煎り酒は日本古来のノンオイル万能調味料! レシピや使い方、気になるアルコール度数なども紹介

煎り酒は日本古来のノンオイル万能調味料! レシピや使い方、気になるアルコール度数なども紹介
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煎り酒とは、お酒とカツオ節、梅干しをおもな材料とする複合調味料のこと。今から600年以上前の室町時代にも使われていたと考えられています。今回は、煎り酒の概要、アルコール度数、歴史、さまざまな使い方、伝統的な作り方やかんたんに作れるレシピを紹介します。

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煎り酒とは何か、概要からチェックしてきましょう。

煎り酒とは?

煎り酒の概要

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煎り酒の概要をみていきます。

煎り酒は日本古来のノンオイル万能調味料

煎り酒は、600年以上も昔の、室町時代にも使われていたと考えられている日本古来の調味料です。

煎り酒の読み方は「いりざけ」で、「煎酒」とも表記されます。

「煮詰める」という意味がある「煎(せん)ずる」と同じ「煎」の字が使われている煎り酒は、文字どおり、日本酒にカツオ節と梅干しなどを入れて煮詰めて作る複合調味料。用途が似ている醤油に比べるとほとんどのものが塩分控えめで、脂質を含みません。

日本酒とカツオ節の凝縮された旨味に、梅干しの塩味とさっぱりとした酸味が加わった味わいが特徴の煎り酒は、刺身をはじめ、さまざまな料理に使えるノンオイルの万能調味料なのです。

煎り酒のアルコール度数

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煎り酒のアルコール度数はどのくらい?

市販の煎り酒のアルコール度数は、記載がないもの、「微量」「1%前後」「7度」としているものなどまちまちです。

しかし「煎り酒」は、酒類ではなく調味料。「酒」とついているため誤解されがちですが、「煎り酒」という言葉には「酒を煮立て、アルコール分を飛ばしたもの」という意味もあり、市販の煎り酒もアルコール感がないものがほとんどです。

室町時代から受け継がれる煎り酒の歴史

煎り酒の歴史

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煎り酒が初めて登場する文献は、京都・吉田神社の神官の家柄である鈴鹿家の記録『鈴鹿家記(すずかかき)』。その応永6年(1399年)6月10日の献立記録のなかに、刺身やワサビなどともに「イリ酒」という言葉がみられます。

応永6年は、今から600年以上も昔の室町時代にあたり、煎り酒はそのころから、刺身につける調味料として使われていたと考えられています。

それからしばらくの間、文献に登場していなかった煎り酒は、江戸時代初期の代表的な料理書『料理物語』に再び登場します。

『料理物語』には、『鈴鹿家記』では記述がなかった煎り酒の作り方が記されています。また『鈴鹿家記』でコイだけだった魚名も、マナガツオ、コチ、サワラといった海の魚や、コイのほかフナやアユといった川の魚が挙げられていて、当時幅広く使われていたことがうかがえます。

煎り酒と同じく、江戸時代の料理書に刺身につける調味料として挙げられているのは醤油です。両者は並行して使われていましたが、江戸時代中期以降は、醤油のほうが普及し発展していきます。日持ちに難がある複合調味料の煎り酒に対して、醤油は発酵調味料で保存性が高く、大量生産にも向いていたからです。

しかし調味料として、醤油に負けず劣らず優れている煎り酒は、今日まで消滅することなく、料亭などで利用されて受け継がれてきました。

近年では、煎り酒が見直されるようになり、多くのメーカーがそれぞれ工夫を重ね、商品化しています。機会があれば、煎り酒の味わいをぜひ試してみてくださいね。

お刺身との相性抜群! 煎り酒の使い方は?

お刺身との相性抜群な煎り酒の使い方

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煎り酒は、醤油や麺つゆ、ポン酢の代わりに使うのが一般的です。

塩分が控えめで、日本酒とカツオ節の旨味と梅干しの酸味を特徴とする煎り酒の味わいは、素材の持ち味を活かす和食によく合います。

とくにお刺身、とりわけタイなど白身魚のお刺身との相性は抜群。そのほか、おひたしや冷ややっこ、卵かけごはんなどにかけたり、きんぴらなどの煮物の味つけに使ったりするのもおすすめです。

煎り酒の魅力といえば、日本酒の旨味とカツオ節の旨味、梅干しの酸味が合わさった複合調味料ならではの手軽さも挙げられます。調味料をあれこれと混ぜなくても、たとえば、ゆで卵を煎り酒に浸すだけで、出汁の風味がほどよくなじんだ煮卵ができあがります。

また、料理に和のテイストをもたらしたいときにも煎り酒はぴったり。オリーブオイルを加えれば和風ドレッシングにもなります。和風サラダや和風パスタなどを作る際にも煎り酒を使ってみてくださいね。

そのほか、魚や肉に下味をつけるときにも、煎り酒は重宝します。

このように使い方の幅が広いのも、煎り酒のおすすめポイントといえるでしょう。

煎り酒の作り方とは?かんたんレシピも紹介

煎り酒の作り方

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まずは、伝統的な作り方からみていきましょう。

煎り酒の伝統的な作り方

江戸時代初期の寛永20年(1643年)に出版された『料理物語』には、お酒2升、カツオ節1升、梅干し15~20個に、水と「溜り(たまり)」を少し入れ、1升ほどになるまで煎じたものを漉して使用するという、煎り酒の作り方が載っています。

ここで使われている「溜り」とは、味噌の製造工程で出る汁、あるいは溜まり醤油のこととみられます。

時代が下り、江戸時代中期の正徳4年(1714年)に出版された『当流節用料理大全』では、「溜り」ではなく醤油が使われるようになり、塩を入れて味を加減する、といった作り方になっています。

ここでは、酢を加えてもよいともあり、梅干しもカツオ節の魚くささを取り除くためのオプション扱いとなるなど、江戸時代初期の『料理物語』から変化がみられます。

また『当流節用料理大全』には、カツオ節の代わりに昆布を使う精進煎り酒レシピや、手早く作りたいときの早煎り酒レシピも掲載されています。早煎り酒レシピでは最初から酢が入れられるなど、かなりの簡略化もみられます。

煎り酒のかんたんレシピ

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煎り酒のかんたんレシピ

煎り酒は、家庭でも手軽に作れる調味料です。ここでは基本の煎り酒の作り方を紹介します。

<材料>
日本酒:360ミリリットル(2合)
梅干し:2個(塩と赤シソのみ、あるいは塩のみで漬けた塩分18パーセント程度以上の大きめのもの)
カツオ節:15グラム

<作り方>
1. 日本酒を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら梅干しを入れます。梅干しはお好みで、種を抜いたり、潰したり、抜いた種を入れたりしてもOKです。
2. 弱火にしてカツオ節を入れ、半分の量になるまで煮詰めます。
3.キッチンペーパーを敷いたザルにあけて漉(こ)したら完成です。

日本酒も梅干しもカツオ節も、添加物を使っていない風味のよいものを選びましょう。なかでも日本酒は、旨味成分のアミノ酸が多く含まれている純米酒を使うのがおすすめです。

また、昆布を使ったり、塩や醤油で味を調えたりするのもよいでしょう。昆布を使う場合には、5センチ程度のものを、ひと晩日本酒に浸しておくと旨味がよく出ます。

なお、女子栄養大学が行った実験で、日本酒などのアルコール度数は、10分加熱することで1度以下になることがわかっています。

自家製煎り酒を子どもやお酒が苦手な人などが使う場合には、10分間の加熱時間を取りましょう。それが難しい場合、あるいは体質的にアルコールを受けつけない人がいる場合には、自家製煎り酒の提供は避けるほうがよいかもしれません。

なお市販のものでも、アルコール分が含まれている煎り酒については、体質的にアルコールを受けつけない人や子どもへの提供は見合わせましょう。

(参考資料)
『家政学雑誌』Vol.34 No.6「加熱調理による酒類のアルコール含量の変化」p43-44

日本酒とカツオ節の旨味と梅干しの酸味がほどよく活きる煎り酒は、いろいろな素材や料理の味を引き立てる万能調味料。塩分控えめでノンオイルというヘルシーさも魅力です。市販のものだけでなく、家庭でも手軽に作れる煎り酒を使って、いつもとひと味違うおいしい食事をたのしんでみてくださいね。

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