酒粕(さけかす)に含まれる栄養素は盛りだくさん! 期待できる効果や効能は?

酒粕(さけかす)に含まれる栄養素は盛りだくさん! 期待できる効果や効能は?
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酒粕とは、もろみ(醪)を搾る工程で生まれる日本酒造りの副産物で、栄養素を豊富に含む食品です。今回は、酒粕の概要、肌や髪の毛などによい効果が期待されている酒粕の成分、酒粕甘酒など酒粕を使った飲み物や料理、酒粕の種類、酒粕の保存方法などを紹介します。

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まずは酒粕の概要からみていきましょう。

酒粕は日本酒造りで生まれる栄養たっぷりの副産物

酒粕の概要

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酒粕とは、もろみを搾る「上槽(じょうそう)」の工程で生まれる、日本酒造りの副産物のこと。搾って出てきた液体が日本酒、残った固形物が酒粕です。

酒粕には8パーセントほどのアルコール分が残っているほか、日本酒の原料である米や麹(こうじ)、酵母に由来するタンパク質やビタミン類、食物繊維や酵素など、体によいとされる栄養素がたっぷり含まれています。

風味や香りは、原料や造り方によって異なりますが、旨味があるため、酒粕甘酒や粕汁、粕漬けなど、飲用や食用で重宝されています。

また、粕取り焼酎の原料をはじめ、畜産の飼料に使用されたり、化粧品に配合されたり、酒粕はさまざまな用途で用いられています。

なお、酒粕を使った粕取り焼酎の魅力や製造方法については、以下の記事で詳しく説明しています。

酒粕にはどんな栄養素が含まれている? 肌や髪の毛に効果が期待できる成分も!?

肌や髪の毛などにも効果が期待できる酒粕に含まれる栄養素

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酒粕に含まれている、美容や健康にかかわる成分を紹介します。

美白作用の可能性があるさまざまな成分

酒粕からは、美白作用の可能性があるとされる、L-システインやトリアシルグリセロール、フェルラ酸、グルタチオンといった成分が抽出されています。

これらはいずれも、シミやソバカスのもとのメラニン色素を生成する、チロシナーゼという成分の活性を阻害するとされています。

参考文献
『日本香粧品学会誌』Vol.45 No.2(2021年)P93–96「酒粕抽出液のチロシナーゼ活性阻害効果」高岡素子、久芳萌水、齋藤麻友、杉本若菜、本野由季

酒粕に含まれる美白作用の可能性があるさまざまな成分

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育毛剤にも使用されている「アデノシン」

酒粕には、髪の毛への作用が期待される成分、アデノシンも含まれています。

アデノシンは、発毛や毛の成長の促進、さらには血行の促進といった効果が報告されている、育毛の医薬部外品有効成分のひとつで、市販されている育毛剤にも使用されています。

参考文献
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

酒粕にも含まれる髪の毛に作用するとされるアデノシン

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肥満抑制効果などが期待されるタンパク質「レジスタントプロテイン」

レジスタントプロテインは、胃で消化されにくく腸まで届いて腸内環境の改善に一役買うとされる軟消化性のタンパク質で、日本酒の原料である米などにも含まれています。

成分が濃縮されている酒粕には、米よりも多くのレジスタントプロテインが含まれていて、健康や美容に関するさまざまな効果が期待されています。

酒粕を50グラム使って酒粕甘酒を造り、3週間毎日飲み続けてもらう試験では、増えすぎると動脈硬化を起こすとされるLDLコレステロール値の低下や、排便回数や排便量の増加などがみられ、レジスタントプロテインの含有量をさらに高めた酒粕発酵物を使った実験では、高い油吸着効果がみられるなど、肥満の抑制効果を示唆する結果も出ています。

参考文献
『日本醸造協会誌』107巻 5号(2012年)P282-291「健康と美容に貢献する『酒粕』の成分」渡辺敏郎

酒粕に含まれる肥満抑制効果などが期待されるレジスタントプロテイン

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造血のビタミン「葉酸」

葉酸(ようさん)は、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンです。体の発育に欠かせない栄養素で、ビタミンB12とともに赤血球の生産も助けるため、「造血のビタミン」と呼ばれています。

酒粕には葉酸が豊富に含まれています。含有量は酒粕ごとにまちまちですが、なかには葉酸が多いことで知られるホウレンソウの約2.5倍もの量が含まれる酒粕もあるようです。

参考文献
公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「葉酸の働きと1日の摂取量」

酒粕に含まれる造血のビタミン葉酸

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気分の改善などの効果が期待されている「S-アデノシルメチオニン(SAM/SAMe)」

S-アデノシルメチオニンは、体内に存在する化学物質のひとつ。決定的なエビデンスは得られていないものの、研究は進められていて、気分改善作用や抗肝障害作用、抗関節炎作用などがある可能性が示されています。

SAMeは一般的な食品には含まれていないといわれていますが、酒粕には含まれています。含有量は酒粕ごとに異なるものの、なかには機能性を示してもおかしくない量のSAMeが含まれているものもあります。

なお、すでにドイツやロシアなどでは処方薬として、カナダや米国などではサプリメントとして活用されているSAMeですが、長期の使用や妊娠中の使用についての安全性は結論に至っておらず、双極性障害やHIV陽性などの免疫不全の人は安全ではない可能性もあるので、該当する場合には気をつけましょう。

参考文献
厚生労働省eJIM(「統合医療」情報発信サイト):海外の情報/S-アデノシルメチオニン(SAMe)
『生物工学会誌』97巻10号(2019年)P595-598「発酵食品『酒粕』による老化抑制および脳機能活性化の検討」藤井力、伊豆英恵、松原主典

酒粕はどういう料理に使えるの? 手軽に作れる「酒粕甘酒」がおすすめ!

酒粕を使用する酒粕甘酒

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栄養たっぷりの酒粕を、日々の生活においしく取り入れましょう。

栄養たっぷりの「酒粕甘酒」を飲もう!

甘酒には麹を使った「麹甘酒」と、酒粕を使った「酒粕甘酒」の2種類があります。どちらも栄養たっぷりで、麹甘酒は砂糖を加えないノンアルコール飲料、酒粕甘酒は砂糖を加えて作り、アルコールが多少含まれているという特徴があります。

ここでは、自宅でも作りやすい酒粕甘酒のレシピの一例をみていきましょう。

◆材料(2人分)
酒粕:100グラム
水:400グラム
砂糖:30グラム

上記の分量で作ると、比較的とろりとした仕上がりになります。さらりとしたほうがよい場合には、水の分量を増やしましょう。また、甘味が濃いもののほうがよい場合には、砂糖を増やしてみてください。

◆作り方
1. 鍋に水を少量入れて沸騰させ、火を止めます。
2. そこに、できるだけ細かくちぎった酒粕を入れ、酒粕がやわらかくなるまで置きます。
3. 酒粕がやわらかくなったら残りの水を鍋に入れて火にかけ、すりこぎなどで酒粕を潰しながら溶かします。
4. アルコール分を飛ばすため、焦げつかないように混ぜながら、しばらく沸騰させて完成です。

お好みで、おろしショウガを入れるのもよいでしょう。また、塩をひとつまみ入れると甘味が引き立ちます。いろいろ試してみてくださいね。

なお、酒粕甘酒には多少のアルコールが含まれています。子どもや妊娠中の人、車やオートバイ、自転車などを運転する人、お酒を禁じられている人やお酒が苦手な人は飲まないようにしましょう。

酒粕甘酒を使ったカクテルも美味。以下の記事では、麹甘酒を使うノンアルコールカクテルとともに、酒粕甘酒カクテルのレシピを紹介しています。

粕汁からスイーツまで酒粕を使った料理

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酒粕はごはんのおかずの粕汁や粕漬けはもちろん、スイーツにも使える

酒粕は、そのまま食べたり、焼いて食べたり、甘酒にしたりといったシンプルな食べ方や飲み方ができる食品である一方、旨味やコクがあるため、食材としてもよく使われます。

定番の料理には、ダイコンやニンジンなどの根菜とこんにゃくや油揚げなどで作る粕汁や、魚や野菜などの食材を酒粕に漬けた粕漬けが挙げられます。

塩漬けした野菜などを酒粕に何度も漬け込む奈良漬けや、ワサビの葉や茎、根を細かく刻んで酒粕に漬けたわさび漬けも、昔からあるポピュラーな酒粕料理といえるでしょう。

また、魚・鶏肉・豚肉・野菜のいずれの具材でもたのしめ、味噌や豆乳などと合わせてもおいしい酒粕鍋も手軽でおすすめです。

このほか、ポテトサラダや卵焼きに入れたり、ケーキやプリンといったスイーツに使用したり、鶏の唐揚げなどの下味で使ったりと、幅広い用途があり、さまざまな料理の味を引き立てることができるのも酒粕の魅力といえます。

日本酒造りから生まれる酒粕は、日本酒とのマリアージュがたのしめる食品・食材です。いろいろなタイプの日本酒と合わせてみましょう。極上の組み合わせが見つかるはずです。

なお、酒粕を使って料理を作る際には、アルコール分が含まれていることを忘れずに。食べる人のなかにお酒が飲めない人がいる場合には、しっかり熱を入れてアルコール分を飛ばしましょう。

酒粕には種類があるの?

酒粕の種類

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酒粕にはいくつか種類があります。まずは形状の違いや熟成の有無からみていきましょう。

◆板粕
もろみを搾る際に板状となって残った酒粕そのままを商品にした、平たい形の酒粕。溶けにくいため、水に浸ける時間を長くしたり、事前にペースト状にしたりして使います。また、板粕は好きな大きさに切って、そのまま焼いて食べることができます。

◆バラ粕
板粕が、バラバラに崩れような見た目をしています。使用時に細かくちぎる手間が省けます。

◆練り粕
やわらかいペースト状に加工した酒粕。なめらかで溶けやすく、魚や野菜を漬け込んだり、調味料として使ったりするときに重宝します。

◆踏込粕(踏み込み粕/土用粕/押し粕)
踏み込んで空気を抜いて熟成させた酒粕。コクや甘味が増していて、奈良漬けなど、おもに漬物用として使われます。

また、日本酒の原料や製法によって酒粕の風味も違ってきます。大まかな特徴としては、吟醸酒系の酒粕は華やかな香りがあり、お菓子作りなどに向いているのに対し、そのほかの酒粕は、香りが穏やかな傾向があり、料理に使うときにおすすめです。

用途や好みに応じて選んでみてくださいね。

酒粕はどうやって保存するの?

酒粕の保存方法

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開封前の酒粕は、直射日光が当たらない涼しいところであれば、常温でも3カ月ほど保管できるとされています。

しかし、常温下では熟成する速度が速くなるため、風味が損なわれやすく、減少してしまう栄養素もあります。可能であれば冷蔵、または冷凍での保管・保存がおすすめです。開封後のものはとくに、冷凍で保存するほうがよいでしょう。

冷蔵・冷凍保存のポイントは以下のとおりです。

◆冷蔵保存
開封後のものは、ファスナーつきの保存袋に入れて保存するのがおすすめです。できるだけ空気を抜くことで、保存性がより高まりますが、ゆっくりでも熟成は進むため、なるべく早めに使い切りましょう。

◆冷凍保存
水分が飛ばないよう、小分けしてラップで包んだうえで、ファスナーつきの保存袋などに入れて密閉して保存します。

使用する際には、冷蔵庫または常温で自然解凍させ、やわらかくなってから使います。このとき、少量の日本酒に浸すとパサつかず風味も増して、よりおいしく食べられます。急ぎの場合には、保存していた袋の上から流水を当てて解凍するのがよいでしょう。

なお、冷凍した酒粕の保存期間の目安は1年ほどとなります。

さまざまな効果が期待される栄養分豊富な酒粕は、おいしく使い勝手のよい食材でもあります。日本酒との相性も抜群。おいしく食べて飲んで、体にも心にも栄養を届けましょう。

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