世界第2位のビール大国・オーストリアのビール事情に迫る

世界第2位のビール大国・オーストリアのビール事情に迫る
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オーストリアが、1人当たりのビール消費量が世界第2位の国であることを知っていますか? 今回は私たちが意外に知らないオーストリアのビール事情と、日本でも飲める、おすすめの銘柄を紹介します。

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意外に知られていないオーストリアのビール文化

意外に知られていないオーストリアのビール文化

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オーストリアは、1人当たりのビール消費量が世界第2位

「オーストリアといえばワイン」と考える人も多いかもしれません。しかしオーストリアは、ビール大国であるアメリカやドイツ国民よりもビール好きな人が多い国でもあります。

国別の1人当たりのビール消費量を見ると、オーストリアは約108リットル/1人でチェコ共和国に次いで世界第2位。大瓶(633ミリリットル)に換算すると170本分となり、なんと日本の約2.7倍に相当します。

オーストリアにはビール醸造所とビアガーデンが多い

オーストリアのビール文化を象徴するものに、「ビール醸造所」と「ビアガーデン」の多さがあります。

オーストリアには大小さまざまなビールの醸造所が200近くもあるとされ、ヨーロッパで1番の密度を誇るといわれています。伝統ある醸造所から、ユニークなクラフトビールを提供する醸造所まで、国内のあらゆるところでビールが造られているため、州や地域によってまったく異なる銘柄をたのしめるのもオーストリアの特徴です。

また、ビアガーデン文化も深く根づいています。かつて醸造所が地下の貯蔵庫にビールを保存する際、温度を下げるために地上に栗の木を植え、砂利を敷き詰めていたそう。そして、温かい季節になると木陰にテーブルを置いて、ビールをふるまったのです。これが、オーストリアにおけるビアガーデンの始まりとされています。

オーストリアで親しまれているビアスタイル(ビールの種類)

オーストリアでは現在、おもにピルスナーやヴァイツェンなど、ジャーマンスタイルのビールが好まれています。おもなビアスタイルの特徴を見ていきましょう。

【ヘレス】

濃厚な麦芽の旨味や甘味を感じる、風味豊かなラガービール。淡い色のビールで、ホップの苦味はやや弱めです。同じような淡色のビールに、「メルツェン」と呼ばれるものもあります。

【ドゥンケル】

濃色麦芽を使用して醸造される、褐色のビール。コクのある味わいで、シャープですっきりとしたのどごしをたのしめます。

【ヴァイツェン】

小麦麦芽を原料の50%以上使用して造る“小麦ビール”。ホップの香りや苦味が少なめで、泡立ちのよさが特徴です。味わいはバナナのようにフルーティー。清涼感のある飲み心地が魅力です。

【ツヴィッケル】

長期低温発酵で、ビールの酵母をろ過せずに造られるビール。麦芽の濃度が高く、ほのかに甘味のある味わいが特徴です。本来の「ツヴィッケル」の意味は、樽の味見をするためにつける蛇口のこと。かつては、ビール樽から直接注がれるビールのことを指していたとされています。

【ヴィエナ(ウインナービール)】

19世紀半ば、ウィーンの醸造者アントン・ドレハーによって造り出されたビアスタイル。「ウインナーモルト」と呼ばれる赤みがかった麦芽を使用しているため、赤茶色や銅色の見た目をしているのが特徴です。トーストのような麦芽の香りとほのかな甘味、すっきりとしたキレのよい苦味が魅力。ただ、オーストリアではやや廃れ気味のビアスタイルで、むしろメキシコなど国外で親しまれています。

チェックしておきたいオーストリアのビール醸造所

チェックしておきたいオーストリアのビール醸造所

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オーストリアで高く支持されている「ゲッサー醸造所」

多くの醸造所がひしめくオーストリアにおいて、ゲッサーの存在感は圧倒的です。15世紀ごろ、尼僧院で修業に勤しむシスターのために、栄養を補助するための飲料としてビールの醸造が行われていました。19世紀半ばに尼僧院の一部が売却され、醸造専門の施設が誕生。これがゲッサー醸造所の始まりとされています。第二次大戦後には、独立宣言の祝宴でゲッサーのビールがふるまわれたという逸話もあります。

ゲッサー・ビールで重要な役割を果たしているのが、醸造に使われる水。「ゲス」という地で湧き出る水は、オーストリア屈指の名水といわれています。また麦芽は100%オーストリア産を使用して、副原料を使わずに醸造されているのが特徴です。

城に併設された醸造所「シュロス・エッゲンベルク醸造所」

ザルツカンマーグート地方のエッゲンベルク城には、オーストリアでも古い歴史を持つ家族経営の醸造所があります。ここでは、商業経営を始めてから300年以上にもわたってビールが造られてきました。当初は、城と村人のためだけにビールを造っていたそう。

城の持ち主が変わってもビール造りは続き、現在は最新の設備も導入されていますが、低温醸造、長期熟成といった古くからの製法にこだわったビール造りの伝統が受け継がれています。

ビールのおいしさを決める水は、城に湧き出るアルプスの水を使用。ホップは苦味の強い高級品をチェコのボヘミアから調達しています。

伝統的な小麦ビールの醸造所「カルテンハウゼン醸造所」

ザルツブルク近郊、アルプスの麓に「カルテンハウゼン」という小さな村があります。1475年、ザルツブルクの市長と裁判官が、ビールのおいしさを決める「水」と「涼しさ」に恵まれたこの村に、ブルワリーを設立。これがカルテンハウゼン醸造所の前身とされています。以来、500年以上もの長い間、この地でビール造りが行われてきたといわれています。

カルテンハウゼン醸造所は、古くから小麦ビール(ヴァイツェン)の醸造所として有名で、オーストリアの国花を冠した「エーデルワイス」という銘柄が人気です。醸造所内には、昔の職人がビール造りに使った木樽が展示されているなど、長い歴史と伝統を持つ醸造所ならではの雰囲気が漂っています。

日本でもたのしめる! オーストリア・ビールのおすすめ銘柄

日本でもたのしめる! オーストリア・ビールのおすすめ銘柄

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老舗の底力が発揮された伝統的ビール「ゲッサー ピルスナー」

ゲッサー醸造所が造る伝統的なビール。緑色のボトルとラベルが目を引きます。フルーティーで軽快なピルスナータイプでありながら、しっかりとコクのある、洗練された味わいが特徴です。

原料には、純国産の大麦とホップを使用。力強いモルトの香りと、やさしく豊かなホップの香りが溶け合い、リッチな香りを演出しています。オーストリアだけでなく世界中でビール好きの舌をたのしませている銘柄です。

サンタクロースにちなんだビール「サミクラウス」

エッゲンベルク醸造所が造るビール。「サミクラウス」は、スイスの方言で「サンタクロース」を意味します。そのため、このビールは、サンタクロースのモデルとなった聖ニコラウスの祝祭日である毎年12月6日に年に1度だけ醸造されます。

アルコール度数は14%で、世界で1番強いラガービールとしてギネスブックに認定 されたことがあります。瓶に入れたまま何年間も熟成させることが可能なビールで、古いビンテージものともなると、クリーミーで少し甘味があり、まろやかな飲み心地になります。食後酒として、チョコレートと一緒に味わうのもおすすめ。

高貴さを感じさせる小麦のビール「エーデルワイス スノーフレッシュ」

「エーデルワイス」はカルテンハウゼン醸造所を象徴する小麦ビール(ヴァイツェン)。アルプスの過酷な環境で凛と咲き誇るオーストリアの国花にちなんで名づけられています。ボトルには、アルプスの山々とエーデルワイスが浮彫されていて、高貴さを感じさせるデザインが印象的。

「エーデルワイス」ビールに、ミントや西洋ニワトコなどの複数のハーブを加えて造られた「エーデルワイス スノーフレッシュ」は、ほかのビールでは味わえない独特の風味をたのしめます。ライトな飲み口でキレがよく、ビール初心者にもおすすめ。近年は日本でも発売が開始されていて、愛好者が増えています。

日本ではあまりなじみのないオーストリア・ビールですが、日本でも手軽に購入できる銘柄もあるので、ぜひ伝統と歴史あるビールを堪能してみてください。

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