若者の日本酒離れは本当か?
日本酒をはじめ、若者のお酒離れが進んでいるとよく耳にします。しかし、毎週のように各地で開催される日本酒イベントや、日本酒をウリにした飲食店では、若者の姿も多く見られます。若者の日本酒離れは本当なのか、日本酒メーカーの若者向けの取り組みも含めて探ってみました。
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お酒のなかで日本酒が好きな若者は意外と多い
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日本酒を選ぶ若者が実は増えている!?
日本酒の国内出荷量は年々減少しつつあり、その一因として“若者のお酒離れ”を挙げる声が少なくありません。
確かに、厚生労働省が発表した2017年版「国民健康・栄養調査」によると、飲酒習慣のある20代の比率は、他の世代よりも少ないという結果が出ています。一方で、2016年から2017年にかけて、もっとも飲酒習慣が増えているのも20代です。
また、あるグルメサイトが20~30代を対象に実施したアンケートでは、好きなお酒のジャンルとして「日本酒」を挙げる人が多く、20代ではなんとハイボール、レモンサワーをおさえて堂々の4位。とくに男性票が集まっているのが特徴的です。
日本酒が若者の心をとらえるワケ
「若者は日本酒を敬遠しがち」とのイメージが強いようですが、日本酒のおいしさや、日本酒造りの文化に触れることで、日本酒にハマっている若者も少なくありません。
その背景には、80年代ごろから蔵元の世代交代が進み、自由な考え方や構造技術の進歩などによって日本酒の味わいそのものが向上し、またパッケージ・意匠などに若者世代の感覚が取り入れられるようになったことが挙げられます。
今の20~30代がお酒を飲める年齢になったのは、2000年代以降。そのころには、若い造り手が送り出す多彩な人気銘柄が出揃っていて、“酔うための日本酒”ではなく“じっくり味わう日本酒”が身近にある、恵まれた環境にあったのです。
若者好みの日本酒開発
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スパークリング日本酒が若者に人気
若者のあいだで日本酒人気が高まっている理由のひとつが、若者をターゲットにした商品開発が積極化していること。なかでも若い女性に支持を得ているのが「スパークリング日本酒」です。さわやかな炭酸の飲みごこちに加えて、アルコール度数をおさえた商品が多いのも、女性に喜ばれるポイントでしょう。
そのパイオニア的存在と言えるのが、宮城県の蔵元、一ノ蔵(いちのくら)が1998年に発売した「すず音(ね)」。さらに、2011年に京都伏見の宝酒造が「澪(みお)」を発売したことで、注目のジャンルとなりました。
若者の心をつかむ日本酒のコラボ企画
日本酒の蔵元が地域の若者とともに新しい日本酒を開発する取り組みも行われています。
文化4年(1807年)から続く老舗・那波(なば)商店では、地元・秋田の大学生との共同開発を実施。製造は秋田県立大学で醸造学を専攻する学生が、ラベルやポスターのデザインは秋田公立美術大学の学生が担当し、造り手と同世代の消費者に訴求する日本酒「究(きわむ)」を2019年3月に発売しました。
初心者にも飲みやすい日本酒をめざし、みずみずしいライチのような甘酸っぱさが伝わってくる仕上がりになっています。
製造元:株式会社那波商店
公式サイトはこちら
若者向けの日本酒イベントが大盛況!
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日本酒イベントを若者自ら盛り上げる!
若い世代の日本酒人気の盛り上がりは、全国各地で毎週のように開催されている日本酒イベントを見ればよくわかります。こうした日本酒イベントは、世代交代した蔵元や飲食店を中心に、日本酒のおいしさを広めようとの目的で活性化し、造り手と飲み手をつないできました。
近年では、20代の杜氏の台頭もあり、日本の伝統を守りつつ自分たちの手で残していこうという90年代生まれの若者が中心となったイベントも。若者らしく、気軽に参加しやすい価格設定の傾向にあります。
2019年5月には長野県上田市で、学生限定の日本酒イベントが開催され、300人近くの参加者で盛り上がりました。飲酒マナーの啓発や、地元の蔵元のトークイベントなど、たのしくマジメに日本酒に親しむ機会になったようです。
若者が日本酒をたのしく学ぶ
今、大学で日本酒について学んだり、研究するゼミがあるのを知っていますか?
新潟大学では2018年4月から「日本酒学」の講座が開設。清酒の歴史や製造法、流通、地域文化などを多角的に学ぶ講座で、定員200人に対し4倍以上の希望者が集まりました。
産業能率大学の通信教育課程では、教養としての日本酒の知識を学ぶ科目があり、京都の龍谷大学のとあるゼミでは、若者に日本酒を普及するサークルを立ち上げイベントを開催するなど、教育の場で熱心に日本酒を学ぶ若者が増えているのです。
調べるほどに、若者が日本酒を自国の文化としてとらえ、大事にしていこうとしている姿勢が見えてきました。なんとも頼もしいことですね。本サイトでも、こうした取り組みを応援していきたいと思います!