「ポーター」はイギリス生まれのエールビール
「ポーター」は、18世紀前半にイギリスで誕生し、大流行した上面発酵のエールビール。その後、ポーターを改良した「スタウト」の登場により、一度は廃れてしまいますが、近年、再び注目を集めています。そんな「ポーター」の歴史や魅力を紹介します。
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「ポーター」は18世紀に生まれたビール
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「ポーター」とはどんなビール?
「ポーター」が誕生したのは、1722年のロンドンだと言われています。当時のイギリスでは、「古くなった酸味のあるブラウンエール」に「造りたての若いブラウンエール」と「ペールエール」の3種類を混ぜ合わせた「スリースレッド」と呼ばれるビールが流行していました。
注文ごとに3種類のビールを混ぜ合わせる手間を省こうと、ロンドンのパブオーナーだったラルフ・ハーウッド氏が、あらかじめ工場で混ぜ合わせた「エンタイア(ひとまとめ)」というビールを考案。これが大ヒットとなったのです。
ちなみに、後にこの「ポーター」が海を渡ってアイルランドに上陸し、独自に進化したのが「スタウト」と呼ばれるビール。この「スタウト」がイギリスでも人気を博すようになると、「ポーター」は次第に廃れていったとされています。
「ポーター」の名前の由来とは?
考案者であるラルフ・ハーウッド氏が命名した「エンタイア」という呼称は定着せず、次第に「ポーター」と呼ばれるようになりますが、その名前については諸説があります。
当時の荷運び人(ポーター)たちが好んで飲んだことから付けられたとする説や、お店にビール樽が運ばれてきた時に「ポーター(届いたよ)」と叫んだことからとする説もあるようです。
いずれにしても、「ポーター」は当時のイギリス庶民のあいだで爆発的な人気を獲得し、イギリスのビール醸造業を一大産業へと成長させる原動力となったと言われています。
「ポーター」の2つの種類とおいしい飲み方
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「ポーター」には「ブラウン・ポーター」と「ロブスト・ポーター」が
「ポーター」は、その味や色合いに応じて、大きく「ブラウン・ポーター」と「ロブスト・ポーター」に分けられます。
「ブラウン・ポーター」の色合いは、明るい茶色から濃い茶色までさまざまで、カラメルやナッツなどの複雑で多彩なフレーバーがたのしめます。
一方、「ロブスト・ポーター」の色合いは、濃い茶色または黒。「ブラウン・ポーター」よりもコーヒーやチョコレートのような風味が強く感じられます。
「ポーター」のおいしい飲み方
「ポーター」は、ローストした麦芽の香ばしさや、芳醇でコクのある味わいが魅力のビール。少しずつゆっくりと飲んで、その風味を味わうスタイルが一般的です。
グラスも、エールビールでよく使われるパイントグラスや、その半分のハーフパイントグラスで飲むのがおすすめ。あまり冷やさず、12~14度くらいで飲むと、香ばしさを損なわず、おいしく飲むことができます。
人気のビール「ポーター」のおすすめ銘柄を紹介
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「ポーター」は日本でも多くのクラフトブルワリーが販売
「ポーター」は、人気の黒ビール「スタウト」のルーツとなったビールとして、近年、世界的にも見直されているビール。日本各地のブルワリーでも数多く造られています。そのなかから、代表的な銘柄を紹介します。
【ブラウンポーター(サンクトガーレン)】
日本のクラフトビールのパイオニアとして知られるサンクトガーレンの「ブラウンポーター」は、「ジャパン・ビアカップ2001」で金賞を受賞するなど、日本を代表する「ポーター」として定評があります。濃いブラウン色で、きつく焦がしたモルトによるチョコレートのような風味が特徴の、クセになるビールです。
製造元:サンクトガーレン有限会社
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神奈川のビール【サンクトガーレン】日本のクラフトビールのパイオニア
【東京ブラック(ヤッホーブルーイング)】
「東京ブラック」は、「よなよなエール」で知られる「ヤッホーブルーイング」が手掛けるロブスト・ポーター。ロースト麦芽由来の黒さと、コーヒーやココアを思わせる香りが特徴の黒ビールで、個性的なラベルデザインも魅力です。
製造元:株式会社ヤッホーブルーイング
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長野のビール【よなよなエール】 クラフトビールの王道を行くペールエール
【黒船ポーター(ベアードビール)】
日本のクラフトビール界をリードする「ベアードビール」が手掛けるポーターが「黒船ポーター」。チョコレートやコーヒーを思わせる、なめらかで力強く、ビタースウィートな味わいが口の中に広がるビールです。
製造元:合資会社ベアードブルーイング
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静岡のビール【ベアードビール】 世界一美しいブルワリーをめざして
「スタウト」の普及とともに、一度は凋落した「ポーター」ですが、今では世界的に人気のビールスタイルへと見事に復活。その香ばしい独特の味わいのトリコとなるビール好きが増えています。みなさんもぜひ、試してみてください。