ラガービールとエールビールは何が違う? 歴史や味の違いも解説
「ラガービール」や「エールビール」といった言葉を耳にしたことがある人も多いと思います。いずれもビールの種類を表していますが、どのような違いあるのでしょう? 今回はラガービールとエールビールの歴史や製造方法、味わいの違いなどを詳しく解説していきましょう。
- 更新日:
ラガービールとエールビールの違いは発酵方法
Digieva/ Shutterstock.com
ラガービールは下面発酵、エールビールは上面発酵
ラガービールとエールビールの違いは、ビール造りにおける発酵方法にあります。
ラガービールは、10度前後の低温で発酵する酵母で造られ、酵母が凝縮して沈んでいくことから「下面発酵」と呼ばれます。
これに対し、エールビールは15~25度の常温で発酵する酵母で造られ、酵母が表面に浮き上がることから「上面発酵」と呼ばれます。
ラガー(下面発酵)、エール(上面発酵)以外に、自然発酵のビールもある
下面発酵のラガービールと上面発酵のエールビールのほかに、自然発酵によって造られるビールもあります。
ラガービールとエールビールはビール酵母を人工的に投入して造られますが、自然発酵のビールは、その名のとおり空気中にある天然の酵母によって造られます。
そのため、自然発酵のビールはどこでも造れるというものではなく、自然発酵に適した酵母を持つ地域でのみ製造されています。
ラガービールはドイツ発祥のビアスタイル
canadastock/ Shutterstock.com
ラガービールの原型は15世紀のドイツで誕生
ラガービールの原型は、15世紀頃のドイツで誕生したと言われています。
当時、ビールの製造は腐敗を避けるため、高温の夏場を避けて冬場に行われていましたが、低温すぎると発酵が進まないのが悩みのタネでした。15世紀になって低温で発酵する事例が見つかり、秋に仕込んだビールを氷とともに洞窟で春まで貯蔵する方法が確立。「貯蔵」を意味する「ラガー」と名づけられました。
その後、低温殺菌や冷蔵技術の発達によって、出荷後も長期間保存ができるようになり、ラガービールは世界中に広まっていきました。
ラガービールの種類と味わいの特徴
一口に「ラガービール」と言っても、原料や製法によってさまざまなビアスタイルに分けられます。クセが少なくすっきりとした「ピルスナー」や、香ばしさとすっきりした味わいを両立させた黒ビール「シュバルツ」、軽い味わいで爽快感のある「アメリカンラガー」など、すべてラガービールの一種です。
ほとんどのラガービールに共通するのは、飲みやすい爽快なのどごし。ビールが苦手な人でも飲みやすいため、「取りあえずの1杯」としてビールをオーダーする人も多いのではないでしょうか。
現在の日本ではもっともポピュラーなスタイルで、商品に「ラガー」とついていなくとも、市販されている大手メーカー製ビールのほとんどはピルスナーなどのラガービールです。
エールビールはイギリスで発展したビアスタイル
Melinda Nagy/ Shutterstock.com
エールビールの歴史はラガービールよりも古い
エールビールはラガービールよりも歴史が古く、下面発酵が登場する以前は、ほとんどのビールが上面発酵で造られていました。
「エール」という名称はイギリスが発祥ですが、もともとは「ビール」とは別物。ホップを加えたものを「ビール」、ハーブを加えたものを「エール」として区別していました。
その後、エールにもホップを使う業者が増えてきて、次第に両者の境目が曖昧になり、「エールビール」として世界各地で飲まれるようになりました。
エールビールの種類と味わいの特徴
エールビールにも、ラガービールと同様にさまざまなビアスタイルがあります。
イギリスを発祥とするのは、香りが豊かでフルーティーな味わいが特徴的な「ペールエール」や、2種類のブラウンエールとペールエールをブレンドした「ポーター」、強いホップの苦みが特徴の「IPA(インディアペールエール)」など。
ほかにも、ドイツ発祥の「ヴァイツェン」や、アイルランド発祥の「スタウト」、ベルギー発祥の「ベルジャンホワイト」など、各地で特色あるエールビールが造られています。
それぞれ特徴は異なりますが、共通するのは豊かで個性的な香り。エールビールを飲むときは、舌だけでなく鼻も使ってたのしみましょう。
ラガービールとエールビールでは製造方法が異なり、香りや味わいにも大きな違いがあります。今回、紹介したスタイル以外にも、世界にはさまざまなスタイルのビールがあるので、ぜひ、飲み比べをたのしんでみましょう。