樽の違いはウイスキーの色や味をも変える! 奥深い熟成樽の世界
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熟成樽選びもおいしいウイスキーへの鍵
ウイスキーは蒸留したての頃から、深みのある味わいや美しい琥珀色を持っているわけではありません。蒸留したての蒸留液をニューポットといいますが、無力透明で刺激の強い荒々しい味。これを木製の樽で熟成することで、味も香りも酒色も変化していきます。製造工程の中で9割ほどを樽熟成に充てるウイスキーにとって、樽はとても重要な要素です。
熟成樽は、材質、サイズはもちろん、過去に何に使われていたかも異なります。
材質は、おもに耐久性や強度が優れているホワイトオーク材。また、風味を移す目的で別の酒を貯蔵した樽を使うこともあります。
ウイスキー樽の一生
たとえば、一度使った樽の利用が禁止されているバーボンに対して、スコッチは新樽をあまり使いません。ウイスキーの種類によって、異なる樽の使われ方。熟成に必要不可欠な樽は、いったいどのくらいの期間、使われるのでしょうか?
一般的にウイスキー樽の寿命は60~70年といわれています。たとえば内面を焼いて表面が消し炭状態になった新樽に、バーボンを入れてまず5~6年貯蔵、さらに、これを空にした樽にウイスキーを貯蔵して10~15年、これを空けた樽に三たび新しいウイスキーを貯蔵して10~15年。
この繰り返しを40年以上経てオーク材の成分が出尽くした頃に、もう一度樽の内側を焼いて活性化させ、さらに2~3回使っていきます。
多くのウイスキーに樽の成分が出尽くしたときに、樽はその一生を終えるのです。
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樽貯蔵による味や色の違い
貯蔵期間も、ウイスキーの味わいや酒色に影響を及ぼしますが、樽の違いも味わいを形成する大事な要因です。
たとえば、以前ほかの酒の貯蔵に使われていた樽で熟成した場合、その酒の味や香りが樽に浸みこみます。シェリー樽なら甘い香りに、バーボン樽ならはちみつやバニラのような風味になります。ほかにラム酒やワインの樽などが使われます。
また、樽材の産地も大きく影響します。アメリカ産のオーク材を使った樽なら黄色がかった褐色に、ヨーロッパ産のオーク材を使った樽なら赤みが強い色合いのウイスキーになります。
樽の内側をバーナーで焼いた活性樽での貯蔵は、香りや風味が樽からの影響が少なく、ゆっくり熟成します。長期熟成させるとバニラやカシスを思わせる甘くフルーティな香りが加わります。
逆にすべて新材で造られた新樽貯蔵の場合は、樽材からの抽出が豊富なので、比較的早く熟成します。また、樽に詰められた原酒の影響が出やすいのも特徴。ほかの樽に比べ熟成された後も、色は薄めでしっかりとした木の香りがありスッキリした飲み口となります。
原料や蒸留所の場所だけでなく、貯蔵樽によって味や香りが異なるウイスキー。いろいろな要素の詰まったウイスキーをゆっくり味わいたいですね。
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