岩手の日本酒(地酒)【赤武(あかぶ)】震災からの“復興の酒”として注目の酒
「赤武 AKABU(あかぶ)」は2011年3月11日に東北地方を襲った東日本大震災からの“復興の象徴”としても知られる日本酒です。震災による壊滅的な打撃から立ち上がった老舗蔵で、若い杜氏の情熱が生み出した次世代の酒、赤武の魅力を紹介します。
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赤武は震災を乗り越えて生まれた復活の酒
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赤武酒造は、岩手県大槌町において明治29年(1896年)に創業した蔵元です。古くから「浜娘」という銘柄で地域の人々から親しまれてきた赤武酒造を、思いがけない悲劇が襲いました。いまだ記憶に生々しい、2011年3月11日の東日本大震災です。
壊滅的な打撃を受け、もはや酒蔵としては再起不能と思われた赤武酒造でしたが、そこから東北人ならではの粘り強さが発揮されます。「地域に愛されてきた酒造りを絶やしてはならない」と、県内各地の蔵元を訪ねて交渉を続けた結果、盛岡市の蔵元の設備を借りて「浜娘」の製造を再開したのです。
その後、震災復興プロジェクトの支援もあって、2013年夏には盛岡市内に新たな酒蔵が完成。「復活蔵」と名づけられたこの蔵で、復興への思いを込めて新たに生み出されたのが、やがて“復興の酒”とも呼ばれることになる「赤武 AKABU」だったのです。
赤武とともに歩む最年少杜氏
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赤武酒造の復活は、5代目当主である古舘秀峰氏が、地域の人々や取引先からの支援を得ながら、粘り強く成し遂げたものでした。しかし、新たな看板となる銘柄を生み出すには、培ってきた伝統に加えて、若い力が必要です。その原動力となったのが秀峰氏の長男、古舘龍之介氏でした。
震災から3年を経た2014年、東京農業大学を卒業して地元に戻った龍之介氏は、弱冠22歳にして杜氏の重責を担うことになります。学生時代には「全国きき酒選手権」で東京農業大学を優勝に導いた実績をもち、卒業後は短期間ながらも酒類総合研究所で研修を受けた経験があるとはいえ、これは異例の抜擢といえるでしょう。
思い切った起用の背景には、懇意にしている酒屋さんからの忠告があったといいます。「今は復興支援の機運が盛り上がっているが、長い目で見れば、もっと個性ある酒を造るべきでは?」 そこで秀峰氏は、「浜娘」に続く新たな銘柄造りを、次代を担う龍之介氏に託したのです。
史上最年少の杜氏となった龍之介氏は、この期待に応えるべく、それまでの赤武酒造にはなかった、フルーティでミネラル感あふれる日本酒を生み出します。赤武酒造の名前を取って「赤武 AKABU」と名づけられたこの酒が、若き杜氏とともに、年を追うごとに目覚ましい成長を遂げていくのです。
赤武は若い力で醸すパワフルな酒
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「赤武 AKABU」が誕生した当初、周囲の反応は、かならずしも「満点」ではありませんでした。龍之介氏自身は「50点」と評していましたが、それでも首都圏も含めて15店もの酒販店で取り扱いが決まりました。
1年目の酒造りで明確になった課題をクリアしようと懸命の努力を続けた結果、2年目の「赤武 AKABU」は目に見えて進化。周囲の評価も高く、取扱店も倍以上に増えました。
その後も、造るたびにクオリティは高まり、さまざまな挑戦の成果が赤武のラインアップを充実させていったのです。
赤武ブランドの立ち上げから3年目を迎えた2016年には、日本一おいしい市販酒を決めるきき酒イベント「SAKE COMPETITION」において「赤武 純米吟醸酒」が純米吟醸酒部門でGOLD賞を獲得。これを皮切りに、赤武は数々の日本酒品評会で華々しい受賞歴を積み重ねます。2018年には岩手県新酒鑑評会において岩手県知事賞に輝くなど、まさに岩手県を代表する人気の日本酒へと成長しています。
「赤武 AKABU」は震災からの復興の象徴として全国的な注目を集めていますが、蔵元では「悲しいお酒というイメージから脱却し、笑顔で飲んでいただけるお酒をめざす」と、すでに次なる目標へ向かっています。その挑戦の成果を見守っていきたいものです。
製造元:赤武酒造株式会社
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