芋焼酎が鹿児島に多いのはなぜ? 鹿児島の芋焼酎の魅力を徹底分析
「芋焼酎と言えば鹿児島」とのイメージがあるように、鹿児島にある2,000以上もの焼酎銘柄の多くが芋焼酎。WTOが産地呼称を認めた産地呼称ブランド「薩摩焼酎」をはじめ、多くの銘柄が国内外で注目を集めています。ここでは、鹿児島の歴史や風土に着目し、鹿児島の芋焼酎の魅力を探っていきます。
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芋焼酎が鹿児島に多い理由
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鹿児島には異国の技術が伝わりやすい立地条件がある
鹿児島で焼酎造りが始まったのは16世紀頃のこと。西アジアで発達した蒸溜技術が、シャム(現在のタイ)から沖縄を経由して鹿児島に伝わったと考えられています。
当初は、米を原料とした米焼酎が主流でしたが、桜島の火山灰に覆われたシラス地帯は米作りに適さないため、普及には至らなかったようです。鹿児島の焼酎造りが盛んになるには、サツマイモの登場を待たねばなりませんでした。
鹿児島のサツマイモ生産量は日本一
鹿児島でサツマイモ栽培が始まったのは18世紀のこと。琉球から持ち帰ったサツマイモの苗がシラス台地での栽培に適していたことから、鹿児島全域へと一気に広まり、これを機に芋焼酎造りが定着しました。
鹿児島のサツマイモ生産量は、現在も日本一。国内総生産量のじつに4分の1以上を占めています。また、鹿児島では焼酎用サツマイモの研究が盛んに行われていることも、芋焼酎が多く造られる理由のひとつでしょう。
鹿児島が育む芋焼酎の魅力
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鹿児島は醸造場の数も日本一
鹿児島では、薩摩藩の時代から、芋焼酎を重要な特産物と位置づけ、その製造と品質向上を奨励してきました。このため、多くの焼酎蔵が切磋琢磨しながら焼酎造りの技術を磨き上げ、21世紀の今もなお、100軒以上もの焼酎蔵がさらなる研鑽を続けています。
現在、鹿児島の芋焼酎の銘柄数は2,000以上とも言われていますが、同じ味わいの銘柄はひとつとして存在せず、世に出回るのは個性をもった自信作だけ。
プレミアム芋焼酎3M(「魔王」「村尾」「森伊蔵」)のような逸品が鹿児島から誕生したのも、こうした環境があってこそでしょう。
鹿児島のみで造られる「薩摩焼酎」は世界的なブランド
鹿児島県産のサツマイモを使い、蒸溜から瓶詰めまで全工程を鹿児島県内で行った本格焼酎を「薩摩焼酎」と呼びます。
これは、ワインの「ボルドー」「シャンパン」、ウイスキーの「スコッチ」「バーボン」、ブランデーの「コニャック」などと同様に、WTO(世界貿易機関)によって「地理的表示の産地指定」を受けたものです。
こうした焼酎の産地呼称には「球磨焼酎(熊本)」や「壱岐焼酎(長崎)」などもありますが、芋焼酎で産地呼称が許されているのは、「薩摩焼酎」だけ。「芋焼酎=鹿児島」と思われるのも当然と言えるでしょう。
鹿児島の芋焼酎の失敗しない選び方
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鹿児島の芋焼酎を味わうためのキーワード
鹿児島産の芋焼酎銘柄は非常に多く、どれから飲むべきか迷う人も少なくないでしょう。
芋焼酎の味わいは、原料のサツマイモや種麹の種類、蒸溜方法、貯蔵・熟成期間、割り水など、さまざまな要素が絡み合って決定づけられます。好みの芋焼酎を見つけやすいよう、味わいの方向性を予測するためのキーワードを押さえておきましょう。
【白麹】
マイルドな味わいと軽やかな口当たりに仕上がる傾向。すっきりして飲みやすい銘柄が多いようです。
【黒麹】
素材の個性が際立つガツンと骨太な味わいに仕上がる傾向。辛口でキレがある銘柄が多いようです。
【黄麹】
フルーティーな香りとすっきり淡麗な味わいに仕上がる傾向。華やかな香りがたのしめる銘柄が多いようです。
【常圧蒸溜】
昔ながらの蒸溜方法で、原料芋の香味や旨味が残る銘柄が多いようです。
【減圧蒸留】
芋臭さや雑味を抑えた、すっきり飲みやすい味わいの銘柄が多いようです。
【長期熟成/熟成芋焼酎】
長期間熟成させることで香りや旨味に深みが増し、コクのあるまろやかな味わいに変化します。貯蔵方法によって、独特の香りが醸し出される銘柄もあります。
鹿児島の芋焼酎は、どれを取ってもクオリティが高く、種類も豊富。じっくり研究すれば、とっておきの1本に出会えるはずです。お店に焼酎唎酒師や焼酎に詳しいスタッフがいる場合は、好みの傾向を伝えてセレクトしてもらいましょう。