ビールの成分を徹底解剖! ビールの栄養とおいしさの秘密を探る
ふだん何気なく飲んでいるビールにどんな成分が含まれているか知っていますか? じつはビールには、原料由来のカラダにうれしい効果があるといわれています。今回はビールの成分に着目して、ビールに含まれる栄養やおいしさの秘密などを探ります。
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ビールにはどんな成分が含まれる?
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ビールは大きく分けて4種の原料から造られる
まずは基本となるビールの原料と、それぞれの役割を見ていきましょう。
【大麦(麦芽)】
大麦の種子を発芽させ高温で乾燥させたものを麦芽(大麦麦芽)といいます。麦芽はビールの主原料で、味や香りに深く関わっています。
【ホップ】
つる性のアサ科の植物。ビールに独特の苦味や香りを加える役割を果たし、ホップの種類や量、投入するタイミングなどによってビールの風味が変化します。
【水】
ビールの成分のうち9割以上を占めるのが水。硬水・軟水といった水質の違いによって、ビールの個性にも違いが生じます。ビール造りにはおもに、ミネラル分などを調整した「醸造用水」と呼ばれる特別な水が使用されます。
【副原料】
日本では、酒税法によって副原料に使用できるものが決められています。おもな副原料には、麦、米、とうもろこし、ばれいしょ(じゃがいも)、着色料、果実・香辛料などがあります。
ビールにはどんな成分が含まれている?
ビールには原料由来の成分が含まれています。大手メーカーの代表的なビールをもとに、アルコール度数やカロリー、ビールに含まれるおもな成分とその量(100ミリリットルあたりの量)を確認してみましょう。
◇アルコール(約5~6%)
◇エネルギー(約40~45キロカロリー)
◇タンパク質(約0.2~0.5グラム)
◇糖質(約2.0~3.0グラム)
◇食物繊維(約0~0.3グラム)
◇ナトリウム(約0~1.9ミリグラム)
◇プリン体(約6.0~10.0ミリグラム)
「三大栄養素(タンパク質・糖質・脂質)」の観点からいうと、糖質の割合が高く、タンパク質はごくわずか、脂質は含まれないのが、一般的なビールの特徴といえそうです。
ビールを飲むと太る?
ビールは、脂肪のもとになる糖質の割合が高いため、「ビールを飲むと太る」というイメージを持つ人も多いでしょう。
しかし、ビールに含まれている糖質は、350ミリリットルあたり約10グラム。ご飯茶碗1杯(150グラム)に含まれる糖質が約55グラムであることを考えると、ビールの糖質は比較的低めです。
そのため、ビールを飲んだからといって「太る」とは一概にはいえません。どちらかというと、いわゆる「ビール腹」は、ビールと一緒に食べる料理やおつまみが原因といわれています。
じつはビールには栄養素がてんこ盛り
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大麦(麦芽)にはビタミンなどが豊富に含まれている
一般的なビールの原料である大麦(麦芽)、ホップ、酵母には、さまざまな栄養素が豊富に含まれているため、健康面にプラスの作用をもたらすといわれています。
まずは大麦(麦芽)のおもな成分から見ていきましょう。
【β-グルカン】
大麦麦芽に含まれるβ-グルカンには、悪玉コレステロールや内臓脂肪を減らす働きがあるといわれています。
【ビタミンB群】
大麦麦芽には、ビタミンB1 ・B2・ B6、イノシトール、葉酸、パントテン酸などが含まれています。なかでもビタミンB2には、新陳代謝を促し、髪や皮膚などを健康的に保つほか、脂肪を燃焼させる効果があるといわれています。
【ミネラル類】
カルシウム、カリウム、マグネシウム、リン、ナトリウムなどのミネラルも含んでいます。
ホップにもさまざまな健康効果が期待されている
ホップには抗菌作用があるため、雑菌の繁殖を抑え、保存性を高めるために、ビール造りに用いられてきました。抗菌作用以外にも、鎮静作用、催眠作用、健胃作用、食欲増進といった効果が期待できるとされ、ヨーロッパでは昔から薬や薬用ハーブとしても利用されてきました。このほかの効果についても、おもな成分ごとに見ていきましょう。
【ポリフェノール】
ホップの成分として注目されているのが、赤ワインにも含まれる「ポリフェノール」です。ビールでも、ポリフェノールによる抗酸化作用が期待されています。
【フィストロゲン】
ホップには、「フィストロゲン」という女性ホルモンと似た働きをする成分が含まれています。この成分は、ホルモンバランスの乱れを整え、冷え症や肩こり、疲労、白髪といった、女性に特有の悩みを和らげるのに役立つといわれています。
【イソアルファ酸(イソα酸)】
ホップはビールに独特の苦味をもたらしますが、それはイソアルファ酸と呼ばれる成分によるもの。イソアルファ酸には、アルツハイマー病の進行を抑制する作用があるともいわれています。ほかに、生活習慣病や肥満などを抑制する効果も期待されています。
酵母は栄養素の宝庫
じつは、ビールの栄養素がもっとも多く含まれるのはビール酵母です。その理由は、製造工程で、麦汁の栄養素をたっぷりと取り込みながら発酵するためといわれています。酵母にはどのような成分が含まれているのか、確認しましょう。
【アミノ酸】
酵母の約50%はタンパク質。タンパク質には脳の働きを活発にする、血圧を安定させるなどの効果が期待できるといわれています。また、酵母のタンパク質には18種類のアミノ酸が含まれています。そのうち、体内で生成できないアミノ酸8種類が、バランスよく含まれているのが特徴です。アミノ酸には代謝を促したり、免疫力を上げたりするなど、健康面へのプラスの効果が期待されています。
【ミネラル】
酵母に含まれるカルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルにも注目したいところ。とくにカリウムには、ナトリウムを体外に排出し、摂りすぎた塩分を調整する働きがあるといわれています。
【ビタミンB群】
酵母には、ビタミンB1・B2・B6、ナイアシン、葉酸などのビタミンB群も豊富に含まれています。ビタミンB群はバランスよく摂ることがよいとされていて、なかでもビタミンB1・B2・B6を一緒に摂取できるのは大きなメリットです。ビタミンB1には疲労回復や鎮静作用など、ビタミンB2には皮膚や爪、髪などを健康的に保つ効果、ビタミンB6には免疫機能をサポートする効果などがあるといわれています。
ビールのおいしさを決めている成分は?
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ビールの色や透明度、泡に関係する成分
ビールの色や透明度、泡にはどのような成分が関係しているのでしょうか。それぞれに作用する成分の働きについて、確認しましょう。
【色】
ビールの色は、おもに麦芽によってもたらされ、一部はホップや水に由来しています。ビールの色を造るのは、製造工程で溶け出した麦芽のポリフェノール類や、麦汁の中のアミノ酸と糖類から生成された成分など。また原料の水の硬度や、製造工程で使われるお湯の温度、ペーハー値(水素イオン指数)なども色に関係しているといわれています。
【透明度】
ビールは一般的に、透明で濁りがないことが重視されますが、最近は「ヘイジー(濁り)」を持つビアスタイルにも注目が集まっています。小麦やオーツ麦などを加えてできたタンパク質と、ホップや麦芽の殻皮に由来するポリフェノールが、液を濁らせるのです。
【泡】
さまざまな研究によって、ビールの泡立ちや泡持ちには、タンパク質やイソアルファ酸、炭水化物、無機塩類などが関係していることが明らかになっています。とくにタンパク質とイソアルファ酸をバランスよく含むビールは、きめの細かい泡を作りやすいといわれています。
ビールの風味を決める成分
ビールにはさまざまな風味があります。香りや味に関係している成分について見ていきましょう。
【香り】
ビールの香りには、麦芽やホップに由来する成分と、発酵に由来する成分が関係しています。発酵由来の成分であるエステルやカルボニルなどのなかには、日本酒やワインにも含まれるものもあります。なお、香り成分は、およそ200種類以上が確認されています。
【苦味】
ビールを特徴づける苦味は、ホップを煮沸したときに得られるイソアルファ酸によるもの。イソアルファ酸の量によって、苦味の程度が変わってきます。
【濃醇さ】
おもに麦由来のタンパク質やペプチド、アミノ酸、核酸などの成分も、ビールの複雑な味わいに関係しているといわれています。
【酸味や甘味など】
発酵によって生成された有機酸や、酵母に取り込まれずにビールに残ったデキストリンや糖類なども、ビールの味を構成しています。有機酸はおもに酸味を、デキストリンや糖類はコクや甘味をもたらします。
ビールに含まれる成分に着目すると、健康への効果や風味などに対する意識も変わってきますね。ビールのたのしみがさらに広がりそうです。
※このコンテンツは、かしこくお酒をたのしむための知識を得るためのものであり、多量の飲酒を推奨したり、お酒に含まれる成分の効果・効能を保証するものではありません。