「お猪口(ちょこ)」を知れば、日本酒のたのしみ方がもっと広がる? 【日本酒用語集】
「お猪口」は、日本酒を飲むときに使われる器の代表格。いろいろな形や材質、大きさがあり、「今日はどのお猪口を使おうか」と考えるのも、日本酒のたのしみのひとつではないでしょうか。意外と奥深い「お猪口」の世界を覗いてみましょう。
- 更新日:
「お猪口」の定義と由来を知ろう
kathayut kongmanee/ Shutterstock.com
「お猪口」は、ちびちび飲むのに適した酒器
「お猪口」とは、日本酒を飲むときに用いる小さな器のことで、一般的に口が広く、底がすぼんだ形をしています。
よく、お猪口は「ぐい呑み」とどう違うのかが話題になります。ぐい呑みが、その名の通り「ぐいぐい」飲めるサイズの酒器に対し、お猪口は「ちびちび」飲むのに適した小ぶりなサイズ。飲みすぎ防止にも適した酒器と言えるでしょう。
とは言え、それぞれの容量に明確な規定があるわけではありません。酒器の容量の単位には「勺(しゃく)=10分の1合=約18ミリリットル」がよく使われますが、お猪口は小さいものなら2~3勺、大きなものだと5勺くらいのものもあります。
「お猪口」の由来には、さまざまな説がある
「お猪口」の由来には諸説ありますが、江戸時代、日本酒や酒の肴などを盛る、深さのある陶製の器のことを「猪口(ちょく)」と呼んでいて、これが転じて「お猪口(ちょこ)」となったとも言われています。
「猪口(ちょく)」の語源も、はっきりとはわかっていません。「ちょこまか」「ちょこっと」「ちょくちょく」など、ちょっとしたものやことを表す「ちょく」が語源であるという説と、飾り気のないことや安直さを示す「直(ちょく)」ではないかという説が主流のようです。
「お猪口」の種類と特徴
Kei Shooting/ Shutterstock.com
「お猪口」の底の、青い二重丸「蛇の目」の役割とは
「お猪口」と言えば、白い陶器の底に、青い二重丸が描かれたものを、思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
これは「蛇の目(じゃのめ)」と呼ばれるもので、白と青の組み合わせが日本酒の色やにごりを確認しやすいことから、利き酒に適していると盛んに用いられるようになりました。このことから、蛇の目のお猪口は「利き猪口」とも呼ばれます。
「お猪口」には、さまざまな材質のものが
「お猪口」と言えば、陶器の印象が強いですが、漆器やガラス製のもの、さらには錫(すず)など金属製のものもあるなど、意外なほどバリエーション豊かです。
漆器の酒器としては、三々九度でも使われる盃(さかずき)のほうがメジャーかもしれませんが、お猪口にはカジュアルな場でも使える魅力があります。また、日本酒を冷やして飲む際には、涼しげなガラス製もオススメ。高級感ある錫(すず)のお猪口は、熱伝導がよく、冷たいものは冷たく、温かいものは温かいままたのしめます。
お猪口は素材だけでなく、形やデザインも多種多様なので、季節やシーン、飲むお酒に合わせながら、お好みのものを選びましょう。
「お猪口」を選ぶときのコツ
sogoods/ Shutterstock.com
お猪口の材質を日本酒に合わせて選ぶ
「お猪口」のなかでもポピュラーな、陶器のお猪口は、日本酒の味をやわらかくしてくれるため、旨味やコクのある日本酒にピッタリ。厚みがあるものは、冷酒から燗酒まで幅広く使えます。繊細な味わいをたのしみたいときは、薄いものを選ぶとよいでしょう。
涼やかな見た目のガラスのお猪口は、淡麗でシャープな日本酒がよく合います。なかでも極薄の「うすはり」で造られたお猪口は、グラスの存在を感じさせず、日本酒の旨味がダイレクトに口のなかに広がります。
木製のお猪口は、木の香りで独特の風味が加わります。代表的なものは竹製ですが、最近では杉やヒノキなどバリエーションが増えています。普通酒など香りの少ないタイプの日本酒と相性がよいでしょう。
お猪口の形状を日本酒に合わせて選ぶ
「お猪口」の形状にも、幅広いバリエーションがあり、それぞれ日本酒のたのしみ方が変わります。
口径が小さく、口に触れる部分が少ないお猪口だと、日本酒がすっきりと感じられます。逆に、口径が大きく、口に触れる部分が大きいと、日本酒はまろやかな印象になります。
この違いは、一度に口に入ってくる日本酒の量の違いによるものと考えられていますが、実際に試してみると、同じ日本酒でも驚くほど味の印象が違うので驚かされるはず。
こうした変化をひとつのお猪口でたのしめる、楕円形など変形のお猪口も見かけるようになったので、一度試してみては?
「お猪口」の多彩な素材や形状は、見た目のおもしろさだけでなく、日本酒の味わいにも影響します。お猪口を選ぶときの参考にしてみてください。