栃木の日本酒【姿(すがた)】原料米を搾ったままの「姿」で提供
「姿」は栃木県栃木市に蔵を構える蔵元、飯沼銘醸が造る日本酒です。この蔵元は「杉並木」という代表銘柄で知られていますが、それとは別に、タンク1本だけで仕込み、無ろ過生原酒で出荷されるのが「姿」。栃木でも美酒と評判の「姿」について、詳しく紹介します。
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「姿」は山田錦を原料として搾ったままのお酒
出典:飯沼銘醸サイト
「姿」の蔵元である飯沼銘醸は、文化8年(1811年)創業という老舗蔵。200年以上にわたり、地元産の原料にこだわった酒造りを続け、現在は当主と地元出身の蔵人3人による、小規模ならではの行き届いた酒造りを行っています。
飯沼銘醸の主力銘柄である「杉並木(すぎなみき)」は、大吟醸や吟醸酒、本醸造酒などがラインナップされていますが、「姿」は純米吟醸を中心に、タンク1本分のみを造る希少銘柄。その特徴は、酒袋から搾った日本酒を、ろ過や火入れ、加水をせずにフレッシュな状態で瓶詰めすること。原料はおもに、地元の契約農家が栽培した酒造好適米「山田錦」を使い、一部は自社栽培するほどのこだわりをもっています。
原料米のおいしさをそのまま瓶に閉じ込めた「姿」は、芳醇な香りと膨らみのある甘味がありながら、すっと切れるあと口が魅力。飲んだ人をとりこにする酒として、全国の地酒愛好家から高く支持されています。
「姿」のこだわりは手作業の限定吸水や箱麹法
出典:飯沼銘醸サイト
「姿」の造り手、飯沼銘醸では、酒造りの製法に独自のこだわりがあります。蔵の近くを流れる大谷川の伏流水を使って行われる「限定吸水」と、当主と職人が総出となって手作業で麹を仕込む「箱麹法」です。
「限定吸水」とは、酒質に非常に大きな影響を与える米の吸水を、精緻な管理のもと行うこと。その日の気温や湿度などに応じて、洗米や浸水時間を秒単位で管理します。「箱麹法」とは、大きめの木箱を使って麹を仕込むこと。どちらも昔ながらの手作業で行われる、飯沼醸造の酒造りを象徴する工程です。
「姿」の豊かな味わいは、こうした労を惜しまぬていねいな酒造りによって育まれたものであり、それゆえに、飲む人の心にしみ通るような印象を残すのでしょう。
「姿」にはフルーティな香りの純米吟醸やスパークリングもあり
Wako Megum/ Shutterstock.com
「姿」はタンク1本分しか仕込まないため、その生産量はごく限られたものとなっています。だからといって、単一の味のみではなく、純米吟醸に加えて発泡酒(スパークリング酒)も人気を博しています。
日本酒の発泡酒は、製法によって3種類に分類されます。まず、日本酒に炭酸ガスを追加する方法。次に、瓶詰めしたあとに酵母を足して二次発酵によって炭酸を発生させる方法。最後が、いわゆる「にごり酒」で、酒そのものの発酵力だけで発泡させる方法です。「姿」の発泡酒は、3番目の「にごり酒」に該当します。
「姿」の純米吟醸酒は、りんごのようなフルーティな香りと、甘味と酸味のバランスのよさが心地よく、潔いあと口が魅力です。一方、「姿」の発泡酒は、炭酸の爽快さが日本酒の新たな魅力を演出。純米吟醸の旨味を感じつつ、よりフレッシュな飲み口が際立ちます。
「姿」のブランドとしての歴史はそれほど長くはありませんが、そのおいしさから年々、人気が高まっています。希少性が高いため、巡り会う機会があったら、逃さず試してほしい日本酒です。
製造元:飯沼銘醸株式会社
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