「バラライカ」の名前には壮大な歴史ドラマが隠されている
「バラライカ」は、ロシアの民族楽器で、三角の形が特徴的なバラライカと同名のカクテルです。楽器のバラライカは、映画『ドクトル・ジバゴ』で使用されたことをきっかけに有名になりました。今回は、カクテルをより深く味わっていただけるよう、そんなロシアを代表する楽器の歴史も交えながら紹介します。
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ウォッカで作る「バラライカ」
「バラライカ」は、ウォッカをベースとしたカクテルです。「モスコ・ミュール(モスクワのラバ)」や「ホワイトルシアン」もウォッカをベースにしていますが、ロシアを連想させるカクテルの多くは、そのイメージどおりウォッカが使用されています。
まずは、「バラライカ」のレシピを見てみましょう。
<レシピ>「バラライカ」
【材料】
ウォッカ…30ml
ホワイトキュラソー…15ml
レモンジュース…15ml
【作り方】
1.材料をすべてシェーカーに入れる。
2.「1」をシェークして、カクテルグラスに注いで完成!
「バラライカ」のレシピは、「サイド・カー」(ブランデーベース)のベースとなるお酒を変えたものです。また、さらにベースとなるお酒を変えると、「ホワイト・レディ」(ジンベース)や「X.Y.Z」(ラムベース)、「マルガリータ」(テキーラベース)のように、さまざまなカクテルへと変化します。
ロシアの民族楽器・バラライカの歴史
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さて、カクテル「バラライカ」は、前述した通り、ロシアの民族楽器の名前が命名のゆえんです。ここからは、そんな由来となった民族楽器の歴史について触れておきます。
中世ロシアでは、おもにロシアの旅芸人(スコモローフ)たちがこのバラライカを演奏していました。多くの農民の生活は困窮していたため、そんなスコモローフたちの行動を白い目で見ていたといいます。さらに、安価でどこでも手に入る楽器だったことから、ひどいときには、ケンカの武器に使われることさえあったそうです。残念ながら、当時はとてもロシアを代表する民族楽器という印象ではありませんでした。
しかし、しばらく経って19世紀になると、ワシーリー・アンドレーエフというペテルブルクの商人がバラライカの音色を聴き、このすばらしい楽器がケンカの道具になるのはもったいないと感じたといいます。彼は、バラライカを「ロシア人の魂を表す、豊かな音色の楽器」と考え、より響きのよい木材であるカエデ・トウヒで製作してみます。そして、その楽器を使用したオーケストラを編成し、バラライカを世に広めることに注力したのだそうです。
その後、アンドレーエフが編成した、この大ロシア・オーケストラはロシア中を席巻します。その影響は、遠くイギリス、アメリカ、ドイツでロシア民族楽器のオーケストラが結成されるほどのインパクトを残し、ロシア民族音楽の中心を担う楽器として、バラライカは一躍注目の的になったという歴史を持っています。
ロシアの魂を感じさせる「バラライカ」
このように、バラライカはロシアの文化的発展の歴史と深く関係した民族楽器であり、ロシアの魂ともいえる存在です。後年、映画『ドクトル・ジバゴ』で同楽器が使用されたことにより、同名のカクテルも有名になったといわれていますが、そんな壮大な音楽の歴史に思いを馳せて味わえば、口の中で奏でる豊かな響きを感じませんか? 命名のゆえんに触れると、お酒の味もよりおいしく感じられるという好例のカクテルです。