フランスのワイン産地とそれぞれの特徴

フランスのワイン産地とそれぞれの特徴
出典 : Pincasso/ Shutterstock.com

フランスワインの特徴は産地によってさまざま。それぞれの産地が気候条件や隣接する国などの影響を受けつつ個性的なワインを生み出しています。今回はボルドー地方から「フランスの新世界」 と呼ばれるラングドック・ルーション地方までのワイン産地とその特徴を紹介します。

  • 更新日:

フランスのワイン産地

Plateresca/ Shutterstock.com

フランス国内のワインの産地は10の地方に大別できます。地方ごとに造られるワインの特徴を見て行きましょう。

ボルドー地方

フランス南西部にあるボルドー地方では、ワイン生産量の8割以上を赤ワインが占めています。なかでもメドック地区で造られる長期熟成型の赤ワインが有名です。

ボルドーでは数種類の品種のブドウをブレンドして造られ、その優雅な味わいは「ワインの女王」と呼ばれているほど。ボルドー産のワインは最初に口に含んだときの渋味が強いことが特徴です。さらに熟成すると渋味がまろやかになり香りの華やかさも増します。そのほか、いかり肩のワインボトルに入っていることも特徴的。

また、ボルドー地方でブドウ畑を所有して栽培から醸造、熟成、瓶詰までを一貫して行う生産者は「シャトー」と呼ばれ、とくに「ボルドーの5大シャトー」は、世界最高峰のワインの造り手として知られています。

ブルゴーニュ地方

フランス東部に位置するブルゴーニュ地方は、赤ワイン・白ワインのいずれにおいても名高い産地であり、「ワインの女王」と称されるボルドーに対し、「ワインの王」と呼ばれています。ブルゴーニュワインは単一品種のブドウから醸造されるのが大きな特徴です。ブルゴーニュの北部は、「ロマネ・コンティ」をはじめとする高級ワインで知られる一方、最南端のボージョレ地区は軽やかな味わいの新酒「ボージョレ・ヌーヴォー(ボジョレー・ヌーヴォー)」が有名です。

ブルゴーニュ地方には、自分の畑で栽培したブドウだけでワインを造る「ドメーヌ」と、農家からブドウまたはワインを買い上げ、醸造、熟成を行う「ネゴシアン」があります。ドメーヌは規模が小さい家族経営、ネゴシアンは大規模な企業であることが一般的です。また、ブルゴーニュ地方ではひとつの畑を複数の造り手が所有していることが多く、単独の造り手だけが所有するひとつの畑を「モノポール」と呼ぶとか。

ワインの産地「ブルゴーニュ」について知っておきたいこと

シャンパーニュ地方

フランス最北のワイン産地であるシャンパーニュ地方はシャンパンの名産地として知られる地域です。シャンパン造りには厳密な規定が設けられていて、 ブドウ品種から醸造期間、アルコール度数まで生産全工程の条件を満たしたシャンパーニュ地方で造られたスパークリングワインのみがシャンパンと認められます。

また、シャンパーニュ地方では「村(コミューン)」単位でワインの格づけが行われています。その際の基準となるのが、ブドウの取引価格。天候次第でブドウの収穫量に差が出やすいため、毎年村に80パーセントから100パーセントの格づけを行い、買取価格を決定しているのだとか。格づけ100パーセントの村のブドウのみで造られるワインを「グラン・クリュ」、90パーセントから99パーセントの村のブドウのみで造ったワインを「プルミエ・クリュ」と呼びます。

ローヌ地方

フランス南東部に位置するローヌ地方は、ボルドー地方に次ぐ生産量を誇るだけでなく、多種多様なワイン造りが行われている産地です。ローヌ地方北部では赤ワインが造られていて、「シラー」を使用した濃厚な味わいは高い評価を得ています。また、「ギガル」や「シャプティエ」など、日本でも人気が高いワインメーカーも、この地でワイン造りを行っています。
一方の南部では、グルナッシュを主体として複数の品種をブレンドした果実味のある豊潤なワイン造りが主流。アルコール度数が高いほか、ほどよい酸味のなかに果実の確かな味わいが感じられることが特徴です。

ローヌワインとは?フランスローヌ地方の南部と北部で味わいが異なります

ロワール地方

フランス最長の河川、ロワール川流域のロワール地方は、4つの地区をまたぐ広大なワイン産地です。「フランスの庭」と称されるほど風光明媚な景観が広がるロワール地方で造られるワインは、割合でいうと、白ワインが5割、ロゼワインが3割、残り2割が赤ワインと多彩。アペラシオン(ワインの原産地を示す呼称)が60を超えるほか、地区ごとに異なるブドウ品種を栽培していることもあり、ワイン愛好家でもすべてを把握するのが難しい産地です。また、ボルドー地方やブルゴーニュ地方と比べると、手に取りやすいリーズナブルなワインが多く造られているのも特徴です。

アルザス・ロレーヌ地方

フランス北東部に位置し、ドイツと国境を接するアルザス・ロレーヌ地方は、品種の特性を生かした果実味あるフレッシュなワイン造りを行う地域です。

過去にドイツ領であった経緯もあり、アルザス・ロレーヌ地方のワインは瓶の形やラベル表記がドイツワインに似通っていることも特徴。ドイツの影響はワイン造りそのものにおいても同様で、ドイツの代表的なブドウ品種であるリースリングを使った辛口の白ワインが有名です。

そもそもアルザス・ロレーヌ地方で造られるワインの9割以上が白ワイン。「白ワインの黄金郷」という声も聞こえるほどで、リースリングのほかにも、「ピノ・グリ」「ミュスカ」「ゲヴェルツトラミネール」などの高級品種が栽培されていて、多くの場合単一品種でワイン造りがされています。

ラングドック・ルーション地方

フランス南部、プロヴァンス地方の西に位置するラングドック・ルーション地方ではリーズナブルなワインが豊富に造られ、フランスワイン全体の40パーセントのシェアを占めるほど。また、ラングドック・ルーション地方は地中海と面した温暖な地域で、太陽の恵みをふんだんに受けて造られるワインは低価格ながら高品質で、とくに酸味がきつくない白ワインや果実の凝縮感のある赤ワインで知られています。

ラングドック・ルーション地方で造られるワインのコストパフォーマンスの高さは、1980年代以降、優秀な生産者が次々に移住してきたことから。細かい規定や特定の品種に縛られないワイン造りができるこの地は、自由なワイン造りに挑戦したい人たちには最適の土地で、現在では「フランスの新世界」の異名のもと、個性豊かな優れたワインが続々と生産されています。

「IGPペイ・ドックワイン」は世界的に注目度が上昇中のフランスワイン

プロヴァンス地方・コルシカ島

フランス南東部に位置するプロヴァンス地方・コルシカ島。この地はリゾート地として有名である一方、ワイン造りが盛んなことでも知られる土地です。とくにプロヴァンス地方は、フランスのロゼワインの約4割を造るロゼワインの一大生産地。また、この地で製造されるワインは約9割がフランス国内、そのうち約4割がプロヴァンス地方で消費される地産地消のワインでもあります。

一方でナポレオンの生誕地として知られるコルシカ島のワインは、隣国・イタリアの影響が強いことが特徴。イタリア系品種のブドウを使ったワイン造りが行われていて、ロゼワインと赤ワインの製造が約8割を占めています。

南西地方

ピレネー山脈からフランス南西部にかけてボルドー地方を囲んで位置する広大な南西地方は、ワイン造りを行うエリアが飛び石状に存在しています。造られるワインも多種多様で、地域柄ボルドー産ワインと似たワインが製造されている一方で、土着品種のブドウによるワイン生産も盛ん。造られるワインの総数は120種類にものぼるとか。

また、南西地方は高級ブランデー・アルマニャックの誕生の地でもあります。海洋性の温暖な気候かつ雨が多い地域であるため、太陽光と乾燥が求められるワイン造りよりは、ワインを蒸溜して製造するブランデー造りのほうで発展してきたという一面もある地域です。

ジュラ・サヴォワ地方

スイスと国境を接するフランス東部のジュラ・サヴォワ地方は、アルプスを臨む冷涼な気候のワイン産地です。ジュラ地方は、ほど近いブルゴーニュ地方と造られるブドウ品種が似ていることが特徴的な一方、「サヴァニャン」という品種から特殊な方法で造る「黄ワイン」と呼ばれる「ヴァン・ジョーヌ」が有名。シェリー香が鼻腔をくすぐる辛口のワインです。

サヴォワ地方は白ワインの製造が盛んで、チーズフォンデュと相性がよいことで知られています。また、サヴォワ地方で造られるワインとして有名なのが、「ヴァン・ド・パイユ」。「藁(わら)ワイン」とも呼ばれる陰干ブドウで造る甘口の白ワインで、アルコール発酵に一年をかけることが特徴です。

ワイン大国フランスでは、ひとつの地方に限ってもさまざまなワイン造りがされているのが奥深いところ。この記事をガイドブックに、ぜひフランスの各産地のワインを飲み比べしてみてくださいね。

おすすめ情報

関連情報

ワインの基礎知識