岡山の日本酒【嘉美心/神心(かみこころ):嘉美心酒造】あえて「神」の名を冠した決意の酒
「嘉美心」と「神心」、同じ読みを持つ2つの銘柄の造り手として知られる嘉美心酒造は、岡山県浅口市で大正2年(1913年)に創業された蔵元です。「旨口酒」の味わいを追求し、消費者目線を忘れないひたむきな酒造りを続けてきた嘉美心酒造の歴史と、酒造りのこだわりを紹介します。
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「嘉美心」と「神心」と、2つの酒名に込められた想い
出典:嘉美心酒造サイト
嘉美心酒造は大正時代に創業された岡山県の蔵元
嘉美心酒造は、大正2年(1913年)、初代・藤井長十郎氏によって岡山県浅口市で創業されました。
初代に続き、酒造りに情熱を燃やした二代目の松三郎氏は信仰心にあつく、酒の神様として知られる京都の松尾大社から蔵元のある寄島町の大浦神社に分社を招致したほどだったのだとか。
蔵と同名の「嘉美心」という酒名は、松三郎氏の「身も心も清らかにしてお酒を醸したい」という願いから、「神心(かみこころ)」を意味して命名されたと言われています。
嘉美心酒造の歴史と覚悟を示す2つの酒名
嘉美心酒造は、創業100周年という節目を機に、2014年に新ブランド「神心」を特約店限定流通銘柄として開発しました。
かつて「嘉美心」と命名した際には、「神」という字をそのまま使うのはおそれ多いと、「美しい心を喜ぶ」という意味も込めて「嘉美心」としていました。
こうした歴史を踏まえ、あえて「神」の字を冠した「神心」の酒名には、新たな時代の創造に向けた蔵元の決意が込められているのです。
嘉美心酒造の酒造りのこだわり
出典:嘉美心酒造サイト
嘉美心酒造が追求するのは「米旨口」の日本酒
「嘉美心」や「神心」など、嘉美心酒造の酒造りには、「米旨口」の信念が貫かれています。
この方向性を打ち出したのは、二代目・松三郎氏の後を継いだ三代目の敦久氏。当時は戦後の混乱期で、米不足から「三倍醸造法」による甘口酒が流行するなかで、嘉美心酒造は増量のための調味料を用いず、米本来の味わいを引き出す「米旨口」と名づけた酒質をめざしました。
以降、嘉美心酒造では、地元農家と協働して米作りから酒造りを行うなど、米の旨味にこだわった「旨口の日本酒造り」を実践し続けています。
嘉美心酒造の酒造りの根底にある「誓い」とは
嘉美心酒造の酒造りで、もうひとつ特筆すべき特徴が、「自分たちもまた消費者である」という姿勢です。
嘉美心酒造では、「私たちはお酒を作ることではメーカーですが、生きる上では消費者です。だから家族の口に入れさせたくないものは作りません」との「誓い」を掲げています。この「誓い」のもと、常に消費者目線に立って、安心してたのしめる日本酒を提供する姿勢が、多くの日本酒好きから支持される理由のひとつです。
嘉美心酒造の酒造りを支える2つの蔵
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嘉美心酒造の2つの蔵「秘宝閣」と「渚の蔵」
嘉美心酒造が蔵を構える浅口市寄島町は、瀬戸内海に面した小さな漁港です。この地域は、江戸時代から優れた酒造技術で知られた杜氏集団「備中杜氏」が活躍した土地でもあり、寄島町ではその技術や伝統の継承に力を入れています。こうした町の中心に、嘉美心酒造の2つの蔵「秘宝閣」と「渚の蔵」が並んでいます。
昭和45年(1970年)に建造された「秘宝閣」は、仕込み蔵や貯蔵蔵として、1993年に建造された「渚の蔵」は洗米や蒸し、放冷、製麹などの酒の原料処理を行う場として使用されています。
嘉美心酒造の品質を支える徹底した温度管理
嘉美心酒造の「秘宝閣」では、冬は摂氏4度の環境下で「寒造り」が行われ、夏は全館冷房の環境のもと15度以下で貯蔵管理されるなど、徹底した温度管理が行われています。
導入当時は、その先進性ゆえに同業者から疑問の声もあったそうですが、今では「嘉美心」や「神心」の品質を支える不可欠な存在として定評があります。
2013年には冷房設備を一新し、より低温で管理できる「びん貯蔵場」を新設するなど、さらなる環境整備を行っています。
「嘉美心」に新ブランド「神心」を加え、嘉美心酒造はさらなる挑戦を続けています。先人の想いのこもった「嘉美心」と、次世代への決意が込められた「神心」。2つの「かみこころ」を飲み比べてみるのも素敵ですね。
製造元:嘉美心酒造株式会社
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