「ひやおろし」がどんな日本酒か知っていますか?【日本酒用語集】

ひやおろしは、米の収穫が終わった秋から翌春にかけて造られた日本酒を、ひと夏かけ貯蔵・熟成させ、秋になって出荷するものを意味します。通常、日本酒は火入れと呼ばれる殺菌処理を2度施しますが、ひやおろしは、春に一度だけ行い、秋に2度目の火入れを行わず、冷やのまま出荷したことから「ひやおろし」と呼ばれます。
- 更新日:
「ひやおろし」は秋の日本酒の代名詞

Kazu Inoue / Shutterstock.com
「ひやおろし」は、ひと夏かけて熟成させた秋の日本酒
「ひやおろし」とは、米の収穫が終わった秋冬から、翌年の春にかけて造った日本酒を、ひと夏かけて貯蔵・熟成させ、秋になって出荷するものを指します。
春先に日本酒を貯蔵する際には、品質が劣化しないよう「火入れ」と呼ばれる殺菌処理を施します。外気と貯蔵庫の温度が同じくらいになる秋に、2度目の火入れをせず「冷や」のまま出荷したことから「ひやおろし」と呼ばれるようになりました。
「ひやおろし」は「火入れ」が1回のみの「生詰め酒」の1種
「ひやおろし」は、江戸時代から秋の風物詩として酒好きに愛されてきましたが、同じく秋の日本酒として親しまれている「秋あがり」とはどう違うのでしょうか?
「秋あがり」は、製造法などによる分類ではなく、貯蔵した日本酒がおいしく熟成した状態を意味する言葉で、反対に、熟成に失敗したことを「秋落ち」や「秋さがり」と言います。
「ひやおろし」の日本酒の魅力とは

716681473/ Shutterstock.com
「ひやおろし」ならではの味わい
「ひやおろし」は、ひと夏寝かせることで味わいのカドが取れ、香りも落ち着いてきます。フレッシュで勢いのある新酒と比べると、味にまとまりが出て、まろやかで、かつ厚みのある味わいがたのしめます。
しっかりとした旨味が感じられる「ひやおろし」は、とくに滋味深いきのこ料理や、旨味が溶け合った鍋料理との相性が抜群。秋の食卓を彩る絶好の組み合わせと言えるでしょう。
「ひやおろし」の味わいは変化する
ひと口に「ひやおろし」と言っても、夏を過ぎてすぐ出荷されたものと、晩秋を迎えてから出荷されたものとでは、熟成の度合いが異なります。
8月下旬から9月にかけての「ひやおろし」は、まとまりがありながらも、フレッシュさの残る味わいがたのしめます。10月、11月と秋が深まるにつれて熟成度があがり、より旨味も増していきます。
また、同じ時期に出荷された「ひやおろし」でも開封後の味わいの変化をたのしめますが、品質が劣化しないよう冷蔵保存が望ましいです。
プレミアムな「ひやおろし」も登場

funny face/ Shutterstock.com
プレミアムな二夏越えの「ひやおろし」が登場
近年、日本酒造りが多様化するなか、より熟成期間の長い「ひやおろし」を見かけるようになりました。「二夏越え」や「二夏越し」と呼ばれるように、2度の夏を越えてじっくりと熟成させたプレミアムな「ひやおろし」です。
まだ数少ない二夏越えの「ひやおろし」。オススメの銘柄を紹介しましょう。
【香住鶴 二夏越えひやおろし 山廃純米原酒生詰】
「香住鶴(かすみつる)」は、日本4大杜氏のひとつ但馬杜氏の故郷である兵庫県の美方(みかた)郡において、享保10年(1725年)創業の歴史を持つ、同盟の老舗蔵の代表銘柄。2019年10月に発売された「二夏越えひやおろし」は、しっかりとした旨味と穏やかな酸味、なめらかな口当たりがいっそう食材の味を引き立てます。
製造元:香住鶴株式会社
公式サイトはこちら
【二夏越え ひやおろし 金升 朱(あか)】
江戸後期、文政5年(1822年)創業の歴史を持つ新潟県新発田市の老舗、金升(かねます)酒造は、地元産の山の幸、海の幸と合う酒造りで愛されてきました。代表銘柄「金升」の朱ラベルは、乙類焼酎(米焼酎)でアルコールを強化した「柱焼酎仕込み」の酒。二夏かけて熟成させた円熟の味わいがたのしめる限定酒は、売り切れ必至の人気商品です。
製造元:金升酒造
公式サイトはこちら
「ひやおろし」は、熟成によってまろやかさを増した味わいで、どんな食事にもよく合います。基本的に数量限定の季節商品ですので、見かけたときには、ぜひ飲んでみてください。
