ウイスキーの味わいの決め手は水質の違い?
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ウイスキー造りで必要な水の種類
ウイスキーのおもな原料は穀物、水、酵母といたってシンプル。そのため、それぞれの原料の違いが味わいを大きく左右します。
中でも、製造工程の様々な場面で大量に使われる水は「仕込み水」と呼ばれ、非常に重要な要素です。日本酒の場合も名水のある場所で作られていますが、ウイスキーもまさに同じ。
たとえば、日本初の蒸溜所である山崎蒸溜所のある場所は、千利休が茶室を開いたほど水質が良い地域として知られています。また、山梨・白州蒸溜所のある場所には日本の名水100選に選ばれた尾白川が流れ、南アルプスの花崗岩層から湧き出る天然水が得られる土地。このように、豊富できれいな天然水に恵まれた場所に蒸溜所は作られているのです。
ウイスキーづくりで水が使われるおもな場面は4つあり、一つめは、原料の大麦を発芽させるために浸水させる「浸麦」。二つめに重要な場面が、穀物のタンパク質を糖に変える「糖化」の場面。三つめは、蒸留されて気体になったアルコール成分を液体に戻す「冷却」。最後は、熟成を終えたばかりの高アルコール度のウイスキーに「加水」をする場面。それぞれに水が果たす役割も異なり、適した水の種類も異なります。
どんな水が最適か
ウイスキーづくりに使用される水は工程ごとに適した水が使われていますが、もっとも重要視されるのが天然水であることと、ミネラルバランスです。とくにミネラルバランスは大麦の発芽や発酵速度にも影響するため、非常に重要です。
たとえば「浸麦」の場面では酵素の働きを助けるミネラル分をとくに多く含んだ水を使用。また、「糖化」の場面では発酵を促すため、酵母の栄養となるカルシウム濃度が高い水を使用します。
一方、「加水」はそれまで使用される水とは異なり、一般的にクセのない中性の水を使用します。これは、水に含まれるミネラルによってウイスキーの色が濁らないようにするためです。
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水の硬度にもこだわる
軟水・硬水という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分の量によって分けられている水の種類。硬度60までが軟水、硬度120までが中軟水、硬度180までが硬水とされています。
水質は日本が軟水、ヨーロッパやアメリカは硬水が主流なので、必然的にジャパニーズウイスキーは軟水仕込み、欧米のウイスキーは硬水仕込みとなっていますが、スコッチウイスキーには軟水仕込みのものも含まれます。
水質の違いはウイスキーの味わいにも関係していて、一般的には軟水仕込みは軽くまろやか、硬水仕込みは個性的でクセが強くなるといわれています。日本の場合、山崎蒸溜所の水は硬度94程度と中軟水。日本の水の中ではミネラル分の多い水であり、複雑な風味や重厚感がでやすいといわれています。また、白州蒸溜所の水は硬度30程度。日本らしい軟らかい水は、軽快でなめらかな味わいが特徴といわれています。同じ日本で作られているものでも、水の硬度だけで大きな違いが出るのです。
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