「ローランドモルト」に息づく伝統とは?【ウイスキー用語集】

「ローランドモルト」に息づく伝統とは?【ウイスキー用語集】
出典 : David Hughes/ Shutterstock.com

「ローランドモルト」は、スコッチウイスキーを6つの産地ごとに分類したうちのひとつで、軽く飲みやすい銘柄が多いのが特徴です。では、ローランドモルトが生まれた「ローランド」とは、どんなところでしょう? ローランドにおけるウイスキー造りの歴史や、代表銘柄も含めて紹介します。

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ローランドモルトはスコットランド南部のローランド生まれのモルトウイスキー

ローランドモルトはスコットランド南部のローランド生まれのモルトウイスキー

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「ローランド」はかつてスコッチウイスキーのメッカだった!

「ローランドモルト」とは、スコットランド南部のローランド地方で造られるモルトウイスキーのこと。
スコットランドは、北部は高地、南部は低地が多いことから、それぞれ「ハイランド」「ローランド」と呼ばれています。両者の境界線が明確に定義されたのは、1784年にウイスキーの税率を定めた「もろみ法」という法律が初めてと言われています。

「ローランド」はスコッチの6大生産地のひとつ

ローランドは、ハイランドやスペイサイド、キャンベルタウン、アイラ、アイランズとともに、スコッチウイスキーの6大生産地に数えられます。
ローランドは、17世紀にはスコッチウイスキーの約90パーセントが造られるほどの一大生産地でした。また、連続式蒸溜利機やグレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキーを登場させるなど、スコッチウイスキーの歴史に重要な役割を果たしてきた地域でもあります。次章では、その歴史を紐といていきましょう。

ローランドモルトとグレーンウイスキーの歴史

ローランドモルトとグレーンウイスキーの歴史

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「ローランド」はかつてスコッチウイスキーのメッカだった!

「ローランドモルト」を造るローランドは、イングランドと境を接し、エジンバラやグラスゴーといった主要都市を擁しています。このため、イングランドからの資本が流入しやすく、ウイスキー産業の反映につながりました。
ところが、1707年にイングランドがスコットランドを併合すると、ウイスキー造りに高額の酒税が課せられ、多くの酒造業者が人目につきにくいハイランド地方に逃れて密造を開始。ローランドのウイスキー造りは急速に衰退しました。

「ローランドモルト」の衰退を止めたグレーンウイスキー

存亡の危機に立たされたローランドの蒸溜所では、イングランドの大資本を背景に、産業革命によって生まれた連続式蒸溜機をいち早く導入。大麦に比べて安価なトウモロコシやライ麦、小麦などの穀類を主原料とした「グレーンウイスキー」の製造を開始しました。
これが、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドする「ブレンデッドウイスキー」を誕生させるきっかけとなり、その飲みやすさと安定した品質で、スコッチウイスキーを世界に広げることにつながったのです。

ローランドモルトの特徴

ローランドモルトの特徴

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「ローランドモルト」の特徴はライトでと都会的な味わい

ローランドモルトの特徴としてよく言われるのが、「ライト(軽い)でドライ」「都会的な味わい」というもの。スコットランドでも産業の発展したローランドの風土が、モルトウイスキーにも表れているのでしょう。
「ライト」だからといって、決して個性がないということではありません。アーモンドやキャラメルのような甘味を感じさせ、デリケートな味わいがスムーズな飲み口とあいまって、女性的な印象をあたえるモルトが多く見られます。

「ローランドモルト」に息づく伝統とは

ローランドモルトのライトな味わいのもととなるのが、「3回蒸溜」という伝統的な製法です。
一般的に、ウイスキーの蒸溜工程は「初溜」「再溜」と呼ばれる2回蒸溜。この2回の蒸溜で、アルコール度数が65~75度のモルト原酒(ニューポット)が生まれます。さらに3回目の蒸溜を行うことで、より純粋なアルコールに近くなり、雑味やクセのない、ライトでまろやかな味わいのウイスキーが誕生するのです。

ローランドモルトの代表的銘柄

ローランドモルトの代表的銘柄

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ローランドモルトの伝統を守る3銘柄を紹介

ローランドモルトを製造する蒸溜所は、現在では非常に少なくなっています。昔ながらの伝統を守りつつ操業しているのが「グレンキンチー」「オーヘントッシャン」「ブラドノック」の3カ所で、最近になって「ダフトミル」「アイルサベイ」など新しい蒸溜所も誕生しています。ここでは、歴史ある3つの銘柄を紹介します。

【グレンキンチー】

エジンバラ近郊で、1837年の創業以来、昔ながらのウイスキー造りを続けているのがグレンキンチー蒸溜所。生産量の大半は「ジョニー・ウォーカー」などブレンデッドウイスキーの原酒として用いられ、単一蒸溜所のモルトのみを瓶詰めする「シングルモルト」として出荷されるのは1割ほどだとか。
それだけ稀少な「グレンキンチー」の味わいは、すっきりとまろやか。レモンのような上品な香りが立ち上がり、和食との相性も素晴らしいと言われています。

【オーヘントッシャン】

1823年創業のオーヘントッシャン蒸溜所では、伝統の3回蒸溜をかたくなに守り続け、すべてのモルトウイスキーを3回蒸溜で造っています。蒸溜を重ねるだけあって、その味わいには雑味やクセがなく、マイルドで飲みやすいウイスキーに仕上がっています。

【ブラドノック】

スコットランドではもっとも南にあるブラドノック蒸溜所で造られるローランドモルト。現在まで、何度か閉鎖と復活を繰り返してきた蒸溜所だけに、生産量も少なく、希少なウイスキーとして知られています。桃やリンゴを思わせるフルーティーな香りと、口に含んだ時のやわらかくなめらかな味わいが特徴です。

「ローランドモルト」はスコットランド南部のローランド地方で造られるモルトウイスキーです。現在は蒸溜所の数も少なく、取り扱う店舗は少ないかもしれませんが、ライトでマイルドな味わいは、シングルモルト初心者にもオススメ。見つけたらぜひ飲んでみてください。

ライトな味わいのウイスキーが好例なスコットランド・ローランド地方

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