【角樽(つのだる)】とは?特別なお祝いごとに花を添える縁起物を解説!
さまざまなお祝いごとで使用される「角樽(つのだる)」をご存知でしょうか?今回は、「角樽」の起源や魅力のほか、日本酒を「祝い酒」として贈答する際のマナーについて紹介します。
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「角樽」は江戸時代に生まれた風情ある祝儀樽
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「角樽」は室町時代ごろに使われていた「柳樽」が原型
「角樽」は、風情ある美しい形を持ち、婚礼や祭礼などのおめでたい行事に使用されてきた酒容器です。この角樽の原型は、室町時代ごろから運搬用の酒容器として使われていた「柳樽(やなぎだる)」であるといわれています。
当時、柳樽は加工しやすく液体が漏れにくいことから柳で作られていました。しかし、江戸時代の文化文政のころになると、酒造りとともに樽造りが発達するなかで、材質は柳から杉に代わります。さらに、把手は角のように見栄えのする形になり、朱漆や黒漆が塗られて、現在に伝わる「角樽」が生み出されました。
「角樽」は本格的な木製だけでなく手軽なプラスチック製も
「角樽」は、角のように突き出した把手に持ち手の柄をわたした独特の形状と、漆塗りの高級感ある見た目が特徴です。現在では、木製本漆塗りの本格的なものからプラスチック製のものまであり、価格もさまざまです。なかには、一升瓶がすっぽりと入る、持ち運びしやすいタイプもあります。
また、蔵元や酒造メーカーによっては、お祝い用に角樽と日本酒をセットで販売している場合もあり、わざわざ角樽を用意する必要がなくて便利です。
「角樽」はさまざまな慶事に使用される
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「角樽」は結納品のひとつ「家内喜多留」として用いられる
「角樽」は、婚礼や結納のシーンで多く使用されています。一升樽の「角樽」には、“一生連れ添う”という意味が込められているため、縁起物とされているのがその理由です。
結納の際に両家で取り交わす結納品は、地域によって品数や内容が異なりますが、関東式では、目録や長熨斗(ながのし)などと並ぶ正式結納9品目のひとつとして「角樽」が贈答されます。
ただし、結納では「角樽」ではなく、その原型の「柳樽」に当て字をした「家内喜多留(やなぎだる)」という言葉が使われます。現在では結納品の日本酒を現金で代用するケースもありますが、そのような場合も、金封の表書きに「家内喜多留」と記載することがあります。
また関東地方以外でも、結婚の了解を得た際に男性側が女性宅に酒を贈る「決め酒」や「結び酒」といった風習が残る地方もあり、そのような場面でもやはり「角樽」が使用されています。
「角樽」は誕生、新築、開店などお祝いの場に花を添える
「角樽」は、婚礼や結納以外でも、多様なお祝いの場面で使用されます。婚礼の際には一升樽が用いられるのに対し、商家では「商売繁盛(はんじょう)」にかけ、半升(はんしょう)樽が好まれてきたのだとか。
「角樽」は現在、誕生、新築、開店、創業記念、還暦・米寿のお祝いなど、さまざまな慶事の贈答品として用いられ、おめでたい席に花を添えています。
「角樽」の代わりに日本酒2本? 贈答のマナーを知ろう
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「角樽」に限らず「祝い酒」の贈答にはマナーがある
「角樽」に限らず、日本ではお祝いごとの贈答品として「祝い酒」を贈る習慣がありますが、贈答にあたって覚えておきたいマナーがあります。せっかくのおめでたいシーンに素敵な贈り物ができるよう、最低限のマナーをおさえておきましょう。
まず、「祝い酒」として瓶入りの日本酒を贈る際に覚えておきたいのは、本数に注意をするということです。贈答にもっともふさわしい本数は2本とされていますが、これは、2本の瓶を紐でくくった姿が「角樽」に似ているからなのだとか。この2本を例外として、日本では伝統的に奇数(1本、3本、5本、7本など)は縁起がよいと考えられています。一方で、「死」を連想する4本、「苦」を連想する9本は避けるのが無難です。
先方の健康状態や好みを踏まえるのも大事なマナー
「祝い酒」を贈る際の基本的な前提として、先方がお酒を飲めるのかどうかを確認しておくことが必要でしょう。「祝い酒」に多く用いられる日本酒はアルコール度数が高いものも多く、先方が飲めない可能性もあります。
また、現在ではお中元やお歳暮などにビールがよく用いられますが、「祝い酒」にはワインやシャンパンなども好まれます。マナーはもちろん、先方の健康状態や好みを踏まえておくことが大切です。
「角樽」は婚礼や結納などをはじめとした、さまざまなお祝いに使用される縁起物です。日常で目にすることはあまりありませんが、大切なお祝いの場面で、特別な風情を添えてくれることでしょう。