸すのは、福岡県久留米市、筑後川のほとりに位置する池亀酒造。6代目の蒲池輝行氏が、没個性の日本酒に疑問を持ち、試行錯誤を重ねて、2007年に「黒兜」を世に送り出しました。「黒兜」の開発には、大学やワイン製造会社での研究が生かされているそうです。

製造元:池亀酒造株式会社
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日本初! 黒麹仕込みの純米酒「福正宗 黒麹仕込み」

「黒麹」で仕込んだ純米酒が日本酒業界で初めて発売されたのは2005年。石川県金沢市の老舗蔵である福光屋が、代表銘柄「福正宗」のラインナップのひとつとしてリリースしました。
みずみずしい香りとクエン酸の爽やかな酸味、芳醇な旨味とドライなあと味は、さまざまな料理に合います。開発当時から、「毎日手軽にたのしめること」を重視して造られているため、リーズナブルな価格設定もうれしいポイント。ワイングラスで飲みたい銘柄です。

製造元:株式会社福光屋
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「黒麹」と「白麹」で仕込んだ数量限定酒「東鶴(あずまつる)BLACK/WHITE」

「黒麹」と「白麹」で仕込んだ数量限定の日本酒で、2019年の春に話題をさらったのは、佐賀県の東鶴酒造が醸す「東鶴 BLACK」と「東鶴 WHITE」。仕込み水からパッケージまで大幅リニューアルをはかり、日本酒らしからぬおしゃれなラベルデザインにも注目が集まりました。
純米吟醸の生酒で、「BLACK」は黒麹らしい濃厚な酸と旨味が特徴、白麹の「WHITE」はさっぱりした酸味ですっきり飲めます。

製造元:東鶴酒造株式会社
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日本酒蔵と焼酎蔵のコラボ銘柄「天の戸 天黒(あまのと てんくろ) 黒麹仕込」

「天の戸 天黒」は、秋田の日本酒蔵である浅舞酒造が、鹿児島の焼酎蔵である大海酒造の協力を得て生まれた日本酒銘柄です。「黒麹」仕込みの原酒タイプで、ふくよかで飲みごたえのある味わいながら、あと味はすっきりしています。ワイングラスにクラッシュアイスを入れて飲むのがおすすめだそう。

製造元:浅舞酒造株式会社
公式サイトはこちら

麹菌の種類によって日本酒の味わいが変わるなんて、おもしろいですね。ほとんどの日本酒は「黄麹」を使って造られますが、珍しい「黒麹」や「白麹」を使った日本酒を見つけたら、一度試してみるとおもしろい体験になりますよ。

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