日本一海に近い蒸溜所で育まれる地ウイスキー「あかし」の底知れぬ魅力に迫る
「あかし」は、江井ヶ嶋(えいがしま)酒造が大正時代から手がけてきた地ウイスキーブランド「ホワイトオーク」のラインナップのひとつ。日本酒杜氏が造る軽快なウイスキーは、多くの人を魅了しています。今回は、「あかし」の魅力や人気の秘密に迫ります。
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「あかし」の故郷、播磨灘の自然
出典:江井ヶ嶋酒造サイト
「あかし」は兵庫県明石市で誕生した地ウイスキー
「あかし」は、清酒をはじめ、ワインやブランデーなどさまざまな酒類の製造を手がける、江井ヶ嶋酒造のウイスキー銘柄です。「あかし」の銘柄名は、その名のとおり、誕生の地である兵庫県明石市に由来しています。
「あかし」は、「ホワイトオーク」という地ウイスキーブランドのシリーズのひとつとして登場しました。ブレンデッドウイスキーを中心に展開していましたが、2007年に初めてシングルモルトウイスキー、「ホワイトオーク シングルモルト あかし 8年」を発売。本場のスコッチにも引けを取らない味わいで話題をさらって以来、たくさんのファンを魅了しています。
「あかし」を生んだ「ホワイトオーク」の歴史
「ホワイトオーク」の歴史は古く、その誕生は大正時代にまで遡ります。江井ヶ嶋酒造がウイスキー製造免許を取得したのは、大正8年(1919年)のこと。同年に、地ウイスキー「ホワイトオーク」の発売をスタートしました。
ジャパニーズウイスキーの先駆者といえばサントリーですが、同社が日本最古のモルトウイスキー蒸溜所「山崎蒸溜所」の建設に着工したのは大正12年(1923年)。販売用ウイスキーの製造を開始したのはその翌年なので、江井ヶ嶋酒造は、それよりも早い段階からウイスキー造りに着手していたことになります。
「ホワイトオーク」は、まさに日本のウイスキーの黎明期から育まれてきた銘柄といえるでしょう。そして、その開拓者精神は、「あかし」にも受け継がれているのです。
「あかし」を育む播磨灘(はりまなだ)の環境
かつて「西灘(にしなだ)」と呼ばれていた「あかし」のふるさと明石市江井島(えいがしま)は、瀬戸内海越しに淡路島、遠くに小豆島四国連山を望む、風光明媚な場所です。播磨灘という瀬戸内海東部の海域に面したこの地域では、播磨平野で育まれる良質な米と湧き水、温暖な気候に恵まれていることから、江戸時代初期より酒造りが盛んに行われてきました。
江井ヶ嶋酒造の前身にあたる蔵元が酒造りをスタートしたのも、同じく江戸時代の延宝7年(1679年)のこと。穏やかな瀬戸内海に抱かれ、「あかし」をはじめとしたさまざまなお酒が、酒造りの文化が根づく明石の地で育まれています。
「あかし」を育む江井ヶ嶋酒造の歴史
出典:江井ヶ嶋酒造サイト
江井ヶ嶋酒造の歴史は清酒から始まった
「あかし」を手がける江井ヶ嶋酒造は、明治21年(1888年)に創業した老舗メーカーです。設立当初は「日本魂(やまとだましい)」や「百合政宗(ゆりまさむね)」、現在の主要銘柄である「神鷹(かみたか)」などの清酒を手がける日本酒蔵でした。
江井ヶ嶋酒造は、日本酒が、買う人の自前の樽や徳利(とっくり)に移して売られていた時代に、先んじて1升瓶での販売を開始した蔵として知られています。1升瓶をどこよりも早く採用したのは、品質保持性に優れているうえ、偽造品の流通を防げるという理由からでした。明治32年(1899年)には、いち早く製瓶工場を竣工。このような、ニーズを捉えて対応していく姿勢は、さまざまな場面に生きています。
江井ヶ嶋酒造の一歩先をゆく歩み
江井ヶ嶋酒造は、常に時代の一歩先を歩んできたメーカーです。日本酒のみならず、新たな需要に素早く対応するべく、さまざまな分野で研究開発を続けてきました。
大正8年(1919年)には蒸溜工場を建て、白玉焼酎や白玉みりん、シャルマンブランデーをリリース。「ホワイトオークウイスキー」が誕生したのもこの年のことです。翌年には白玉ホワイトワインを発売。43年の年月を経た昭和38年(1963年)には山梨ワイナリーを開設し、シャルマンワインを世に送り出しました。さらに、昭和56年(1981年)には大分醸造所を竣工し、大分麦焼酎「福寿天泉」を発売しました。
現在は、清酒、焼酎、みりんのほか洋酒の製造も手がける総合酒類メーカーとして、その名をとどろかせています。
「あかし」に懸ける造り手の想いとこだわり
出典:江井ヶ嶋酒造サイト
地ウイスキー「あかし」の製造に対するひたむきな想い
「良い酒を造るのに近道はない」、これが江井ヶ嶋酒造のウイスキー造りに対する基本的な考え方です。スコッチスタイルの手法と清酒の伝統技術を融合させ、独自のスタイルで磨き上げられた国産地ウイスキー「あかし」は、当たり前のことを真面目に貫き、地道に手をかけることで造られます。誠実さをモットーに、蔵の杜氏と「時」によって育まれる「あかし」は、蔵の歴史と共に歩んできた成熟した酒なのです。
「あかし」の製造の流れとこだわり
ウイスキーの原料となる大麦麦芽は、スコッチの本場イギリスから取り寄せています。仕込み水には、清酒造りにも用いられる地下水を使用。これらを原料に、昭和59年(1984年)に本社横に完成した新ウイスキー蒸溜所で、日本酒を醸す杜氏が、基本的には醸造のオフシーズンに蒸溜を行っています。
蒸溜後の無色透明の液体はオーク樽に詰められ、7つある蔵のうち、明治24年(1891年)に完成した「二番蔵」に貯蔵されます。この蔵は、ウイスキー貯蔵専用の木造蔵で、壁が厚く窓が少ないため外気の影響を受けにくく、室温を一定に保てるのが特徴です。貯蔵・熟成に好適な貯蔵蔵に置かれた「あかし」の原酒は、樽の中で長い熟成期間を経て琥珀色に色づき、重厚な香りと芳醇な味わいの酒質へと変化していきます。
このように、こだわりの原料と卓越した技術、最新の設備と昔ながらの蔵といった、ウイスキー造りに適した環境のなかで、日本全国の愛飲家たちを虜にする「あかし」が造られているのです。
「あかし」の魅力は個性的豊かな味わいとコスパにあり
出典:江井ヶ嶋酒造サイト
「あかし」の味わいを特徴づける製法
「あかし」は、江井ヶ嶋酒造が大切に育んできた「ホワイトオーク」の高級ラインです。個性とおいしさを追求するために、仕込みの段階で日本酒造りの技を取り入れるなど、随所に日本伝統の酒造りのエッセンスを加えながら、独自の味わいに仕上げられています。
また、スコットランド式の蒸溜設備で抽出した原酒は、アメリカンオーク製のバーボン樽とシェリー樽に詰められ、明石の海風に抱かれた貯蔵庫で長い眠りにつきます。「あかし」から、アイラモルトのようなかすかな潮っぽさが感じられるのは、海のそばで貯蔵されるため。
2種類の樽で眠る原酒は、樽の中で呼吸し、樽からゆっくりと溶け出す微量成分と混じり合うことで、風味豊かなモルトになります。そして、熟成した2つのモルトをブレンドすることで、シングルモルト「あかし」が完成します。
ジャパニーズウイスキー「あかし」は、コスパのよさが魅力
「あかし」は、シングルモルトウイスキーとスコッチタイプのブレンデッドウイスキーの2タイプで展開されています。この両者に共通する大きな魅力として特筆したいのは、コストパフォーマンスの高さです。初めて飲むときは、「高クオリティにしてこの価格!」と、そのおいしさとリーズナブルさに驚く人も多いはず。1,000円前後で入手できる商品もいくつかあり、日常酒として根強い人気を誇っています。
「あかし」のラインナップとおいしい飲み方
出典:江井ヶ嶋酒造サイト
「あかし」のおすすめラインナップ
英国産大麦麦芽100%で造られる「あかし」の、一度は飲んでおきたいおすすめ商品を紹介します。
【ホワイトオーク シングルモルト あかし】
アメリカンオークシェリー樽とバーボン樽で貯蔵した原酒をブレンドした、ブレンデッド(ヴァッティング)モルトウイスキーです。香りはスイートでウッディ、味わいは上品にしてスパイシー。さらに、わずかにピーティーさも感じられる、香味豊かな逸品です。食中酒にも向いています。
【ホワイトオーク 地ウイスキー あかし】
スコッチタイプのブレンデッドウイスキー。モルト原酒の華やかな香りが特徴で、淡麗でやや辛口の味わいをたのしめます。500ミリリットルで1,000円ちょっとという価格設定もうれしい限り。気軽に飲める大満足の1本です。
※商品価格は記事執筆時点のものとなります。ご購入の際には価格が異なる場合がありますのでご注意ください。
【ホワイトオークあかし700 スペシャルブレンド】
オーク樽で3年以上貯蔵したモルトウイスキーをブレンドしたスコッチタイプのブレンデッドウイスキー。華やかなモルトウイスキーと複雑で味わい深いグレーンウイスキーのハーモニーをたのしめます。
「あかし」のおいしい飲み方
「あかし」のシングルモルトは、ストレートやロックなど、ウイスキー本来の味わいをたのしめる飲み方がおすすめ。モルトらしい香りや甘味をたのしみたい場合は、ウイスキーと常温の水を同量ずつ混ぜ合わせるトワイスアップもよいでしょう。また、食事と一緒に飲むなら、水割りにすると合わせやすくなります。
「あかし」のブレンデッドウイスキーは、ロックが一押しの飲み方ですが、ハイボールにしてもおいしくいただけます。ハイボールは、食中酒としてもぴったりです。
ちなみに、潮っぽさのある「あかし」は、魚介類を使った料理によく合います。好みに合わせて、いろいろな飲み方と料理とのマリアージュを試してみてください。
スコッチスタイルと日本酒の技術を融合して造られる「あかし」は、一般的なジャパニーズウイスキーとは一線を画す、個性豊かな地ウイスキーです。ウイスキー通をもうならせるクオリティの高さを、ぜひ一度味わってみてください。
製造元:江井ヶ嶋酒造株式会社