ビールの注ぎ方やマナーを心得ている? 冷やし方やグラスの種類、注ぎ方のコツまでおいしく飲むワザを伝授

ビールの種類にもよりますが、ビールをおいしく飲むには、5~7度に冷やし、よく冷やしたビールグラスにビールと泡を7:3の割合で注ぎます。今回は、冷やし方やグラスの種類などでおいしさが格段にかわるビールのおいしい飲み方についてご紹介していきます。
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ビールをおいしく飲むためにやるべきこと

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ビールを正しい方法で保管する
ビールをおいしく味わうには、ビールを正しく保管することが大切です。まずは、ケースなどで購入してきたビールを保管する際のポイントを見ていきましょう。
ビールの保管場所として適しているのは、光が当たらず、温度変化の少ない床下収納などの暗所です。
とくに、瓶ビールを直射日光の当たる場所に置いたままにしておくと、紫外線の影響で「日光臭」と呼ばれるゴムが焼けたような臭いが発生することがあるので絶対にやめましょう。また、蛍光灯やブラックライトの光にさらされる場所も避けてください。
それから、ビールは高温になる場所に保管するのもNGです。品質が変わってしまうので、夏場などは冷蔵庫に保管して早めに飲むのが鉄則。また、約3度以下の環境に長期間保管すると劣化につながるため、冷やし過ぎも禁物です。
ビールはなるべく飲む直前に冷やす
ビールは、ふだんは涼しい暗所に保管して、飲む前に冷やすのがおいしく飲むコツです。前述のとおり、冷蔵庫に長く入れたままにしておくと、温度変化や低すぎる温度によって風味が変わることがあるので避けましょう。
室温で保管していたビールを冷蔵庫で冷やす場合、約6~8度の飲みごろの温度になるまで5〜6時間ほどかかります。急いで冷やしたいときは、ボウルなどの大きめの容器に水と氷をたっぷり入れ、その中に缶や瓶を入れておけば、効率的に早く冷やせます。氷水に塩を加えるとさらに時短できるので、試してみてください。大急ぎで冷やしたいときは、氷水の中で缶や瓶をくるくる回す方法でも早く冷やせます。
ビールの飲みごろの温度
ビールをおいしくいただける飲みごろの温度は、ビアスタイル(ビールの種類)によって異なります。
たとえば、日本で広く流通しているピルスナータイプの場合、約5~7度が飲みごろの目安といわれています。銘柄によっては、ラベルや公式サイトなどに飲みごろの温度が明記されていることもあるので、飲む際にチェックしてみてはいかがでしょう。
なお、夏はやや低めの温度で、冬は少し高めの温度で飲むとおいしくいただけます。
ビールの発酵方法とビアスタイル

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ビールの発酵方法の種類
ビールの発酵方法は、「上面発酵」「下面発酵」「自然発酵」の3つに大別され、ほとんどのビールはいずれかの製法で造られています。それぞれの特徴をかんたんに確認しましょう。
【上面発酵】
上面発酵は、冷蔵技術が未熟な時代からある昔ながらの製法で、発酵期間が短く、飲みごたえのあるビールが生まれやすいのが特徴です。なお、上面発酵で造られるビールを「エール」といいます。
【下面発酵】
下面発酵は、低温でゆっくりと発酵させる製法で、すっきりのどごしのよいビールが生まれやすいのが特徴。上面発酵と比べて発酵に長い時間を要しますが、低温下で発酵させるため雑菌が繁殖しにくいのがメリットです。なお、下面発酵で造られるビールを「ラガー」といいます。
【自然発酵】
自然発酵は、自然に存在する野生酵母を取り込んで発酵させる製法で、およそ500年前から製法がほとんど変わっていません。自然発酵で造られるビールは、独特の酸味があるのが特徴です。
日本でよく見られるビールの種類(ビアスタイル)
ビールの種類は、じつに150種類以上あるといわれています。ここでは、日本で飲まれているおもな種類を、発酵方法別にいくつか紹介します。
【上面発酵のビール(エール系)】
エール系ビールには、濃厚な味わいと豊かな香りをたのしめるものが多い傾向にあります。
◇ベルジャンホワイト
ベルギーの伝統的なビアスタイル。コリアンダーやオレンジピール由来のフルーティーかつスパイシーな香りとヨーグルトのような酸味が特徴です。
◇ペールエール
イギリス発祥のビアスタイルで、ホップの香りと苦味が特徴。アメリカへ渡って、ホップの華やかさが際立つアメリカンペールエールが誕生し、世界へ広まりました。
◇ヴァイツェン
ドイツの伝統的なビアスタイル。バナナを思わせるフルーティーな香りとクリーミーな泡、苦味の少ないやわらかな味わいが魅力です。
◇スタウト
アイルランド発祥の黒ビール。麦芽化せずにローストした大麦を使用し、独特の苦味とコーヒーやナッツのような香ばしさを引き出しています。
【下面発酵のビール(ラガー系)】
ラガー系ビールには、すっきり爽快なのどごしをたのしめるものが多い傾向にあります。
◇ピルスナー
日本国内で流通している大手メーカーのビールのほとんどが、チェコ発祥のピルスナータイプ。爽やかなのどごしとキレのよい苦味が特徴です。
◇ピルス
ピルスナータイプの一種。発祥国はドイツなので、ジャーマン・ピルスナーとも呼ばれます。ホップの苦味の効いた、キレのよいビールです。
◇アメリカンラガー
アメリカ発祥のラガービール。麦芽の風味やホップ由来の苦味が穏やかで、クセがなく飲みやすいのが特徴です。
【自然発酵のビール】
自然発酵のビールには、酸味のあるものが多いのが特徴です。フルーツを漬けたものなどさまざまな種類があります。
◇ランビックスタイルのビール
ランビックは、ベルギーのブリュッセルとその近郊だけで造られている伝統的なビアスタイルです。ほかの地域で造られるビールは、同じ製法でもランビックと名乗ることはできず、「ランビックスタイル」などと呼ばれます。なお、フルーツを加えたランビックは、日本では発泡酒に分類されています。
ビールをおいしく飲むためのビールグラスの豆知識

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ビールグラスの種類と相性のよいビアスタイル
ビールの個性をたのしむためには、グラス選びも重要です。ここでは、日常的に目にするおもなグラスと、相性のよいビアスタイルを紹介します。
【タンブラー型】
背の高い円筒形のタンブラーは、爽やかな苦味のあるピルスナーと相性が抜群。また、泡立ちがよい形状で、泡が長持ちするので、最後までおいしくたのしめます。
【フルート型】
シャンパンを飲むときに使われる、ワイングラスを細長くしたような形状のグラス。ランビックなど酸味のあるビールを飲むのに適していますが、香りを逃しにくく泡立ちもよい形状なので、オールマイティーに活用できます。
【チューリップ型】
文字どおり、チューリップのような形状のグラス。ビールを注ぐと泡がこんもりと盛り上がり、見た目を美しく演出します。エールなど、華やかな香りが魅力のビール向きです。
【ジョッキ型】
厚みがあって取っ手のついたジョッキは、冷えたビールをぐびぐび飲むのにうってつけ。とくに、ラガー系ビールの爽快なのどごしをたのしみたいときに適しています。
【ヴァイツェングラス】
背が高く、中央部分がくびれた形状のヴァイツェングラスは、ヴァイツェンをはじめ泡立ちのよい白ビールに最適。芳醇でフルーティーな香りを存分にたのしめます。
ビールグラスの洗い方や冷やし方も重要
ビールグラスの洗い方も、ビールをおいしく飲むうえで重要なポイントです。グラスを洗う際は、グラス専用のスポンジを使用するのがポイント。フライパンや食器を洗ったスポンジを使用すると、油がグラスに移ってビールの味わいや泡の持ちに影響します。また、洗ったあとに布などで拭くと、ガラスの内側に繊維やホコリなどがついて泡持ちが悪くなるので、自然乾燥させましょう。
グラスの冷やし方にもコツがあります。夏場などは、キンキンに冷やしたグラスでぐいぐい飲みたくなりますが、冷凍庫で凍らせてしまうと、ビールの味が変わったり、きれいな泡ができにくくなったりすることも。グラスを冷やす場合は冷蔵庫に入れるか氷水で行いましょう。
庫内のにおい移りが気になる場合は、使用する前に軽く水洗いしてください。グラスを氷水にくぐらせてから注ぐビアバーなどもあるように、グラスの内側は拭く必要はありません。
なお、グラスを濡らしてから注ぐと、グラス内面に気泡ができるのを防げるほか、エンジェルリングができやすくなるといわれています。
ビールのおいしい注ぎ方

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ビールの液体と泡のおいしい比率
ビールの味わいを変化させるのは、適度な量の泡。泡には、ビールの表面から風味が逃げたり、空気と接触することによる酸化を防いだりするフタのような役割があります。
一般的に、ピルスナータイプのビールの液体と泡の黄金比は、7:3といわれています。泡が多すぎると飲みにくいうえにビールをしっかり味わうことができず、泡の量が少なすぎるとビールの味が変化しやすくなります。自宅でビールを飲む際は、黄金比を意識して注ぐとよいでしょう。
なお、ビールの種類や好みによっては、極力泡立てずに、瓶や缶の中身をゆっくりとそのままグラスに移すように注いだほうが、おいしく感じられる場合もあります。
缶・瓶ビールのおいしい注ぎ方
ビールの注ぎ方にはいくつかありますが、ここではクリーミーな泡を作れる「三度注ぎ」と呼ばれる注ぎ方を紹介します。
よく冷えたグラスをテーブルに起き、少し高めの位置から勢いよく、グラスの半分くらいまでビールを注ぎます。泡が落ち着くのを待ってグラスを傾け、缶などを飲み口に近づけて9分目あたりまで、グラスに沿うように静かに注ぎます。さらに泡が落ち着くまで待ち、残りのビールを泡がこんもりと盛り上がるようにゆっくりと注いでいきます。
ビールと泡の比率は、前述のとおり7:3が目安。ビールを3回に分けて注ぐことで、よりきめの細かい泡を生み出すことができます。なお、泡のでき具合には、ビールの種類やグラスの形などさまざまな要素が影響しますが、少し練習すれば上手に注げるようになるはずです。
ピッチャーからビールを注ぐ際のコツ
ピッチャーからグラスにビールを注ごうとして、テーブルを汚してしまった経験がある人も多いはず。しかしコツさえつかめば、ビールをこぼすことなく理想的な泡を作り出すことができます。
ピッチャーからビールを注ぐ際は、グラスをできるだけピッチャー側に傾け、ゆっくりと注ぐことがポイント。最初はグラスを水平に近い角度にまで傾け、徐々に垂直に戻していくとよいでしょう。腕の力が弱い人でも、慣れればひとりで注ぐことができるようになります。
ビールを注ぐ際のマナーを知っておこう

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瓶ビールを注ぐ際のポイント
ビールの注ぎ方にはマナーがあります。親しい友人や家族間ならさほど意識する必要もありませんが、フォーマルなシーンや接待の席などでは、最低限のマナーを覚えておく必要があります。
◇ラベルを上に向けて注ぐ
瓶ビールの場合はラベルが上になるよう右手で瓶の腹から下のほうを持ち、もう一方の手は、瓶の首辺りの下側に軽く添えて注ぎます。
◇瓶や缶をグラスに接触させない
きれいな泡を作るためには、瓶や缶をグラスにつけてそっと注ぎたいところですが、フォーマルな場などでは好ましくありません。
◇「逆手注ぎ」はマナー違反
絶対にやってはいけないのが、手のひらを上に向けて注ぐ「逆手注ぎ」。これは「葬式注ぎ」とも呼ばれ、通常の飲みの席ではマナー違反にあたります。
◇注ぎ足すタイミングも重要
ビールの量がグラスの半分以下になると、すぐに注ぎ足そうとする人もいるようですが、人によっては負担に感じるケースも。また、ビールで乾杯したあとは、日本酒や焼酎、ワインなどに切り替えたいという人もいるかもしれません。注ぎ足す前に、一言声を掛けるよう心がけたいものです。
瓶や缶ビールの注がれ方
ビールを注がれる側にもマナーがあります。瓶や缶ビールを注いでもらう場合は、両手でグラスを持ち、傾けすぎずに自然な角度で受けるのが好印象。ただし、相手のスキル次第では泡が立ちすぎてしまうこともあるため、適宜角度を調整すると親切です。
グラスが小さい場合、両手で包み込んでしまうと注ぎ手にビールの量が見えなくなる可能性があります。その場合は片手でグラスを持ち、もう一方の手はグラスの底に軽く添えておくとよいでしょう。
乾杯にもマナーがある
ビールで乾杯するときに気をつけたいのが、グラスの高さ。上司や目上の人のグラスよりも自分のグラスの位置が低くなるよう、高さを調節するのがポイントです。気配りするべき相手が年下の場合は、相手に気づかいをさせない程度にグラスの位置を下げるとよいでしょう。
乾杯のマナーは、カジュアルな席でも気にする人が多いので、習慣づけておきたいものです。
ビールの種類やグラスにこだわり、上手に注げるようになると、たのしみの幅が広がります。ビールをよりおいしく味わうためにも、ここで紹介した方法を試してみてください。

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