濃醇かつ辛口の味わい深い日本酒である「生酛」を知る
- 更新日:
昔ながらの手間をかけた生酛造り
生酛(きもと)とは、江戸時代に確立された伝統的な育成方法による酒母のこと。米や米麹をすりつぶし、溶かしながら、天然の乳酸菌を発生させたもので、アルコール発酵を行う酵母を育む、まさに酒の母のような存在です。
乳酸は有害菌を抑えて酵母を増やす働きをしてくれます。この米をすりつぶす作業は「山卸し」と呼ばれ、職人泣かせの重労働です。
生酛で育まれた酵母は、さまざまな微生物が関与することでより強靭な細胞膜を持ち、高温(30度以上)状態での生存率が高く、発酵が進んで高アルコール度数になっても死滅しません。よって仕込みの末期まで旺盛に発酵を行うため、濃醇かつキレのよい日本酒を生み出すとされています。
日本酒造りに欠かせない酒母とは?
酒母とは、力強い発酵を促すためのスターターの役割を担っています。米と米麹をすりつぶして、溶かし、その中でアルコール発酵に必要な酵母菌を育てたものを指します。酒母は非常に強い酸性なので、酸性に強い清酒酵母はそのままに、そのほかの雑菌の発生を防ぐ役割もあります。酒母の造り方は2通りあり、生酛系と速醸系に分けられます。昔ながらの生酛系は、自然界に存在する乳酸菌を取り込んで育てるため、完成まで約1カ月と非常に手間がかかります。速醸系は明治以降に確立した方法で、酵母を入れるのと同時に液体の乳酸を添加して育てる方法です。速醸系の酒母は約2週間で完成します。
bonchan / Shutterstock.com
生酛系と速醸系で味わいはどう違う?
明治末期に確立された速醸系の手法により、日本酒造りの労力は大幅に軽減され、現在販売されている9割の日本酒はこの方法を採用しています。では、大変な手間をかける生酛系と効率のよい速醸系で味わいはどのように違うのでしょうか。
一般的には、生酛系の酵母はさまざまな微生物の影響を受けているため強健だと言われ、高アルコール度数の中でも死滅しないため、生酛系の日本酒は濃醇かつ辛口の味わい深い酒が多いとされています。対して速醸系の日本酒は、香りが立ちやすく、軽くキレイなさっぱりとした味わいに仕上がるとされています。また生酛系の酒は、燗映え(お燗にしておいしいこと)するものが多いです。
生酛のお酒で燗をつけてくれるお店はきっと日本酒を愛しているお店です。合わせて覚えておきましょう。
jazz3311 / Shutterstock.com