ビールの輸出が本格化、日本のビール造りを世界へ発信
日本のビール輸出は、大手ビールメーカーはもちろん、クラフトビールのブルワリーなども含め、近年、着実に増え続けています。今回は、日本のビールの輸出状況や、政府も含めた海外市場へのプロモーションの取り組み、今後の課題などについて紹介します。
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ビール輸出の現状とは?
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日本のビール業界は海外市場に活路を拓く
近年、国内のビール市場は、人口減少や若者のビール離れなどの影響により伸び悩んでいて、今後も縮小傾向が続くと見られています。そうしたなか、日本のビールメーカーの多くが海外市場に活路を求め始めています。
こうした動きは数字にも表れていて、財務省貿易統計によれば、2017年における日本のビール輸出額は、前年よりも約35パーセント増えて約129億円となり、初めて100億円の大台を突破。その後も着実に伸び続けています。
日本のビール輸出先ナンバーワンはお隣の国「韓国」
現在、日本のビールの輸出先は、輸出額の多い順に韓国、台湾、アメリカ、オーストラリアと続きます。とくに韓国への輸出は、2017年の129億円のうち80億円と約63パーセントを占め、ダントツのナンバーワンです。
これは、韓国でビールの輸入市場が急速に拡大していることに加え、若者を中心に日本のビールへの人気が高まってきたためと言われています。
ビールの輸出拡大に向けた積極的なプロモーション
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クラフトビールが日本の「輸出重点品目」に選定
日本政府は、2017年に日本貿易振興機構(JETRO)内に設立した「日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)」を中心に、日本からの農林水産物や食品の輸出額を1兆円にまで引き上げる取り組みを推進。その重点品目のひとつにクラフトビールが選ばれています。
日本のクラフトブルワリーは比較的、小規模なケースが多いため、国際市場での宣伝広告や、現地での販売代理店探しなどが困難です。そこで、JFOODOが世界各地の業界関係者や消費者に向けて、イベント活動などの情報発信を展開。クラフトブルワリーの海外展開を支援することで、輸出拡大をめざしています。
クラフトビール王国、アメリカ市場への挑戦
日本のビールの輸出拡大に向けた取り組みで、最大のターゲットとなるのがアメリカです。
アメリカのクラフトビール市場は、日本の総ビール市場を上回る市場規模を誇ります。JFOODOは、この巨大マーケットにおいて、さまざまなプロモーションを展開。クラフトビール有識者を対象としたウェビナー(ネットを使ったセミナー)の開催や、日米の著名ブルワリーによるコラボレーションビール開発のサポートなど、幅広い取り組みを行っています。
ビールの輸出は今後どうなる?
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和の食文化への高まりのなかで
近年、日本のビール輸出が増加しているとはいえ、ビールが日本の酒類輸出に占めるシェアは、「清酒」「ウイスキー」に次ぐ第3位。まだまだ成長の余地が大きいと言えます。
現在、世界中で「和の食文化」が注目され、日本酒が注目を集めているなか、日本のビールへの関心も少しずつ高まりつつあります。さらに、日本のビールが国際的なビール・コンペティションで数々の賞を獲得している現状を見れば、今こそ日本のビール造りを世界へと発信する絶好のチャンスだと言えるでしょう。
ビール輸出の今後の課題
大量生産される大手ビールメーカーが手掛ける通常価格帯のビールは、早くから海外市場を視野に入れ、中国や東南アジア、南米などを中心に、すでに世界各国に進出しています。ただし、今後は世界の巨大ビールメーカーとの激しい競争が予想されるため、現地のビールメーカーとのM&Aや現地生産を含めた、よりグローバルな事業展開が求められているのかもしれません。
また、高価格帯のクラフトビールでは、かつてウイスキーがそうだったように、いかに本場との「味の差別化」を図るかがポイント。かつて日本のウイスキーが「ジャパニーズウイスキー」というブランドを確立したように、日本のクラフトビールの独自性や品質の高さを、いかに世界に向けて発信するかが鍵を握りそうです。
日本のビールは、その品質の高さから海外でも注目を集めるようになっています。将来的には、世界中どこへ行っても日本のビールが飲める、そんな時代が訪れるかもしれませんね。