名水に恵まれた土地で、米の自家栽培から始める日本酒蔵
日本酒は米、水、米麹を原料としたとてもシンプルな原料のお酒です。どんな米や仕込み水を使うのか、また、杜氏仕込みのこだわりがダイレクトに味わいに変化をもたらします。
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米の栽培まで手掛ける蔵元とは?
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シンプルな原料で仕込む日本酒は、酒蔵の原料選びのこだわりも相当なもの。たとえば水。日本酒の成分の約80%が水なので、どの酒蔵でも自分たちの仕込み水を大切にしています。酒蔵が天然の湧き水や伏流水など名水に恵まれた土地にあるのも納得がいきます。
酒造好適米も厳選した契約農家から仕入れる蔵元があるなか、最近は米の栽培までしている酒蔵もあります。米の栽培から醸造まで一貫して行っているこだわりの酒蔵を紹介します。
水戸部酒造/山形県
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1898年創業の山形県の水戸部酒造は、2004年から蔵のある天童市で酒造好適米の山田錦を自家栽培している酒蔵です。始めは、540坪の小さなスペースからスタートし、2020年には36,000坪まで拡大しています。
この酒蔵の目標はシンプルに「おいしいお酒を造る」こと。そのために、品質の高い米を自分たちの手で造ることを選んだそうです。品質を第一に考え収穫量にはこだわらない、病害虫の発生などがあったときのみ必要最低限の農薬を使うといった米栽培にも方針があります。すべての銘柄に使うほど収穫量が多くはありませんが、一部の日本酒には自家田の米が使われています。「山形正宗 純米吟醸 稲造」がそれ。兵庫県産と自家栽培した山田錦を使っています。
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丸本酒造/岡山県
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140年余岡山で酒造りを行ってきた丸本酒造。地元の水と米で流行に左右されない日本酒を造ることをモットーに醸造を行っています。そのため、お米は酒造好適米の山田錦を自家栽培。全量を自家栽培する「農産酒蔵」を目指しているそうです。自家栽培は1987年から開始。2003年には国の構造改革の一環として、栽培エリアの鴨方町が全国で初めて酒米農業特区に認定されています。
また、有機栽培による米作りにも取り組み、2007年には有機JAS認定を受けています。
自家栽培の米を使った銘柄が「竹林」。仕込み水は、銘柄の名前の由来にもなった竹林寺山から流れる伏流水を使用しています。有機JAS認定を受けた米で造る「オーガニック竹林」は軽くしっとりした香りのある後味のスッキリした純米吟醸酒。酒蔵の米への愛情がギュッと詰まった、米の力強い味が感じられるキレのよい1本です。
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ワインの世界では多くのワイナリーで原料ブドウの自家栽培が行われています。日本酒にも原料から自家栽培する酒蔵が増えていくのでしょうか。これから注目です。