栃木の日本酒【若駒(わかこま)】老舗蔵元が醸す佐瀬式搾り

栃木の日本酒【若駒(わかこま)】老舗蔵元が醸す佐瀬式搾り
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「若駒」は、万延元年(1860年)創業という歴史をもつ若駒酒造の代表銘柄です。老舗蔵元の6代目が、蔵に眠っていた設備を復活させ、地元の米を使って仕込んだ日本酒が「若駒」です。そんな新たな挑戦を秘めた「若駒」を紹介します。

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「若駒」を醸す蔵元は文化財指定の建物もある老舗

「若駒」を醸す蔵元は文化財指定の建物もある老舗

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「若駒」を造る若駒酒造が創業したのは、万延元年(1860年)のこと。蔵に残る建物が国の登録有形文化財に指定されていることが、その歴史の長さを物語っています。

現当主は6代目の柏瀬幸裕氏で、大人気銘柄「風の森」で知られる奈良県の油長(ゆちょう)酒造で3年間修業したのちに若駒酒造に戻りました。その後、自らが杜氏となり、理想の日本酒造りに着手。なかでもこだわったのが原料米でした。

若駒酒造が蔵を構える栃木県小山市は、日光連山の伏流水が湧く豊かな水源に恵まれ、栃木でも有数の穀倉地帯として知られています。そんな米処で栽培される良質な米のなかから、柏瀬氏が選んだのが、酒造好適米「雄町」と、一般米である「あさひの夢」。この2種類を原料に造った日本酒に、蔵を代表する銘柄にするとの想いを込めて、蔵と同じ「若駒」の名を冠したそうです。

「若駒」の特徴は栃木県内でも珍しい「佐瀬式」による搾り

「若駒」の特徴は栃木県内でも珍しい「佐瀬式」による搾り

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「若駒」のもうひとつの特徴が、歴史ある蔵に残されていた伝統的な設備を活かして醸されていること。その象徴といえるのが「佐瀬式」と呼ばれる搾り方です。

醪(もろみ)から日本酒を搾る方法としては、搾り機を使って圧搾する「藪田式(やぶたしき)」や、醪を入れた袋を吊るして搾る「袋吊り」が知られています。これらに対し、「佐瀬式」とは醪を入れた袋を槽(ふね)と呼ばれる木枠に敷き詰め、ゆっくり圧をかけることで搾るもので、「槽搾り(ふなしぼり)」ともいわれます。
一般的には効率のよい藪田式が用いられ、品評会に出す酒では吊るし搾りが採用されることが多く、時間と労力がかかる佐瀬式で搾る蔵元はそれほど多くはありません。「若駒」は米の旨味を十分に感じながらも、雑味の少ない澄んだ味わいが特徴ですが、それはゆっくりとていねいに搾る佐瀬式によるものといえます。

若駒酒造が伝統手法を導入しているのは、搾り工程だけではありません。酒を貯蔵するにも、金属製のタンクではなく、かつて使われていた木桶を60数年ぶりに復活させて使用しています。「木桶仕込み」は、均一に管理できるタンクにくらべて手間がかかりますが、そのぶん自然な発酵が期待でき、酒に豊かな表情をもたらします。

搾りや貯蔵における伝統的手法の導入が、「若駒」の味わいを支えているのです。

「若駒 無加圧採り」は「おりがらみ」の豊かな旨味や甘味

「若駒 無加圧採り」は「おりがらみ」の豊かな旨味や甘味

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「若駒」で用いられている「佐瀬式」という搾り方の特徴に、「おりがらみ」があげられます。「おりがらみ」の澱(おり)とは、酒に含まれている米の粒子や酵母などの固形物のことで、おりがらみの酒は、米の旨味とコクが増すのが特徴です。

槽を使う佐瀬式のなかでも、圧力を加えず自重のみで搾る「無加圧採り」は、上品なおりがらみの酒を生み出します。そうして生まれた酒を、ろ過せずに仕上げたのが「若駒 無加圧採り」です。

口に含むとバニラに似た香りが立ち、節度のある甘味や酸味が膨らみます。杯がすすむほどにバランスのよい飲み口になり、温度が上がると果実のようなやさしい甘味が際立つという、広がりのある味わいが「若駒」の個性なのです。

歴史ある老舗の若い当主が蔵の伝統を重んじ、現代では少なくなった手法でていねいに醸す「若駒」。その実力は多方面で認められ、メディアでも取り上げられる注目銘柄です。出会う機会があったら、ぜひ味わってみたいものですね。

製造元:若駒酒造株式会社
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