ビールのルーツ、メソポタミアの「シカル」とは?
ビールのルーツのひとつとされる「シカル(またはシカリ)」は、今から約5,000年前の古代メソポタミアの時代に飲まれていたビールです。古代より人々に愛され続けてきたビールですが、その起源とも言える「シカル」とは、いったいどんなビールだったのでしょうか。
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ビールのルーツをたどると「シカル」に行き着く
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ビールのルーツは最古の文明とされるメソポタミアにあり
ビールの誕生については諸説ありますが、今から約5,000年前の紀元前3000年ごろ、古代メソポタミアにシュメール文明が栄えた時代には、すでに今で言うところのビールが造られていたと言われています。
これは、シュメール人が残した「モニュマンブルー(醸造の記念碑)」と呼ばれる遺跡に残された粘土板に、くさび形文字でビール醸造について記録されていることからも、うかがい知ることができます。
古代のビール「シカル」とはどんな飲み物?
このころ誕生した古代のビールは「シカル(またはシカリ)」と呼ばれて、人々のあいだで広く親しまれていましたようです。
「シカル」は、麦で作ったパンを湯に通して自然発酵させたシンプルなもので、現代のビールとはかなり異なっていたようです。この「シカル」が、さまざまな歴史を経て、現在、私たちが飲んでいるビールへと進化したと考えられています。
ビールのルーツ「シカル」の造り方、飲み方
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ビールのルーツ「シカル」はどうやって造る?
ビールのルーツとされる「シカル」の造り方については、発掘された粘土板の記録から、おおよそのことが判明しています。
その記録によると、大麦を発芽させた麦芽を乾燥し、そこに古代種の小麦であるエンマーコムギを混ぜて「バッピル」と呼ばれる固いパンを焼き上げます。この「バッピル」を砕いて湯で溶き、野生の酵母を使って自然発酵させたものが「シカル」です。
この際、「バッピル」の焦がし方や麦の配合を変えたり、各種スパイスや季節の果実などを加えたりすることで、さまざまな種類の「シカル」を造っていたようです。
ビールのルーツ「シカル」の飲み方は?
「シカル」の飲み方ですが、現在のようにグラスやカップに注いで飲むのではなく、樽から直接ストローで飲んでいたようです。
というのも、当時はろ過技術が発達していなくて、固形物や不純物が多く混じっていたので、ストローでそれらを取り除きながら飲んでいたようです。また、メソポタミアは現代のイラクに位置し、夏場はかなり高温となるため、「シカル」は腐敗しないよう、造ってからすぐに飲んでいたようです。
ビールのルーツ「シカル」は文明の象徴
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ビールのルーツ「シカル」の意外な活用法
古代メソポタミアでは、「シカル」は単なる飲み物ではなく、神からの贈り物として大切にされ、お金として扱われることもあったと考えられています。
また、薬草やハチミツと混ぜて、一種のエナジードリンクとしても珍重されたようです。このように「シカル」は当時の人々の暮らしにしっかりと根付いた飲み物だったようです。
ビールのルーツ「シカル」は「ギルガメシュ叙事詩」にも登場
古代メソポタミアで誕生した、現存する世界最古の文学のひとつとされる「ギルガメシュ叙事詩」のなかにも「シカル」の記述があり、その存在を知らいない人物を「野蛮人」として見下す描写があります。このことからも、ビールの存在は、ある種の文明の象徴として扱われていたことがわかります。
今から約5000年も前から私たちの暮らしに欠かせないものとして親しまれてきたビール。そのルーツと言える「シカル」とは、いったいどんな味がしたのでしょうか。想像してみるのもたのしいですよね。