「上撰(じょうせん)」とは、どんな日本酒?

「上撰(じょうせん)」とは、どんな日本酒?
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「上撰」とは、日本酒のランクづけを示す言葉のひとつです。法令で定められているものではなく、各蔵元がそれぞれの基準で使用しています。今回は、「上撰」の日本酒の魅力、「上撰」などの名称が使われ始めた経緯、「上撰」のおすすめ銘柄などを紹介します。

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ラベルなどに「上撰」と書かれている日本酒見たことはありませんか? 「上撰」と呼ばれるのは、どんな日本酒なのでしょう。まずは「上撰」の日本酒の魅力からみていきます。

「上撰」とは何を意味する言葉?

上撰は魅力あふれる日本酒

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「上撰」の日本酒は、大手酒造メーカーから地方の蔵元までが手掛けているお酒です。

その多くは、比較的リーズナブルな価格の日常酒であり、食中酒にぴったりの飲み飽きしない味わいで愛飲家や地元の人々に親しまれてきた銘柄が多数存在します。

「上撰」とは日本酒のランクづけを表す言葉

「上撰」は、「特撰」や「佳撰」などと同じく日本酒のランクづけを表す言葉です。

かつて日本酒は、級別制度によって「特級」「一級」「二級」に分けられていました。「上撰」は、このうちの「一級酒」に相当するレベルの日本酒に使われることが多いものです。

同様に、「特撰」は昔の「特級酒」クラスの日本酒に、「佳撰」は昔の「二級酒」クラスの日本酒に使用される傾向があります。

日本酒の「上撰」「特撰」「佳撰」の読み方

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「上撰」「特撰」「佳撰」の読み方は?

ところで「上撰」は、なんと読むのでしょう。「撰」は、常用漢字表には含まれておらず、使われる機会があまり多くない漢字です。「特撰」「佳撰」の読み方も一緒にみていきます。

◇上撰:じょうせん
◇特撰:とくせん
◇佳撰:かせん


「撰」には、「多くのなかから選び取る」という意味があります。「上撰」「特撰」「佳撰」という名称は、級別制度の名残というだけでなく、「たくさんの日本酒のなかからよりすぐったお酒ですよ」という蔵元からのメッセージを表しているものなのかもしれませんね。

「上撰」が生まれた日本酒の級別制度とは?

日本酒の級別制度とは

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「上撰」などの名称が生まれるきっかけとなった、日本酒の級別制度などについてみていきます。

「上撰」が生まれる前の日本酒の級別制度

かつて日本酒(清酒)には、等級別に酒税を課すための級別制度が設けられていました。

戦前に級別制度が始まった当初、清酒は「一級」から「四級」の4段階に分類されていました。戦後になると、以下の審査基準で「特級」「一級」「二級」の3段階にランク分けされ、制度が撤廃される平成4年(1992年)まで続きました。
◇特級:品質が優良であるもの
◇一級:品質が佳良であるもの
◇二級:清酒のうち、特級及び一級に該当しないもの

(酒税法施行令・御署名原本・昭和三十七年・第八巻・政令第九七号より)

級別制度は、等級が高い日本酒ほど税額も高くなるというものでしたが、等級と実際の酒質が必ずしも合わなくなってきたことなどから廃止されました。

級別制度に代わって登場した特定名称

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「級別制度」に代わって登場した「特定名称」

級別制度に代わって登場したのが、「吟醸酒(ぎんじょうしゅ)」「純米酒(じゅんまいしゅ)」「本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)」といった「特定名称」です。

「特定名称」は、平成2年(1990年)に適用された国税庁告示「清酒の製法品質表示基準」の要件を満たす日本酒だけが名乗れるものです。

審査を経て決定された等級と異なり、「特定名称」は原料や精米歩合、製法の違いなどによって、

吟醸酒(ぎんじょうしゅ)
大吟醸酒(だいぎんじょうしゅ)
純米酒(じゅんまいしゅ)
純米吟醸酒(じゅんまいぎんじょうしゅ)
純米大吟醸酒(じゅんまいだいぎんじょうしゅ)
特別純米酒(とくべつじゅんまいしゅ)
本醸造酒(ほんじょうぞうしゅ)
特別本醸造酒(とくべつほんじょうぞうしゅ)

の8つに分類されています。

「上撰」「特撰」「佳撰」は各蔵元がそれぞれの基準でランクづけ

「上撰」「特撰」「佳撰」は各蔵元独自のランクづけ

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級別制度があったころ、「特級」などの等級は消費者にとって日本酒を選ぶ際の目安のひとつとなっていました。

そのため多くの蔵元は、「特定名称」が登場したとき、消費者がお酒選びで混乱しないように「特級」「一級」「二級」に代わる日本酒のランクづけを独自に考え出しました。そのうち広く使われているのが「特撰」「上撰」「佳撰」です。

「特撰」「上撰」「佳撰」は法令で規定されているものではありません。たとえば、同じ「上撰」の日本酒でも蔵元によって定義が異なるため、その味わいは千差万別といえます。

「上撰」の日本酒にはお値打ち商品も多数

上撰は手軽に飲める日本酒

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普段の晩酌にも向いている日本酒「上撰」のおすすめ銘柄を紹介します。

「上撰」は普段使いできる手軽さも魅力

商品名に「上撰」とついている日本酒の種類は、じつにさまざまです。特定名称酒の「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」などのほか、「特定名称」がつかない「普通酒」の「上撰」も数多くあります。

「普通酒」の「上撰」の魅力は手軽さ。比較的リーズナブルな価格のものが多いため、普段の晩酌にも向いているといえます。

級別制度が廃止されてから四半世紀以上が経ち、「特定名称」が知られるようになった現在でも、「上撰」をはじめとする蔵元独自の名称が使われ続けているのは、長年にわたる愛飲家の支持があってこそのもの。

ファンの期待を裏切ることなく造り続けてきた、各蔵元の「上撰」を飲み比べてみてくださいね。

「上撰」のおすすめ銘柄

「上撰」のおすすめ銘柄をみていきましょう。

月桂冠(げっけいかん)「上撰」

京都府の月桂冠が造る「上撰」

出典:月桂冠株式会社サイト

酒処・伏見の代表格「月桂冠」のスタンダード酒。上質な原料米を使用し、五味(甘・酸・辛・苦・渋)のバランスと味の深味を徹底的に追求。発酵末期のもろみに、もう一度米を加える「四段仕込み」など伏見伝統の技術を活かしたこだわりの1本です。自然な香りと、まろやかなうまみが特徴で、冷やして飲んでもお燗につけてもおいしくいただけます。

製造元:月桂冠株式会社
公式サイトはこちら

白鶴(はくつる)酒造「上撰 白鶴」

兵庫県の白鶴酒造が造る「上撰 白鶴」

白鶴酒造株式会社提供

兵庫の酒処・灘の酒「白鶴」伝統の「うまし酒」。小瓶や紙パック、カップ酒とバリエーションも豊富で、飲むほどに親しみのわく、飲み飽きしないさらりとした口当たりと深い味わいが特徴です。いろいろな料理に幅広く合わせやすく、さまざまな温度帯でもたのします。とりわけ秋から冬にかけての季節には燗で飲むのがおすすめ。

製造元:白鶴酒造株式会社
公式サイトはこちら

大関(おおぜき)「上撰 辛丹波(からたんば)」

兵庫県の大関が造る「上撰 辛丹波」

出典:大関株式会社サイト

酒造好適米の王様と呼ばれる「山田錦(やまだにしき)」を麹米(こうじまい)に使用。銘酒の造り手として名高い丹波杜氏伝承の技で丹精込めて醸した、切れのあるあと味の奥に味わい深い旨味を感じさせる淡麗辛口の本醸造酒。「上撰 辛丹波」ブランドのライナップには純米酒と生貯蔵酒もあり、いずれもが温度帯を問わずたのしめます。

製造元:大関株式会社
公式サイトはこちら

ひと口に「上撰」といっても、その味わいには個性があります。今回紹介した3銘柄のように蔵元の酒造りのポリシーが感じられるものも多い「上撰」の日本酒をぜひたのしんでみてください。

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