「ウイスキー特級」は、かつてのお父さんたちの憧れだった
「ウイスキー特級」のラベルが貼られたボトルは、かつては居間の棚にうやうやしく鎮座し、世のお父さんたちは少しずつグラスに注いでは「うまい」とつぶやいていました。そんな昭和のお父さんの“憧れの的”だったウイスキー特級の歴史をひもといてみましょう。
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ウイスキー特級を生んだ旧酒税法
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ウイスキー特級を生んだ1962年の酒税法改正
ウイスキー特級は、昭和37年(1962年)の酒税法改正により誕生しました。それ以前にも、原酒の混和率やアルコール度数によって「特級」「1級」「2級」に区別される級別制度は存在していましたが、ウイスキーでは日本酒でも焼酎でもない「雑酒類」に分類されていました。
法改正によって独立した「ウイスキー類」として扱われることとなったことで、初めて「ウイスキー特級」が登場したのです。
ウイスキー特級の基準とは?
当時の酒税法では、ウイスキーの特級は、次のように規定されていました。
1.原酒混和率 30パーセント以上
2.製品の基準アルコール分 43度
3.原酒の増量倍率 3.33倍から0倍まで
その後、数度の法改正によって数値は変わったもの、3つの基準のうち「ウイスキー原酒の混和率」が優先されていたようです。
ウイスキー特級は、昭和のお父さんのステータスシンボル
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特級ウイスキーには1級、2級よりも高額な税金が
ウイスキーの特級、1級、2級といった級別制度は、酒税法によって定められていることからもわかるように、税負担を決めるための制度です。
ウイスキーは級が高くなるほど、つまり含まれる原酒の量が多いほど税金が高くなる「従量税」が基本であり、加えて、価格に応じて課税される「従価税」という二重課税の時代もありました。
日本酒や焼酎、ビールなどに比べると、ウイスキー全体が高額になりがちで、なかでも特級ウイスキーは“高嶺の花”と言える存在でした。
特級ウイスキーは高度経済成長を背景とした成長のシンボル
ウイスキーの級別制度は、課税によって高額になるというマイナス面もありましたが、ウイスキーに“高級な酒”というイメージを与えた側面もあります。
また、当時のお父さんたちは、高度経済成長を背景に、働いた分だけ給料アップが期待でき、仕事帰りにバーで注文するウイスキーが2級から1級、さらには特級ウイスキーへとランクアップしていくことを励みとしていたそう。
当時の特級ウイスキーを代表する「ジョニ黒(ジョニー・ウォーカー黒ラベル)」や「オールド・パー」「バランタイン17年」といった銘柄は、お父さんたちにとって“憧れの的”であると同時に、働きがいのひとつでもあったのです。
ウイスキー特級はコレクターズアイテム
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ウイスキー特級の味は大丈夫?
かつて販売されていたウイスキー特級は、その希少性ゆえに、現在も人気を集めています。
高いアルコール度数によって腐敗しづらいウイスキーには賞味期限がなく、保存熟成させることで、その味わいや香りを変化させます。しかし、保管状況によっては味が落ちてしまう場合もあるので注意が必要です。
ウイスキー特級がコレクターズアイテムになるとき
ウイスキー特級を含めた級別制度が廃止されたのは、時代が昭和から平成に変わった1989年のこと。それからすでに30年が経過し、元号も令和へと変わった今、ウイスキー特級の希少性はますます高くなっています。
昭和、平成、令和と3つの時代を生き残りつづける「ウイスキー特級」。コレクターズアイテムとして、人気を集めるのもうなずけます。
ウイスキー特級の現在の価値
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ウイスキー特級の現在の価値を考える
ウイスキー特級の現在の価値はどの程度でしょうか。あるオークションサイトによると、ボトルでの保存状態がわからない個人出品の場合は、意外に安く取引されています。
もちろん銘柄にもよりますが、現行品として今も売られている銘柄は1本3〜4,000円程度。すでに販売が終わった銘柄だと15,000円以上するものもあり、平均落札価格は7,000円程度というのが相場のようです。
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
ウイスキー特級に出会えればラッキー!
純粋にウイスキーをたのしみたい人には、やはり現行のウイスキーがおすすめです。それでも、「かつてお父さんが憧れた1本を味わってみたい」という思いがあるのなら、リスクやコストを検討したうえで、オークションで落札するのもありかもしれません。
また、実家やおじいさん、おばあさんの家に遊びに行ったときなどに、偶然ウイスキー特級に出会えたときはラッキーの一言。もしいただけたなら、味わってみたいですね。
ウイスキー特級の歴史をみてきました。旧酒税法の時代には“高嶺の花”でしたが、等級制度の廃止後は入手しやすくなり、良質なウイスキーを手頃な価格で入手できるようになっています。そんな時代に感謝しつつ、ウイスキー特級の時代を想いながら、ウイスキーをじっくり味わってみては。