奈良に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【近畿編】

奈良に行って飲んでみたい! おすすめの日本酒(地酒)【近畿編】
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奈良県には、「日本清酒発祥之地」の碑が建てられた寺があるように、遠く古代から酒造りと密接な関係があります。このため、現代でも趣ある味わいを追求した酒蔵も多く存在しています。お酒好きならぜひ試してみたい、奈良の日本酒をピックアップしました。

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奈良はお酒の神様に見守られる酒造りの根源

奈良はお酒の神様に見守られる酒造りの根源

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奈良は日本を代表する古都であり、「奈良流は酒造り諸流の根源なり」ともいわれているように、古代から酒造りが行われてきた地でもあります。

もともと日本の酒造りは「神事」と深い関わりがあり、奈良に限らず、日本各地で酒造りの神様がまつられています。なかでも、奈良県桜井市の三輪に建立する大神神社(おおみわじんじゃ)がまつる「大物主大神(オオモノヌシノカミ)」は、全国の酒造家の信仰を集める存在です。じつに神話の時代から、奈良と酒とは切っても切れない関係にあることがわかります。

その後、平安時代になると、酒造りの担い手が朝廷から寺院へと移っていきます。お寺で酒造りと聞くと違和感があるかもしれませんが、やはり神事の延長として、仏様に献上する酒として造られ、「僧坊酒」と呼ばれていました。
当時、奈良には大きな寺院が集中しており、あちこちで活発に酒造りが行われるようになりました。なかでも、菩提山町にある正暦寺では、現在に通じる近代的な酒造り技術が築かれており、「日本清酒発祥之地」の碑が残されています。

奈良名物「奈良漬」は日本酒の文化が生み出した

奈良名物「奈良漬」は日本酒の文化が生み出した

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奈良の伝統食品「奈良漬」は、瓜やキュウリなどを塩漬けにしてから酒粕に漬け込んだもの。酒粕が使われていることからもわかるように、日本酒と深く関係しています。

奈良漬の起源については、奈良時代に生まれたためとする説や、奈良県で考案されたためとする説など、さまざまな説があります。ともあれ、現在も食べられている奈良漬の基礎を形成したのは、やはり菩提山正暦寺だったとされています。

それ以前の奈良漬は、酒粕ではなく「どぶろく」の下に沈んだもろみに材料を漬け込んでいました。しかし、日本酒造りの先進地だった奈良で酒粕に漬ける文化が広まると、高級品として貴族から珍重されることになります。庶民に広く親しまれるようになるのは、江戸時代に入ってからでした。

奈良漬は短くて3年、長ければ十数年、添加物などは加えずじっくり熟成させることから、酒粕自体の品質が問われることはいうまでもありません。日本酒文化が発展していたからこそ、おいしい奈良漬の名産地となりえたのでしょう。

奈良の人気銘柄

奈良の人気銘柄

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奈良から発信される日本酒は、個性豊かなものばかり。しかし、いずれも「発祥の地」としての深い歴史を感じさせる点で共通しています。その一部を紹介しましょう。

自然発酵由来のほのかな炭酸をたのしめる【風の森(かぜのもり)】

「風の森」というさわやかな名をもつ日本酒を醸すのは、享保4年(1719年)創業の老舗、油長(ゆちょう)酒造です。古くから受け継がれてきた醸造技術を礎に、それを発展させた酒造りを行ってきました。
「風の森」は、栓を抜いた直後は、もろみの発酵が生む炭酸ガスが残ったままのフレッシュな発泡感が味わえます。これは「風の森」がろ過や加熱殺菌などを行ってない「生酒」である証拠。開栓して時間が経つと、今度は日本酒本来のうま味をたのしめます。炭酸ガスはあくまで副産物とはいえ、1本で2度おいしい特別感のあるお酒です。

製造元:油長酒造株式会社
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葛城山の伏流水を使用し酒米にこだわり醸される【篠峯(しのみね)】

明治6年(1873年)に創業した千代酒造は、奈良盆地の南西に位置する小さな蔵。そこで手間暇かけて造られる日本酒の代表銘柄が「篠峯」。特約酒販店のみで販売される限定品です。銘柄の由来は、蔵のすぐそばにそびえる葛城山の別名で、千代酒造の仕込み水はすべて、この葛城山からくみ出した伏流水を用いています。
「篠峯」のラインナップは季節によって味わいを変えるもの、長期間熟成したもの、燗にすることで真のおいしさを発揮するものなど多種多様。「酒蔵だけで完結しない、変化をたのしめる酒」をめざす千代酒造の姿勢が表れています。
原料米ごとの異なる味わいを届けられるよう、自家栽培の「山田錦」のほか、契約農家の「山田錦」「雄町」を採用。どれもあと味が軽快で、料理にもよく合います。

製造元:千代酒造株式会社
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伝統を守りながらグローバルな展開を見据える【梅乃宿(うめのやど)】

明治26年(1893年)創業の蔵元、梅乃宿酒造がめざすのは、枠組みにとらわれず、誰もがおいしく飲める新しい酒を造ること。奈良に伝わる伝統的な日本酒文化を踏襲しつつ、既成概念をくつがえすような酒造りへの挑戦を続けており、2002年のアメリカ進出を機に、その名は世界中に広まりつつあります。
彩り豊かなラインナップのなかでも、代表的な銘柄が蔵元の名を冠した「梅乃宿」です。「梅乃宿 本醸造」は、燗にすることで米の旨味が映える定番商品。香りや味わいのバランスがよく、料理が進みます。特別な日に開けたい「梅乃宿 純米大吟醸 葛城」はモンドセレクションにおいて何度も最高金賞を獲得した逸品。雑味のない澄んだ甘味とほどよい辛さ、繊細な余韻があとを引きます。

製造元:梅乃宿酒造株式会社
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味、コク、香りに優れた辛口のお酒【春鹿(はるしか)】

「春鹿」を造るのは、福智院町に蔵をかまえる明治17年(1884年)創業の老舗、今西清兵衛商店。趣を感じさせる蔵構えは、町の名所にもなっています。創業当初から「本物の日本酒」を突きつめ、代表銘柄である「春鹿」は、今や日本にとどまらず、世界で愛される銘柄となりました。
その酒名は地元・奈良の世界遺産「春日大社」と、この地の神獣「鹿」から名づけられたものです。代表酒「春鹿 純米 超辛口」は、ぜひ魚介類と一緒にたのしんでみてください。冷やでは軽やかに、燗にしてきりりとうまい、コクと香りの引き立つ日本酒です。

製造元:株式会社今西清兵衛商店
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天の神が遣わした道案内役の鳥の名を冠する【やたがらす】

「やたがらす」を造るのは、桜の名所として知られる吉野の地で、明治元年(1868年)に創業した老舗、北岡本店。この地で代々、手形商や醤油造りを営んできた北岡家の7代目当主が、多岐におよんでいた事業を酒造りへ一本化させたことが起こりです。
この北野本店の代表銘柄が、ずっしりとした飲み心地がくせになると評判の「やたがらす」。「やたがらす(八咫烏)」とは、神武天皇が熊野から大和へと向かう途中で迷った際、神が道案内役として遣わしたとされる鳥のこと。サッカー日本代表のエンブレムとしても知られています。この瑞鳥の名を冠した「やたがらす」は、神話のごとく、幸福への道案内となる日本酒として親しまれています。

製造元:株式会社北岡本店
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奈良のそのほかの注目銘柄

奈良のそのほかの注目銘柄

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奈良の地酒は上記であげたものにとどまりません。酒好きなら一度は味わいたい、そのほかの日本酒をまとめてみました。

既存の分類にとらわれず独自のカテゴリーをそろえる【花巴(はなともえ)】

大正元年(1912年)創業の蔵元、美吉野醸造は吉野川をのぞむ風光明媚な地に蔵をかまえています。ここで醸される代表銘柄が、吉野山に咲き誇るヤマザクラから命名された「花巴」。その名のとおり、花のように華やかな酒です。
「花巴」のラインナップは、精米歩合や原料米による一般的な分類でなく、食中酒としてたのしめる定番「花巴正宗」、旨味と香りの調和がとれた“中取り”だけを抽出した最高級品「花巴正宗 万葉の華」など、商品ごとの質やコンセプトを大切にした分類となっています。

製造元:美吉野醸造株式会社
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低温貯蔵と変化しにくい酒質がこだわり【百楽門(ひゃくらくもん)】

「百楽門」を醸す蔵元、葛城酒造の創業は明治20年(1887年)。日本酒発祥の地とされる正暦寺からもち帰った酵母と、室町時代に誕生した「菩提もと製法」をアレンジした独自の仕込みで、古都・奈良ならではの日本酒を追求してきました。
この蔵に特徴的なのが、酒米「備前雄町」の旨味を最大限に活かすための保存環境。高い冷却機能を備えたサーマルタンクにより、発酵を細かくコントロールしています。こうしてできた「百楽門」は温度変化に強く、酒質が変わりにくいのが魅力です。

製造元:葛城酒造株式会社
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山廃仕込みにこだわりインパクトのある味わいをもつ【大倉(おおくら)】

明治29年(1896年)の創業以来、伝統的な「山廃仕込み」にこだわった酒造りを続けてきた大倉本家。昭和初期から奈良県神社庁の委託を受け、神に捧げる「御神酒」造りも担ってきた、奈良を代表する蔵元のひとつです。
地元に根づいた酒造りで親しまれてきた大倉本家ですが、2000年に一度は休造。その後、紆余曲折もありつつ「大倉」を看板ブランドに掲げる形で、復活を遂げました。その個性ある味わいは、今や県内にとどまらず全国で愛されています。

製造元:株式会社大倉本家
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厳しい寒さで育った米が原料の数量限定品【両白(もろはく)】

明治5年(1872年)創業の西田酒造が蔵をかまえる都祁(つげ)は、奈良県有数の米の産地であり、最大の寒冷地。古くから酒造りに適した土地として知られており、『日本書紀』にもこの地の酒が登場するほどです。
奈良では、昔から「麹米」と、醪(もろみ)にする「掛け米」の両方を精白して造った日本酒を「もろはく」と呼んでいました。西田酒造の「両白」もまた、同様の手法で都祁の米をていねいに仕込んだもの。豊かに広がる米の旨味が、飲む人をとりこにします。毎年の数量は限られているため、早めにチェックしてみてください。

製造元:西田酒造株式会社

キレのある味を併設カフェで気軽に味わえる【初霞(はつがすみ)】

江戸元禄時代から続く老舗蔵、久保本家酒造の酒造りは、一切の妥協を許しません。一つひとつの作業をまっとうに行うことこそ、真においしい日本酒を完成させるカギと捉えるからです。
その代表銘柄である「初霞」は、雑味がなくなるまで、しっかりともろみを発酵させた、まさに究極の辛口酒。全国各地の特約店を通じて購入できるほか、歴史を感じさせる蔵を改装した「酒蔵カフェ」で、お茶やスイーツともに気軽にたのしむことも可能です。

製造元:株式会社久保本家酒造
公式サイトはこちら

これらのほかにも、三輪の蔵元・今西酒造が醸す「みむろ杉」など、地酒ファンの注目を集める奈良の銘柄は、枚挙にいとまがないほどです。

奈良は「日本清酒発祥之地」だけあって、今も多くの蔵元が互いに切磋琢磨しています。歴史を踏襲したもの、独自の醸造法を用いたもの、原料に特徴をもつものなど、酒のラインナップもさまざま。ぜひ好みの1本を見つけてみてください。

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